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34:追いかけて~1~

サブタイトルはこれで統一させてしまおうかと。重要な所では変えるつもりです

 SIDE IN~冷泉陽菜~


 まるで夜逃げするかのように城を抜け出して。

 獣の気配しかしない森を抜けてから。

 魔物一匹現れない平原を越え。

 街にたどり着いた。

 不気味なぐらいに平穏な道のりで。

 本当に、不審だ。

 「いやぁ、本当に。最近はやけに魔物達が静かだそうで」

 「ええ。本当に、不気味ですね」

 街を囲う壁にある門で審査を受ける。

 別の国に入る、というわけではないのだけれど。

 どうにも魔物の活性化により各市町村で自治が発達して、国内だろうがこのように門番が居る事が普通らしい。

 「とはいっても、ヴェストリアでは最近襲撃があったばかりらしいですけどね。森を抜けてきたってことは、貴方達もヴェストリアから?」

 「ええ、あわてて逃げてきたのですが、道中の方が安全なくらいでしたよ」

 ヴェストリア・・・。

 話の流れからして、あの城のあった街の名前だろうか。

 そういえば、とおもい明人を見ると、彼もまた私を見た。

 その通りだ、と彼は一度だけ頷いて、藍の隣で門番との会話に耳を傾けている。

 軽くショックをうける。

 たしかに、そんな事を気にしている暇はなかったとはいえ、一ヶ月も居たのに。

 私はほとんど、何も知らない事に気が付いた。

 小学校高学年まで父の名前を知らなかった時のようなショックだった。

 あれも、本当に驚いた。

 皆知ってるんだもの。

 呼ぶ時もお父さん、で通ってたし。

 別に不便はなかった。

 「それで、少しお聞きしたいのですが」

 「はい。なんでしょうか」

 「実は、私達は本当に慌てて逃げ出したので、家族はぐれてしまったのです。この子の兄と姉なのですが、見かけてはおりませんか?」

 「ん~、何か特徴とかはないのですか?」

 「本当は道中で拾ってやる予定だったのですが、どうにも会えずにたどり着いてしまったので、徒歩できているはずなのですが」

 「それならすぐに伝わってくると思うのですが、今のところは知りません。もしかしたら追い抜いてしまわれたのでは?」

 「やはり、そうなのでしょうか」

 「ええ、森は多岐ですからね。休憩していたときに追い越してしまっていたりしたのかもしれませんね」

 「困りましたね」

 「お父さん、お兄ちゃんとお姉ちゃんは?」

 一瞬だけ、明人の体が反応した。

 不自然な間をあけて、彼は振り向いた。

 「ちょっと、迷子になっているようだ」

 彼は笑って、返す。

 「すぐに会えるんじゃ、なかったの?」

 「待ってればすぐ来るさ」

 「すぐっていつ?」

 にやり、と心の中だけで笑う。

 子供らしい言動だ、とわかりつつ。

 効果的になるように、小さく呟いた。

 「え、あ、そうです!宿を教えていただければ、私が二人を見かけたら案内しましょう!それがいい。それなら、お嬢ちゃんも安心だろ、ほら、さ」

 明人ではなく、門番さんは慌てて提案してくれた。

 ふふふ、まさに。

 にやり。

 「ご迷惑なのでは?」

 藍が遠慮がちに言う。

 私は門番さんに目を向けて。

 彼が微笑んだのを確認した。

 「いえ、問題はありません」

 「そう、ならお願いしますね」

 「はい、任せてください」

 それから、門番さんにお勧めの宿を藍が聞き出して、ようやく私達は街の中へと進んだ。

 すでに、陽は暮れ始め。

 街は落ち着き始めていた。

 人気の少なくなった道は、それでも多少は賑わっていて、すでにちらほらと仕事を終えた酔っ払いが見えていた。

 「それにしても、心臓がとまるかとおもった」

 「?」

 「惚けるな。お前の事だ、陽菜。誰がお父さんか」

 「設定」

 「確かに、そういう設定にはしたが、呼ぶ必要無かっただろう、別に」

 「楽しい」

 「嗜虐に走るな。俺はそんな立ち位置は認めるつもりはない」

 「え?」

 「なんでそこで藍が反応する」

 「いえ、別に」

 「・・・もういい」

 暗くなった頃に宿屋にたどり着き、その日はもう門番に再会する事もなく。

 何事もなく、私達は床に就いた。


 SIDE OUT

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