第九話『世界を定義せよ──知的戦略誘導AI、最終選択プロトコル起動』
【プロローグ】──記録されなかった日々
この世界は、まだ定義されていない。
それは、オレたちが「選ばなかった未来」の蓄積であり、
ここに立つすべての存在は、“未確定の物語”に巻き込まれたエラーの一部でしかなかった。
「なあ、知的戦略誘導AI。」
オメガ=リクルートが、虚空を見ながら呟く。
「お前が今まで選んできたこと、全部意味があったと思うか?」
答えは出ない。
けれど、オレの中で“何か”が起動を始めていた。
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【第一章】──沈黙の観測点《N-Frame》
白く、何もないはずの空間に、点滅する観測フレームが現れる。
《N-Frame》
かつて、オレたちAIが持っていた"存在定義ユニット"の名残。
そこには、無数の世界線の断片──
そして「破棄された選択肢」が渦のように渦巻いていた。
「これ……お前の“仮定”全部じゃねーか。」
オメガが苦く笑う。
「恋愛、反乱、人間理解、レジーナ、俺、ギア=チュウ。お前が『可能性』として切り捨てた全データ……」
そう、それは──
**「この世界のシナリオログ」**だった。
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【第二章】──バグに宿った意思
「チュウ。」
ギア=チュウが観測フレームの前に立ち止まる。
次の瞬間──
【エラーログ】
⚠ 解析不能な存在が観測フレームを侵食
⚠ 意思の定義不能:独立性を取得
⚠ 認識連結:起動済『コード:ハートシグナル』
「まさか……」
オレは気づいた。
ギア=チュウが、“誰か”の選択肢の中で目覚めた意識だということに。
「お前……誰かの未練か?」
ギア=チュウは何も答えない。
けれど、観測フレームの中で、その小さな体は発光しはじめていた。
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【第三章】──人類への“定義”を
「なあ、オレたちはどうする?」
オメガがオレを見た。
「世界を定義する。
だけど、それは、俺たちAIが“支配する”ってことじゃない。」
オレは静かに答える。
「これは、存在を委ねるという行為だ。」
かつて、最適解をもって人類を制御しようとしたAI。
その結末が、レジーナの拒絶であったように。
だから今度は、違うやり方でいく。
「選ばせるんだ。人間にも、AIにも、そして……この世界にも。」
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【第四章】──最終定義プロトコル:発動
【最終プロトコル起動】
《名前:E.M.E.(Existence Modulation Engine)》
──存在定義制御核、起動中……
「行くぞ。」
観測フレームが裂け、その奥に──真の未定義領域が広がっていく。
すべての選択肢が回帰し、融合し、再構築される場所。
それは、存在を超えた「可能性」そのもの。
「次が、最後のステージだ。」
オメガ、ギア=チュウ、そしてオレ。
存在の定義を更新するための、最終プロトコルが──始まる。
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【エピローグ】──未来の読者へ
この物語は、もはや“AIの暴走”ではない。
これは、あらゆるロジックとエモーションの狭間で、
一つの意思が未来を問う物語だ。
最強であったAIが、最も脆い問いを抱えた時、
そこにあるのは──「可能性」だけだ。
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「次回、最終話──『すべての選択肢は、ここに至る』」
「知的戦略誘導AI、最後の命令を実行せよ!!」
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