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一夏の終わり

作者: 藤谷春馬
掲載日:2026/05/30

終戦直後の東京。そこで生きる人を描いた作品。

1945年 8月30日 東京

勘太は家で寝ていた

大東亜戦争が終わってまだ間もない日本

しょぼくれた家に勘太は住んでいる

元の家は焼けた。3月の大空襲で。

親は戦争でいない。創太という兄がいる

「暇だ」

勘太は外へ出た

3月の大空襲から少しは復興しただろうか

前より活気は無くなって闇市が蔓延っている

「どうした?勘太」

兄は闇市にいた、買い物中だ。

「暇」

そうポツリと呟いた

「これいくらだ?」

創太が握り飯を指差した。

「8円だ」

「一個でか?」

「不満かよ」

「2個で14円で頼む」

「しゃあねぇ」

握り飯2個と米一升持って家に帰った

「やっぱ高いな…もっと働くか」

「俺も働こうか?」

「まだ早いな…まだまだだ」

最低限の食料で生きる世の中では

若くして働くのも当たり前だ

食事の後、勘太はちょっとした広場

ぼーっとしていた

遊ぶにも面倒臭かったからだ

そこにアメリカ兵が乗った車が通りかかる

「Do you want chocolate?」

兵はそう叫んだ。勘太は英語がわからない。

手招きしていたため、近づいた。

警戒心というものは無いのだろうか

チョコレートを渡され、勘太はお辞儀した

「運がいいな」

外に出ても何もしないでいる自分に呆れて

家に帰った。兄は仕事だ。

一人、チョコレートを食べる。貴重な食料だ

兄のため残そうか迷ったが溶けるためやめた

「もう30日か…」

晩夏の空はいつもより橙だった

「勘太、帰ったぞ」

創太の声だ。仕事が終わったらしい

「すまん…今日も晩飯は抜きだ」

「しゃあねぇよ」

「ただ…稼ぎはあったから明日以降は食えるだろう」

ふと、勘太は外に出た。今日は星が多い。

「おう勘太」

友達の博だ。古くからの友人である。

「お前もか」

「おう」

星空を見上げて、博が呟く。

「これって…なんだったんだろうな?」

そこには教科書のとあるページ。

「ヘイタイゴッコ」

勘太は顔を顰める

「ヘイタイゴッコ…現実はごっこじゃ済まなかったな…」

「教師もなんなんだろうな…何かとお国のためと言ってたな」

二人は虚しさと怒りの混ざった気持ちだ。

「おい勘太、もう寝るぞ」

創太の声、勘太はハッとした

「じゃあな、博」

「おう」

8月31日

新しい季節が始まろうとする日

勘太はそんな事など気にせずにいる

いつものように寝そべって暇そうにしている

創太は仕事だ。一人で飯を食っていた。

「…」

ふと、外を見てみると猫がいた

少し汚れている

「なんだこいつ」

勘太は戻ろうとしたがついてくる

「…」

少し残っていた米を差し出してみた

美味そうかはわからないが食っている

食べ終わったが側から離れん、困ったものだ

「離れろよ」

猫に話しかけても意味がない、ただにゃあと鳴くだけだ。

「早く離れろよ」

「?」

猫は何を思ったか膝の上で寝てきた。

「…」

勘太は少し困った顔をした

「飼うか…?いや…」

そのまま迷いながら寝た。

夕方、創太が帰ってきた。

猫と寝る勘太を見て少し呆れる。

「勘太…!」

猫と共に起きる勘太。息が合っている

「なんだコイツ」

「猫」

「猫…」

「にゃあ」

呑気に鳴く猫。

創太が猫を見て言う

「飼いたいのか?」

「いや、ついてきただけ」

創太は少し考えて口を開く

「飼うか?」

「にゃあ…!」

「おい」

創太にも懐いたようだ、懐っこい猫だ。

「このまま捨てるのも可哀想だろ」

「…」

勘太は渋々了承した

「名前…どうする」

創太が猫を抱いて話す

「……どうしようか」

勘太はめんどくさそうに口を開く

「吾郎で良いだろ」

「めんどくさそうだな」

「いいだろ…別に」

吾郎。厳つい名前だ

「今日はもう寝るぞ」

創太が寝転がる。それに勘太と吾郎も続く

8月の終わりに家族が増えた。厳つい名前の「猫」だ

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