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【朗報】ワイ元成金、最期に少女を救い異世界送りになった模様  作者: 限界まで足掻いた人生


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53話 魔の調律と、動き出す復讐者

地獄の教育:第一段階「魔力剥離」

隠れ家の地下、ハルトの空間結界によって隔離された闇の中で、アルフの絶叫が響き続けていた。


「が……あ、あああああああ!!!」


アルフの全身から、どす黒い霧のような魔力が噴き出している。それは「白い悪魔」の力の源泉でありながら、同時に彼の命を蝕む猛毒でもあった。


ピーターは、最後の一枚になった南部せんべいを口に加え、無造作にアルフの胸に手を当てている。その指先からは、細い糸のような魔力がアルフの体内に侵入し、無理やり魔力回路パスを組み換えていた。


「いいかい、アルフ。君の体は今、**『壊れた楽器』**なんだ。無理に弾けば弦が切れるし、本体も割れる。俺が今やってるのは、弦を一本ずつ張り替え、ボディを鉄板で補強する作業だよ」


「な、……なんで、お前が……こんな、精密な……がっ!!」


「精密? はは、失礼だな。俺を誰だと思ってるんだい? これでも**『呪われた獣』**なんて大層な名前で呼ばれるくらいには、人間の体の『仕組み』には詳しいんだよ」


ピーターは、アルフの痛みを無視して、強制的に彼の深層意識にある「悪魔の核」へと手を伸ばした。


「ほら、出てきた。君が大切に守り、同時に恐れている……『絶望』の塊だ」


アルフの視界が真っ赤に染まる。内側から、自分ではない「何か」が、牙を剥いて這い出してくる感覚。それは、かつて故郷を焼かれた時の憎悪、そしてカレンを守れなかった無力感そのものだった。


療養所:奪われた誇り

一方、アズライトが治療を受けている療養所の一角。


S級治癒師マラカイトは、窓の外を眺めながら、自らの指先に残る微かな「違和感」を噛み締めていた。それは、かつてアズライトの刀『天空の審判』が放っていた、高潔な雷の残滓だった。


「……お兄ちゃんをあんな目にあわせただけじゃ飽き足らず、あの刀まで持っていくなんて」


彼女の瞳は、患者を診る時の慈愛に満ちたそれではない。冷酷な「狩人」の光を宿していた。


アズライトの命を救ったことで、彼女の役割は終わったはずだった。だが、彼女の心にある「アズライトへの執着」と「ピーターへの憎悪」が、彼女を立ち止まらせることを許さない。


「先生、ルビーナ様がお呼びです」


看護師の声に、マラカイトは表情を消して振り向いた。


「……ギルド管理委員会が、私に何の用かしら?」


「ピーター・ブレットの追跡について、**『特別な協力』**を要請したいとのことです。彼が持ち去った『天空の審判』……その位置を特定できるのは、かつてその刀の魔力調整を手伝っていた貴女だけだと」


マラカイトの口角が、わずかに吊り上がった。


「そう……。いいわ。あの男を、地獄の底まで引きずり戻してあげる」


隠れ家:新生

「……はぁ、はぁ、はぁ……」


地下室の床に、アルフが倒れ伏していた。その肌は以前よりも白く、透き通るような冷たさを帯びている。だが、その瞳には、以前のような怯えはなかった。


「お疲れ様、アルフ。これで君は、『悪魔』を道具として使えるようになった」


ピーターは満足げに、空になった南部せんべいの袋をハルトに手渡した。


「ハルト、次の食料調達の時は、ピーナッツ多めのやつを頼むよ。……さて、アルフ。新しい力の感触はどうだい?」


アルフはゆっくりと立ち上がった。包帯の間から漏れる魔力は、もはや暴走していない。鋭く、静かな殺気を孕んだ「力」として、彼の意志に従っている。


「……最悪だ。体が、俺じゃないみたいに軽い」


「それは良かった。じゃあ、早速テストといこうか」


ピーターがニヤリと笑った瞬間、隠れ家の天井が凄まじい衝撃と共に崩落した。


「見つけたぞ、呪われた獣!!」


立ち込める塵煙の中から現れたのは、復讐に燃えるルビーナと、その隣に立つ冷徹な瞳のマラカイトだった。

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