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田中太郎物語  作者: レッドキサラギ
第二章 ヒーローガール
17/24

009

「ダークヒーローには逃げられてしまいましたか」



「まあ、その、スマン」


 俺は白いベッドに横たわり、ナナミと話していた。

 自宅ではなく、ここは病院。

 骨折はしていなかったものの、打撲した部分が酷く、結局のところ救急車に搬送された俺は、医者から一日入院をするように告げられた。

 退院して三日後に入院。

 病院に慣れてしまっている自分が、少し恐ろしい。



「いえいえ、実はですね……この結果は、事前に予想されていた結果なんです」



「えっ!?」


 痛めた体を、無理矢理ベッドから起こす。



「それはつまり……」



「つまり、どんなに力を持っても、あなたは始めからダークヒーローには勝てない。そういうことです」



「何故そんな重要な事を黙ってた……」



「あなたがダークヒーローと戦って負ける事は、この時空で定められていた事なのです。だから言えなかった。戦意喪失してもらっては、こちらとしても困りますからね。だから、あえて言わなかったのです」



「じゃあ……早くダークヒーローを倒さないといけないというのは」



「嘘です」



「……なるほど」


 つまり俺は、始めから勝敗が決まっていた、八百長試合をさせられていた、ということになる。俺は知らぬ間に、ナナミの手駒にされていた、ということになる。

 だから、コイツはこの件を伝える時、進んで俺の顔を見なかった。

 表情は、口よりも正直者だ。

 それが例え、四六時中無表情なやつだったとしても、だ。



「謝罪して済む事では無いと思いますが、すみませんでした」


 ナナミは、深々と頭を下げる。

 確かに、人を欺いておいて、謝罪して済む程、世の中甘くはない。

 だけど。



「そういう仕事なんだから、仕方ないだろ?」



「…………」


 これはあくまで、時空を調整するための仕事なんだ。私情は、持ち込むべきではない。

 それこそが、このアルバイトの基本概念なのだから。



「けど、ヒーローに成り損ねたのは、ちょっと痛かったかな」


 重い空気だったので、話題変更。



「田中さん、捲土英来という四字熟語を知っていますか?」



「?、そんな四字熟語、あったっけ?」



「今わたしが作りました」



「へえ……」


 そりゃあ、知らない訳だ。

 何と言うか、心底どうでもいい。



「それで、その意味は?」



「英雄は、一度敗れても再び勢力を盛り返す、という意味です」



「なるほど」


 正しくは、捲土重来。

 でも、そうだな。

 ヒーローというものは、本来、そういうものなのかもしれないな。

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