幕間:過熱
体の芯の熱は結局のところ、引く事は無いのだろう。
およそ人の耐えうる熱量を越え、どれほどの負荷に耐えられるのか実験されている気分だ。
この実験に終わりが来るとすれば、いったいどんな条件が考えられるだろうか。
満足な結果が出れば、終わるだろうか。
飽きられてしまえば、終わるだろうか。
実際には実験ではないから、こんなことは戯言にもならないのだけど。
それでも一つだけ、確かな条件がある。
この心臓をえぐり出してしまえば、自然、この熱も引いていくだろう。
今度はおよそ人ではなくなってしまうほど、冷え切ってしまうだろうけれど。
まあ、その必要もないだろうと思う。
だんだんと馴染んできたみたいだから。
むろん、強がりだけど。
がたり、ごとりと体が揺れているのに、それを感じなくなってきた。
意識がまどろみ、どこか俯瞰していく。
熱すぎて、体ごと解けて何かに混ざってしまったみたいだ。
自分のモノが誰かのモノであるという感覚。
はがゆくはなかった。
気持ち悪くもない。
ただただ。
呆然と他人のモノを見ているという錯覚。
無意識に、それに僕は触れていた。
熱く滾っているそれに、触れていた。
常にそれは脈打ちながら、全身に加熱した血液を送っている。
どろり、と血管の中をマグマでも通っているのではないだろうか。
ああ、熱い。
まるで絶えず火を呑んでいるよう。
息を吸うたびに純度が高い酒を口に押し流されているよう。
喉が焼け。
肺がやけ。
体の隅々まで、良い具合に溶けだしてしまいそうだ。
ああほら、今もまた。
過ぎた熱がこの身を溶かした音がした。