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3.恐怖体験:その後


 わたしが感じた異変。

それは既に当たり前の毎日に取り込まれた。


 一番多いのは夜だ。


就寝前の遅い時間、それは始まる。


 ”異音”が聞こえる。(ざぁ、ざっ、と擦る音)

その音は玄関から始まり、やがて廊下を越えて手前の部屋に入って行く。

(元々、聞き始めた当初は玄関の異音だけで終わっていたのだ)


耳元に異音が入りこみ⇒金縛り⇒気絶 それしかないのだ。


 空気の質が明らかに変化する。(たぶん0時前)※

 ※このタイミングでわたしは色々な試みをしてみた。(耳抜きをしてみたり、音楽を掛けたり、運動をしたり) しかし結果はいつも同じだった。



正直な話、そこには恐怖感すらなかった。


「何かが間違ったのだろう」 そんな風にしか思えなかったのだ。


---


 そう、小学5年生から体験したあの現象は、中学に入っても依然として続いていたのだ。


それでは、当時の数年間(小学5年~高校中退まで)の出来事をダイジェストで解説してみよう。


***************

 夜更けに玄関からその音が始まる。

ホウキで誰かがたたきを掃いているように聞こえる。


玄関から始まった音は日に日に近づいてくる。

気がつくと廊下を。その後は手前の部屋を。さらに廊下、階段を上り、二階へと徘徊し、再び階段を降り、そしてまた廊下。そこは僕の部屋の目の前だ。


この頃(中学2年後半)には既におかしいと感じていた。


僕の部屋の目の前の廊下には豆電球が足元に光っていて、

誰かが通れば何らかの影が、障子の下半分の磨りガラス越しに見えるはずなのに、何も映らない。


そうしてある日のこと・・・いよいよその音は”部屋に入って来る”。

僕は、ホウキだと思っていた音を聞きながら、ある異様さに気がつくのだ。


・夢見心地のまま「これは布が畳をこする音」だと感じる。

・壁際にベッドをくっつけているのに、音はぐるぐると周囲を回る。(壁のあるはずの部分にまで食い込んで)


そうして音のイメージが脳裏に浮かぶのだ。


 それは着物の女性のようであり、ゆっくりとうなだれながらすり足で着物を引きずりながら歩き回っている。

その微かにひいひいと擦るような呼吸音を感じて実感した瞬間に、耳元で巨大なノイズが響き渡る。鳥肌が全身を包む。

そのノイズは脳内にまで入り込むように感じる。

力を振り絞ってなんとか薄目を開けると、部屋の蛍光灯がかちゃかちゃと何度も点いたり消えたりしている。蛍光灯は激しく揺れている。

やがてわたしは金縛りにかかったまま・・・気絶する。※

(※これが本来の気絶なのか、眠りについたのかを未だに判断できない)

***************


 これらが、恐怖体験の全貌である。


---


ただし、後日談としていくつかの出来事を付け加えて置かなければならない。

この現象は形を変えて更に数年後も私を苦しめたのだ、金縛りの形をとって。


高校生になったある日には、ペ〇ング・ソース焼きそばを食べるべく台所からリビングへ移動している最中に倒れた事もあった。

その時、金縛りとともにわたしの心臓は掴まれたかのように痛み、息が吸えなくなり、呼吸は吐くばかりであった。

そして意識を失ったわたしは、おそらく一時間ばかり倒れていたのだと思う。

(再び意識を取り戻したわたしがやった事は、倒れるときにちらかった焼きそばの掃除であった)


この日の出来事が何かしらの意味を持っていたのかは自分でも分からないままである。

しかしその後、諸事情から高校を中退したわたしは金縛りに掛からなくなった。


---


 数年後、わたしは引っ越し先であった東京のアパートで、酷似した金縛りを経験したのだ。


その時、わたしはアパートのロフトで引越し直前に注文した布団の到着を待って眠っていた。

一時的な仮眠、見知らぬ土地での緊張、そんなものが影響していたのかは知らない。

だが、わたしは夢の中で”はっきりと意識を持って感じた”のだ。

ロフトに掛かった梯子をぎしぎしと鳴らしながら昇って来た長い黒髪の女性が、最後の一歩をなぜか昇らずにロフト手摺りを左に這いながらこんな風にささやいたのを。


 『やっとみつけたぁ』


挿絵(By みてみん)



これでわたしの恐怖経験談は終わりです。

楽しんでいただければ嬉しいです!


※全て実話です。

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