46話 お前達はどう生きるか
カレンの命の危機が去り、アルフは心底安堵していたが、すぐに恥ずかしい現実に引き戻された。
「ごめん、カレン……。俺が、ふがいないばかりに。お前を守れなかった上に、こんなひどい怪我をさせて……」
アルフが懺悔の言葉を述べた後、カレンは彼の無事を確かめるように目を細めた。
「ううん。お兄ちゃんは悪くないよ。それより……」
カレンはきょとんとした顔で、アルフの裸の上半身を見つめた。
「お兄ちゃん、どうして上半身裸なの?」
アルフは顔が一瞬で真っ赤になった。命の瀬戸際では気にもならなかったが、カレンの前で丸出しの胸を見せているという事実が、強烈な羞恥心となって襲いかかった。
「ち、ちがう! これは……っ!」
アルフは慌てて後ろを向き、背中を向けて怒鳴った。
「全部こいつのせいだ! 見ろ、ピーター・ブレット! お前の悪趣味な性癖のせいで、俺は妹の前で裸だぞ!」
ピーターはアルフの怒りなど意に介さず、鼻から流れる血を指で拭いながら、のんびりととぼけた。
「えー、俺のせい? 裸なんて自然でいいじゃないか」
アルフがなおも罵倒していると、ピーターは突然、天井に向けて声を上げた。
「ハルト!」
ピーターの呼び声と共に、部屋の空間が微かに揺らぎ、白髪の少年ハルトが音もなく姿を現した。彼は何も言わず、ただそこに立っている。
ピーターはベッドの横からアルフの肩を掴んだ。
「行くぞ、アルフ。君の暴れた街の様子を見に行こう。ハルト、例の場所、エネアッド(アルフ達が暮らしていた貧民街)までお願いね」
ピーターがアルフの肩を掴み、ハルトがピーターの肩に手を置いた。
空間が大きく歪んだ一瞬後、三人は目的地に立っていた。彼らがいるのは、エネアッドの瓦礫と化した場所から少し離れた、静かな路地の影だ。
アルフは、自分の裸体よりも、一瞬で移動した事実に驚愕する。
「な、なんだ、今の……」
「ハルトのスキルだよ。秘密」ピーターはあっさりと言い放つ。
三人は影からそっと、街の中心部へと移動した。そこは昨日の暴走で最も破壊された区画であり、今やギルドの人間や衛兵隊が慌ただしく動き回る、厳戒態勢の現場だった。
ピーターはアルフを建物の陰に立たせ、無言で指差した。
そこには、ギルドの掲示板が建て直され、新しい指名手配書が何枚も貼られていた。
アルフは恐る恐るその似顔絵を見た。
指名手配:アルフ(少年)
容疑:都市破壊、連続殺人、悪魔に憑かれてる可能性あり
ランク:B級
指名手配:カレン(少女)
容疑:王族献上品
ランク:特B級
アルフは血の気が引いた。彼は自分が引き起こした事態を、ようやく正確に飲み込んだ。
「嘘だ……俺が……こんな……」
絶望に打ちひしがれる中、アルフの頭脳は指名手配のランクの差異に気づく。
(B級と特B級……何が違う? 特B級はB級よりも上の、A級に近い扱いなのか? 王族献上品という容疑が、カレンの価値を決定づけているのか……?)
アルフが絶望と同時に分析を始めている頃、ピーターは楽しげにハルトと話していた。
「さてと、状況は分かったろ? そろそろ戻るか。ここから先は衛兵が多い」
ピーターがアルフの肩に手を置こうとした、その瞬間。
背後から、冷たい、鋭い声が響いた。
「動くな。白い悪魔、そして……呪われた獣」




