君の言う通りだ(過去)
「ああ、あの火竜王の時か。」
と混乱する頭の中を整理しながら、周囲から聞こえる声を聴き、部屋のつくりを見ながら、グレイスは思い出した。ドラゴンの中でも高位種である火竜、その中でも最上位に君臨することから王を冠した個体であいる。その火竜王がティカル地方で猛威を振るっていた。それを抑えるというか討伐するために、その最前線ともいえるビンチ村に勇者フレブレ・トリスタンとそのパーティーが派遣された。そして、作戦会議をピンチ村の集会場を使って、行っていたのである。当然、勇者パーティーの魔法聖騎士であるグレイスは、その中にいたのである。
結果はわかっていた、彼女には。この討伐任務は成功する。ただし、ゴブリンの群れが、火竜王から逃げるように移動していて、それは他の魔獣も同様だが、それが勇者パーティーが火竜王と戦っている最中に村を襲撃するのだ。火竜王を仕留めた勇者パーティーは、状況を知って取って返して駆け付けた。村にも自警団はいるし、勇者の支援のため周辺の領主達からの援兵も多少いたから、当然防戦をした。が、勇者パーティーが駆け付けた時にはかなりの被害がでていた。到着後、鎧袖一触だったが、特に勇者は自分の失態だと結構落ち込んだ。
「どうしたものか。」
と彼女は思った。ここでこの村を救ってやる必要も義務もないし、自分には特にメリットはない。その上、下手に進言して、どうしてそういうことが分かったのだ、と言われて転生を疑われては困る。しかし、ここで、この村を救う意見をだしていれば、自分の立場はより良くなる、とも思えた。
「どうきりだしたらいいか?」
彼女は迷った。その彼女に勇者フレブレが視線を向けた。しまった、と彼女は思った。何か考えていると見抜かれた、と思った。
「グレイス。何か考えがあるのかい?」
勇者が尋ねた。
「いや、たの魔獣とか、ゴブリン達とか心配になって・・・。」
考えがまとまらないうちに振られてしまったので、つい口から出てしまった。
「ああ、なるほど、流石魔法聖騎士様だ。」
と感心したかのように勇者が言い出した。
こんな展開はなかった・・・はず・・・自分の表情から、異なる展開が発生したか、と彼女は思った。




