64話:おめでとうございます!あなた様が抽選で選ばれました。受取期限は本日中、第三者への相談は禁止されています。
「おめでとう! 宿泊券当選だぜ!」
「あー、帰る? ン拒否するゥ!!」
ピーターはどこから取り出したのか、ド派手な金色のガラガラ抽選器を回し始めた。カランカランと虚しい音が響き、赤い玉が転がり出る。
「おめでとう! 貴様ら二人には、この『エネアッド・ロイヤル・メディカル・センター(ただの隠れ家)』の二泊三日フルコース招待券が当選したぞおおお!! 拒否権はない! 朝食は愛のこもった生卵、夕食はハルトの無言の圧力だ! 喜べ!!」
「な、何を勝手なことを……!」 「お父様が待っています、帰らせてくださいぃ!」
シエナの抗議もニコの悲鳴も、ピーターの爆音の拍手によって掻き消された。彼は無理やり二人を予備の病室へ押し込み、ハルトに「空間の鍵」をかけさせた。
カレンの寝顔と、少年の決意
アルフは、自室のベッドで眠るカレンの傍らに座っていた。 「……カレン。今日も修行、大変だったよ。でも、不思議なんだ。あのいかれた男の言う通りに動くと、少しだけ、自分が『力』の主人になれる気がするんだ」
アルフは今日あった出来事、シエナの鋭い剣閃や、ニコが焼いたパンの温かさを語った。カレンは微かに微笑むような表情を見せ、深い眠りの中へと落ちていった。
カレンが完全に眠ったのを確認し、アルフは意を決して部屋を出た。向かった先は、ピーターが独りで例のノートを広げている深夜の作戦室だった。
深夜の三つの質問
「よう、アルフ。…昆布茶飲むか?」
ピーターは相変わらずの基地外テンションで迎えたが、アルフは引かなかった。
「……三つ、聞きたいことがある」
1. 転生について
「あんた……前にも言ってたよな、異世界から来たって。……実は俺もなんだ。同じ『転生者』として聞きたい。あんたは、向こうの世界でどうやって死んだんだ?」
アルフの告白に、ピーターは一瞬だけペンを止めた。だが、すぐにいつもの不敵な笑みを浮かべる。
「死因? あー、ぶっちゃけ、あっちのサーバーがメンテ中だったから、強制ログアウトさせられただけだよ。前の世界では『神』とか呼ばれてた気もするし、ただの『ゴミ』だった気もする。要するに、ただの迷子だ。死に方なんて、三秒で忘れるくらいの価値しかないぞ、この世界じゃな」
ピーターは鼻をほじりながら、アルフの問いを煙に巻いた。アルフは彼が転生者であることは確信したが、その背景にある「大東亜帝国」という血塗られた歴史までは、まだ知る由もなかった。
2. なぜ「あの二人」なのか
「……なら、なぜ修行の相手にシエナとニコを連れてきた? 他にも強い奴はいたはずだ」
ピーターの顔から、一瞬だけふざけた影が消えた。 「アルフ、お前を『最強のモンスター』にするにはな、ただの壁じゃダメなんだ。お前に必要なのは、荒ぶる魔力を『繊細な技術』に変えるための精密な計量器と、『超えるべき現実の暴力』だ。この二人が混ざり合ってお前を叩くことで、初めてお前の魔力は『人間の意志』として精錬される」
(……それに、そのまま放っておいたら、あいつらは今頃あの『白装束』にバラバラにされてたからな。今の俺じゃまだ適わないから因果をねじ曲げてでも、二人だけは助ける必要があった)
ピーターは心の中で、エネアッドの街で起きた凄惨な「掃除」を思い浮かべていた。彼が二人を拉致したのは、彼なりの、あまりに不器用で暴力的な救出劇でもあった。
3. あんたは何がしたいんだ?
「最後だ。あんた、結局この世界で何がしたいんだよ」
ピーターはニヤリと笑い、椅子をガタンと鳴らして立ち上がった。
「【朗報】ワイ、このクソゲー化した異世界を『完全攻略』して、ハッピーエンドにする模様。 正直、今の世界情勢はガチで『無理ゲー』すぎるンゴ。【悲報】運営(王族・ギルド)、ワイの嫁と妹を隠蔽して致命的なバグを放置。 さらにアルフ、お前みたいな想定外のチートキャラまで湧いてきおった。 せやから、ワイが既存のクソシナリオを全部ぶっ壊して、最高に『草』が生える神ルートに書き換えてやるんや。ってな感じだな?」
「は?」
煙に巻くように語るピーター。だがその発言は冗談3割、事実7割、で言っているものあり。世界そのものを敵に回しても「探し物」を見つけ出すという狂気に満ちていた。
「……さあ、質問タイムは終わりだ。明日はいよいよ実践だぞ、少年!!」




