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【朗報】ワイ元成金、最期に少女を救い異世界送りになった模様  作者: 限界まで足掻いた人生


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第92話:アズライトの違和感

白装束が放つ静謐な威圧感に包まれた広場に、新たな足音が響いた。使い込まれた鞘を鳴らしながら現れたのは、青い髪を乱暴にかき上げたアズライトと、その背後にぴたりと寄り添うマラカイトだった。


「よう、アルフ。随分と派手な看板を背負った野郎に絡まれてるじゃねえか」


アズライトは不敵な笑みを浮かべ、愛刀の柄に手をかける。その横でマラカイトも、静かに魔力を練り始めた。心強い援軍の登場に、ニコやカレンの表情が一瞬だけ和らぐ。だが、アルフの冷徹な目は、彼らの立ち姿に潜む決定的な不自然さを捉えていた。


一定すぎる呼吸

「……アズライト、一歩下がるんだ。お前たち、今の状態は商売道具の整備不良どころの話じゃないぞ」


アルフの警告に、アズライトは怪訝そうに眉を寄せた。


「ああん? 何を言ってやがる。見ての通り、修行のおかげで調子は最高だ。あの迷宮から出て以来、一度だって息が切れたことはねえ」


「それが問題なんだ。お前たちの呼吸の間隔……一分一秒の狂いもなく一定すぎる」


アルフが指摘した通り、アズライトとマラカイトの胸の上下運動は、まるで精巧に作られた機械仕掛けの時計のように、機械的なリズムを刻んでいた。激しい移動の直後であるはずなのに、乱れもせず、深まりもしない。それは生命が持つ揺らぎを完全に失った、異常な平準化だった。


削り取られる均衡

アルフは田中豪としての視点で、彼らの内情を査定する。

彼らは強くなったのではない。むしろ、その逆だ。


彼らの中に宿る強大すぎる力、あるいは迷宮で得た何かが、彼らの肉体の器を内側から食い破ろうとしている。それを防ぐために、彼らは無意識のうちに自分自身の感情や生命の機微を削り取り、かろうじて均衡を保っているのだ。


「いいか。お前たちは今、破産寸前の会社が帳簿の数字を合わせるために、主力事業を切り売りして食い繋いでいるような状態だ。常に自分を削って安定させている。その一定すぎる呼吸は、崩壊を食い止めるための必死の制御装置に過ぎない」


アルフの言葉を聞いたアズライトの指先が、微かに震えた。だが、その震えすらも、瞬時に一定のリズムの中に飲み込まれ、消えていく。


「……ハッ、理屈っぽいやろうだな。だが、この削り取った分だけ、一撃の重さは増してんだよ」


自然現象との共鳴

その様子を静かに見ていた白装束の男が、感情の欠落した声で告げる。


「やはり、修正対象が増えただけのようです。自己を削り、世界の道理から外れた力を得た者たち。あなた方もまた、この世界が受け入れることのできない不渡り品だ」


白装束の手から放たれる無の波動が、一段と密度を増した。

アルフたちは、遅れてついてくる影を引き連れ、そしてアズライトたちは、自分自身を削り取った薄氷の均衡を保ちながら、世界の自浄作用へと立ち向かう。


「商談は決裂だ。これ以上の損失が出る前に、お前という現象をこちらで清算させてもらう」


アルフの影が、広場の石畳を侵食するように、ゆらりと伸びた。

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