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【朗報】ワイ元成金、最期に少女を救い異世界送りになった模様  作者: 限界まで足掻いた人生


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第79話:負債と救済の連鎖

無慈悲な試算

赤く染まった迷宮の最下層。老戦士の放つ一撃は、剣を抜いていないにもかかわらず、大気を断ち切りアルフの頬を鋭く切り裂いた。


「どうした、成金王。守るためのコストを計算している間に、その娘の命が市場から消えるぞ」


老戦士の拳が、アルフの腹部にめり込む。凄まじい衝撃に内臓が軋むが、アルフは吐血しながらもカレンの手を離さなかった。


(……おい、田中豪。こいつの動きが見えない。どうすればいい)


内なる深淵で、成金王が冷酷に笑う。


「見えないのではない。お前が『損切り』を恐れているからだ。カレンを無傷で守ろうとするその傲慢さが、お前の判断を鈍らせている。いいか、投資には必ずリスクが伴う。自分の身を削ってでも、リターンを掴み取る覚悟を決めろ」


アルフは奥歯を噛み締め、黒い魔力を自らの足元ではなく、カレンの影へと流し込んだ。


「カレン、俺に合わせろ。……一瞬だけ、俺の影になれ」


「……うん、お兄ちゃん!」


カレンがアルフの背中にぴたりと張り付く。その瞬間、アルフは自らの身体をあえて老戦士の追撃に晒した。肩を砕かれる激痛。だが、その代償として、アルフは老戦士の懐へ潜り込む「隙」を無理やり買い取った。


「――そこだ!」


カレンの影から噴き出した漆黒の魔力の杭が、至近距離から老戦士の喉元を襲う。老戦士は僅かに目を見開き、それを首を傾けて回避したが、その髭を数本焼き切った。


「……ほう。自分を盾にして商機を掴むか。泥臭いが、悪くない。とりびこざると蔑まれた者たちの執念、少しは見せてもらったぞ」


削ぎ落とされる過去

迷宮の別の区画では、シエナが血反吐を吐きながら床を這っていた。対峙する女剣士は、一滴の汗もかかずに冷徹な視線をシエナへ向けている。


「シエナ・レオン。お前の剣には、王宮の飼い犬だった頃の『型』がこびりついている。正義だの、騎士道だのという無価値な装飾を捨てろ。お前が今守るべきは、白装束に焼き尽くされた絶望の果てにある、新たな因果だ」


「……わかってる、そんなこと……!」


シエナは折れた剣を支えに立ち上がる。彼女の脳裏には、カイルの冷たい瞳と、ルカが流した血の跡が焼き付いていた。


「私はもう、あいつらに何も奪わせない。たとえこの魂が因果律の底へ沈もうとも!」


シエナの剣に、これまでとは違う、どろりと重い殺気が宿り始める。


意志の宿る食

一方、ニコは呪術師の前で、真っ黒に焦げたパンの残骸を見つめていた。


「パンを作るのではない。そこに『生』への執着を込めろ。とりびこざるとして闇を歩む者たちが、明日の光を夢見るためのガソリンを焼くのだ。お前の父、ルカが最後に守ろうとしたものは何だった?」


「お父様は……。皆の笑顔が、明日も続くようにって……」


「なら、その願いを因果として固定しろ。お前のパンが、あの怪物を飼う少年の唯一の楔になるのだ」


ニコは震える手で粉を捏ね始める。その指先には、微かな、だが確かに熱を持った魔力が宿り始めていた。


加速する輪廻

修行の刻は、無慈悲に過ぎていく。

アルフは老戦士の猛攻に晒され続けながら、自分の中の怪物が少しずつ、肉体という殻を破って馴染んでいくのを感じていた。


「白装束どもが次に現れる時、俺はあいつらを根絶やしにする。運命なんて言葉で、俺たちのパンを二度と汚させない」

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