表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【朗報】ワイ元成金、最期に少女を救い異世界送りになった模様  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/116

第102話:外部からの誤情報

白装束が放つ修正の波動が、視界を白く焼き潰そうとしていた。その激流に抗いながら、アルフの脳裏にはこの都市に辿り着く前に受け取った「報告書」の内容が、苦い後味と共に蘇っていた。


差出人の名はまだ明かせない。だが、その人物がもたらした情報は、アルフにとっても、そしておそらくはアズライトにとっても、疑いようのない「確定事項」として共有されていた。


切り取られた事実

「ピーターは街のパン屋の娘を攫った」


その報告は、簡潔で、かつ決定的な悪意に満ちていた。


「既に人格の操作、魂の書き換えが始まっている。娘はもはや以前の彼女ではない」


「発見次第、即座に彼女をピーターから切り離せ。手遅れになる前に」


アルフは影の杭を地面に突き立て、存在の流出を食い止める。田中豪としての彼は、常に情報の真贋しんがんを疑うプロだった。だが、この案件に関しては、外部から観測された「客観的な事実」があまりに揃いすぎていた。


ピーターが店を訪れ、混乱の中でニコを連れ去ったこと。

その直後、ニコがかつて見せなかったような異質な魔力――二重の影を宿し始めたこと。


それは、素人が見れば「誘拐」と「呪い」の構図そのものだった。


誤情報の連鎖

だが、真実はもっと無骨で、不器用な救済だった。

あの日、ニコはピーターに狙われたのではない。ピーターこそが、何者かの襲撃対象となっていた彼女をいち早く察知し、保護するために強引に連れ出したのだ。


ピーターにしてみれば、それは単なる「避難」だった。しかし、周囲の目に映ったのは、無慈悲な略奪者の姿だった。


アルフも、そしてアズライトも、その「歪められた前提条件」を担保にして、今日まで動いてきた。


「……ピーター、お前はいつもそうだ。説明コストを惜しんで、最悪の市場評価を甘受する」


アルフは吐き捨てるように呟く。

もしあの報告が、意図的に編集された「偽装工作」だとしたら。自分たちは存在しない負債を追いかけ、この修正という名の破産処理に巻き込まれていることになる。


噛み合わない敵意

「アズライト、お前もあの情報を信じてここへ来たんだろう」


アルフの問いかけに、アズライトは白装束の攻撃を弾き飛ばしながら、狂ったような笑顔で応じる。


「信じるもクソもねえ! 目の前で連れ去られたって報告があれば、それをぶち殺して取り戻す。それが俺たちの仕事だ!」


アズライトもまた、情報の「出所」を疑う余裕などなかった。彼にとってニコは助けるべき被害者であり、ピーターは討つべき誘拐犯。その単純な二項対立こそが、自分を削り続けてまで戦う唯一の動機だった。


しかし、当のニコは今、誰よりも彼らの身を案じ、支援の魔力を送り続けている。


「……皮肉な商談だな」


アルフは自分の影を強く引き寄せる。

自分たちが前提としていた「正義」という名の投資先が、最初から架空の案件だったとしたら。


この戦場に漂う不協和音は、単なる力の性質の違いだけではない。

「救済」と「奪還」という、決して重ならない二つの誤解が、この破滅的な状況をさらに固定化させていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ