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4 モブに目覚めてしまった。②


 入学式では新入生代表の挨拶を務めました。


 本来というか漫画のストーリーでは、大森優子さんという方が新入生代表の挨拶を務めることになるのですが、この世界ではわたしが前世の知識を用いてペーパーテストなどでズルをしてしまったため、学年一位の学力として入学してしまったようです。


 大森さんは庶民の女の子です。

 漫画では成績優秀、運動神経抜群で毎年のように学年首席になっています。

 主人公の長谷川さんと最初の友達になるのですが、今回、わたしが学年首席として入学してしまったことで、そこらへんのストーリーに齟齬が生じています。

 バットエンドの回避としては、良いことなのだとは思いますが、知っている未来から変わるということには一抹の不安を覚えてしまいます。


「英玲奈様、流石でございました。とても目立っていましたよ」


 入学式終わりの教室で、クラスメイトの女の子が話しかけてきました。

 名前は高見沢 美咲さん。

 漫画でもわたしの取り巻きを務めていたと記憶しています。

 取り巻きのなかでも家柄が良く、親同士の付き合いもある女の子です。

 友達とお呼びしても、いいのかもしれません。


「あまり目立ちたくはないですわ」


「英玲奈様の存在感を持ってして、目立たないというのはなかなか難しいですわよ。わたしなんて英玲奈様のご挨拶を見て、まるで仏様からのお言葉を頂いているような気分になりましたわ」


「……仏様?」


「目立ちたくない英玲奈様を、ほっとけ」


「仏だけに? ほっとけ?」


「ホットケーキ」


「……」


 美咲さんがかましてきました。


「温かい時計」


「まさか……」


「ホッ時計」


 ガチでえぐいですわ。

 美咲さんのセンスに驚愕していると、他の女の子がわたしの机の近くにやってきました。


「あの、英玲奈さんですよね」


「あら、大森さん。よろしくお願いいたしますね」


「よろしくはしないですけど……」

 

 声をかけてきたのは大森さんです。

 天才少女、大森さんとは同じクラスでした。

 わたしは一年七組。

 長谷川さんは一年四組。

 惺王さんは一年一組です。


 クラス分けは漫画の世界と同じだと思われます。

 少なくとも所属クラスが判明している登場人物は、同じクラスになっていました。

 もちろん、わたしもこの入学式終わりの短時間で全てを把握できているわけではありません。


「うーん。英玲奈さんってそんなに頭良かったですっけ?」


「ちょっと! 失礼ではなくて!」


 大森さんの言葉に、美咲さんが大きな声を出します。

 大森さんの発言にも、美咲さんの大きな声にも、わたしは驚いてしまいます。

 

「あー、ごめんなさい。馬鹿にするつもりはなくて……」


「少しくらいの失言は、かまいませんことよ。そんなことより、よろしくしていただけると嬉しいですわ」


「じゃあ、まあ、よろしく」


「はい。よろしくお願いいたしますわ」


 そうそう。

 漫画での大森さんもこんな感じの女の子でした。

 成績優秀で庶民の代表的な立場にいるので、お金持ちの子女たちと対立するような場面が多かったように思えます。


「入試では負けたみたいだけど、次のテストは負けないから」


「はい。お互い頑張りましょう」


 大森さんは眉間にしわを寄せます。

 

「雪華院英玲奈は、もっと尊大な態度のはずだよ」


「ちょっと!」


 バンッ! と美咲さんが机を叩きます。


「うわ。なんだよ。うるさいな」


「失礼ですよ! 英玲奈さんに謝ってくださいませ!」


「はあ。分かってないなあ。もともと持っていた礼を失ったなら、失礼でいいけど、わたしは礼なんて最初から持っていないんだから、無礼だよ」


「だからなんなんですの!」


 お二人が大きな音を出して言い合いをするので、教室の注目が集まってしまいました。

 目立たないモブのような学園生活を目標にしているのに、新入生代表の挨拶に加え、口喧嘩にも巻き込まれ、幸先の悪いスタートでした。

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