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【朗報】ワイ元成金、最期に少女を救い異世界送りになった模様  作者: 限界まで足掻いた人生


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第65話:上から来るぞ!!気をつけろ!!

理不尽な「制限」

ピーターは入り口のモニターに映る無機質な白装束の集団を眺め、いつになく冷めた表情でアズライトの聖剣をハルトへと放り投げた。その瞳には、ふざけた影など微塵もない、冷徹な戦術家の光が宿っている。


「……ハルト。悪いが、俺は今回の戦い、一切の『能力』を使わない。 使うのは、この身体だけだ」


受け取ったハルトは、ピーターの無茶な提案に対しても眉一つ動かさない。ただ、感情の抜け落ちた瞳で外の状況を見つめ、短く、一言だけ返した。


「……了解」


ハルトの口数は極端に少なく、その声には一切の抑揚がない。彼はピーターがなぜ能力を封じるのか、その意図を問うことすらしない。ただ、命じられた役割を完遂する機械のような静寂を纏っていた。


「こいつらは俺が倒すべき敵じゃない。アルフとシエナ……あいつらが『本物の地獄』を乗り越えるための、生きた教材だ」


ピーターは自分の能力に自ら「鍵」をかけた。魔力も、異能も、あの「重力」すらも使わない。ただ、かつて大東亜帝国という修羅場で培った実在の古流武術のみで、迎え撃つことを決めた。


静寂を切り裂く「古武術」


ピーターは単身、施設の正面口から外へと足を踏み出した。その体術は、大東亜帝国という修羅の地で、ただ「生き残る」ためだけに削ぎ落とされた骨と肉の対話そのものであり、荒れ狂う嵐の中を征く一筋の静寂であった。


突き出された幾条もの銀刃に対し、ピーターは「避ける」という選択を捨てた。ただ、風が枯れ葉の隙間を抜けるように、最短距離で死界へと滑り込む「入身」。刃が空を断つ刹那、彼はすでに敵の鼓動が耳に届く至近に立ち、その残像すらも置き去りにしていた。


続いて放たれるのは、顎を跳ね上げる掌底。衝撃が頭蓋を震わせて脳を揺らし、世界が傾くその一瞬の隙を見逃さず、重力さえも操るかの如き「理」が敵の支点を奪い去る「当身と崩し」。梃子の原理によって描かれた無慈悲な円環の軌道は、白装束たちの傲慢な誇りを、泥濘む地面へと叩き伏せていった。


さらに、慈愛なき精密機械の如き打撃が「骨法」として完成する。的確に肘を折り、膝を挫き、肋骨を断つその音は、朝靄の中で乾いた枯れ枝が折れる音に似ていた。それは暗殺者たちの機動力を剥奪し、彼らをただの物言わぬ「肉の塊」へと変貌させる、無声の鎮魂歌であった。


多人数の包囲網を嘲笑うかのように、ピーターは水のように流れ、影のように透ける。彼が位置(体捌き)を変えるたび、白装束たちは操り糸を切られた人形のごとく無残に崩れ落ち、その高潔なる純白の衣は、瞬く間に無様な泥に汚れていった。


「教材」の引き渡し

数分の格闘の末、外壁の前には、立ち上がることすらままならない、満身創痍の白装束たちが転がっていた。四肢の関節を外され、あるいは神経を打たれて悶絶する姿は、かつての暗殺者の威容を失っていた。


「おい、アルフ! シエナ! 出てこい!!」


ピーターの声に応じ、中から武器を構えた二人が飛び出してくる。彼らは目の前の光景に絶句した。あの無敵に思えた白装束の集団が、ピーターの「徒手空拳」によって無残に叩き潰されている。


「こいつらはもう、死に体だ。だが、まだ息はある。……アルフ、シエナ。ここからはお前たちの仕事だ。こいつらの絶望的な殺意を正面から受け、自分の『意志』でトドメを刺せ」


ピーターは肩をすくめて後方へと下がった。ハルトはその隣に音もなく並び、感情を排した無機質な視線で、血を流す白装束たちとアルフを見つめている。


「……行け」


ハルトの短い促しが、冷たく、だが重く響く。


「これは修行じゃない。本当の殺し合いだ。 自分の手を汚せない奴に、誰も守る資格なんてないんだよ」


ピーターの冷酷な言葉が、朝霧の立ち込める平原に響き渡った。アルフは震える手で魔力を練り、シエナは剣を正した。

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