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24:発覚


 SIDE IN~意気揚々小山田梨奈~

 

 ばたばたと城下町へと繰り出していく兵士達とすれ違いながら、城門を軽い足どりでくぐる。

 強くなっていた。

 短期間で、驚くほど皆が様になっていて。

 この調子でいければ、と思う。

 「おつかれさまです」

 自然と声も高くなり、門番さんに挨拶をする。

 魔物達は去っていったが、警戒をまだ厳にしていた彼らは、力を抜き応えてくれた。

 「私は椎名様にご報告をしてまいります。皆さまでしたら、ご一緒に行動なされるのならお城の中でしたら自由に歩き回っても大丈夫でしょう」

 先導していた藍さんが城の中に入った所で振り返り、微笑んだ。

 よくできました、と優しく褒められたようで、年甲斐もなく嬉しくなった。

 「分かった」

 私達を代表して、直君が。

 実戦を経てから、確実に私達の関係は変化した。

 自然と、彼を先頭にするようになり。

 年下なのにな。

 なんだか、頼っても不思議と情けなくもならず、それが普通だと思えてしまう。

 リーダー気質ってやつなのかな。

 立派なちゃんとした、男なのかも、しれない。

 「さて、どうする?」

 藍さんは早々に立ち去り、直君が聞いてくる。

 ん~。

 「私は新沼さんと維新君も一緒の方がいいとおもうな」

 提案はすぐに通り、誰からも反対意見も他の意見もでなかった。

 今度は街じゃなくて、城にせめてくるかもしれないし、その時は彼らと一緒じゃないのは、ちょっと不安だ。

 私達が一緒なら、今度はしっかりと守ってあげられるとおもう。

 とりあえず皆で維新君の部屋に行く事にした。

 新沼さんは夜以外部屋には居ないみたいだし。

 けれど、そのあては外れた。

 いや、大きく外れてはいないのだろうか。

 どちらにしろ、維新君は居なくて。

 代わりにそこには新沼さんで。

 「帰ってきたのか」

 彼は手紙を片手に、こちらを振り返る。

 いろんなことがわからなかった。

 彼も維新君を尋ねてきたのかと思ったが、それも違う。

 居ない時点で、部屋を出るのが、当たり前だ。

 そして、あの手紙。

 「気になるか?」

 「いや、でもそれって」

 「確かに人の物は勝手に読んだらいけないが、勝手に読んでも良い手紙ってのもある」

 差し出される、紙切れを手にとって目を通す。

 ―――――探さないでください。

 え、なにこれ。

 何この家出するときの書き置きみたいなものは。

 っていうか、私も一度書いた事あるな。

 全く似たような物を、書き起きして思春期特有の自分探しみたいなことをして、一か月は帰らなかった。

 でもやっぱり限界で、帰ったんだけど。

 って、今はそんな私の話は必要なくて。

 「みたいなものじゃないさ」

 手紙を皆にまわして、新沼さんをみる。

 これが誰のものなのか。

 「どうして・・・?」

 消去法で、残るのは一人だけだった。

 ここにいない、彼しか、いなかった。

 「冗談、よね?」

 「そう思うか?」

 「思うわ」

 そう。

 彼ならやるかもしれない。

 おちゃらけていたし。

 暇だったから驚かせたかった、なんて。

 今にも平然と現れて。

 直君にからまれて、平蔵さんが溜息をついて、新沼さんが楽しそうに笑って、陽菜ちゃんはいつもどおりで。

 私も楽しくて、わらって。

 「幸樹さんはこんなことを、冗談でしたりはしない」

 陽菜ちゃんが、小さくてもはっきりと。

 スカートの裾を強く握って堪えるように、言う。

 「馬鹿なこともするけれど、本気で心配させるような冗談はやらない」

 「それに、俺にはおもいあたることもあるしな」

 皆の視線が新沼さんに移る。

 「この前二人きりで馬鹿話をしていたときに、怪我の話になって、な。どうしたら怪我しなくなりますかね、なんてあいつがきくから俺が冗談で、城から離れれば案外怪我しなくなるかもな、って。まさか本当にやるとはおもわなかったが」

 彼は笑うが、笑えない。

 全く笑えない。

 「逃げたって、ことか?」

 「ありえない!」

 一瞬。

 誰が叫んだのかが分からなかった。

 「幸樹さんが逃げるなんて、ありえない!」

 陽菜ちゃんが、必死に叫ぶ。

 彼と一番仲が良かったのは、誰でもない彼女で。

 今も必死に、堪えていた。


 SIDE OUT

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