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俺達は今、被災地の街中を歩いている。
災害状況を確認する為だ。
かなり酷い。
殆どの家屋が半壊、倒壊している。
すぐに復旧しても恐らく余震の被害を受けるだろう。
復旧は余震が落ち着くまでは手が出せないだろう。
火の手は上がっていない所を見ると、供給ラインはうまくやってるのが解る。
相変わらず無人機のヘリコプターが飛んでいるがかなり五月蠅かった。
「にゃ~ん」
猫の鳴き声か?、そう思って振り向くと瑠奈に抱かれた猫がいた。
救援は人が優先でペットは放置されている。
こういう時は仕方ないと思いつつもやはりやり切れない思いはある。
「その猫は・・・まあいい。広場に戻ろう」
捨てておけと言いそうになったが、瑠奈の訴える様な目を見て言えなかった。
それに瑠奈が猫を抱いている姿が余りにも可愛らしかったのだ。
飼手が見つかるといいのだが・・・。
広場に戻ると既に仮設住宅が設置されていた。
インフラを必要としない仮屋だが、この世界の住宅と差ほど変わらない住み心地だろう。
我らの世界から時空移動で運んだのだろう。あまりの対応の早さに住民も驚きの声が聞こえてくる。
現在は仮設住宅の割り当て表が配られている。
我が隊員たちも住民の誘導に忙しそうだ。
俺と瑠奈の帰還に気づいた少尉が俺の敬礼をし小走りに近づいてきた。
「少佐、ご無事でなによりです。住民の避難はひと段落といったところであります」
「大変結構な事だ。よくやってくれている」
「恐縮です。我々の災害復旧拠点にご案内します。数日間、復旧の為滞在する事になります」
「解った。フォトン・リカバリーが使える者は何人いる?」
「私を含めて五名です」
「それだけ居れば半日で何とかなるが、余震の方は何時まで続く?」
「三日間はこの調子かと」
「解った。宿舎の方に案内してくれ」
「ところで少佐・・・」
少尉と呼ばれた女性が男の後で猫を抱いている少女を見ながら語り掛ける。
「その猫はどうするつもりで?」
「逃がせとは言えなかった・・・。なので少しの間面倒を見る。瑠奈が」
「・・・・了解しました。少しの間なら問題は無いと思われます」
「にゃ~ん」
瑠奈は無表情だがしっかりと猫を抱きしめていた。
案内された宿舎に入り、他の隊員よりも先に休ませてもらう事にした。
それにしても、たった一時間ぐらい前にこの世界に時空移動してきたのだが、いきなりビルが倒れてきて咄嗟にフォトン・イレイサーを使ってしまった。
本来ならばフォトン・リカバリーを使うべきだったのだが、終わってしまった事は仕方ない。ビル内は無人だったのでよかった。
これもシュミレーターの思惑通りなのだろう。あのビルは消し飛ばしてしまったが、恐らく問題は無いと思う。
フォトン・イレイサー。
究極の光子兵器だ。
原理は超高光速の光を作り出し、物質と時間を同化させ、物質を結晶化する前まで時間を巻き戻す。
そして巻き戻した分子に融解・蒸発潜熱を与え体積膨張させ上空に吹き飛ばす。
顕熱は与えないので周りに加熱の影響は無い。
そして大気圏まで飛ばされた物質は宇宙空間に凝縮・凝固潜熱を放出しその内雨となって地上に還って来るのだ。
第三者から見たら強烈な光に晒されたビルが気づいたら無くなっていたって感じだ。
ビルは中身は空洞なので実質的な体積は見た目より遥かに小さい。
気体になるので恐らく体積は五千倍以上になったのだろうがすぐに上昇してしまうので地上付近に影響は殆どないのだ。これが山程なら竜巻が起こり、甚大な被害が出る可能性もある。
射程は光が届く範囲。実質無限だ。
後、津波をおさめたのはフォトン・リカバリーだ。デバイスは同一だがイレイサーの様に無限に時間を巻き戻すのではなく、指定した時間に物質を巻き戻す。
今回は体積はあったが、ベクトルを受けた海水を十分程度巻き戻し、ベクトルを受ける前の海水に戻したのだ。
まあ、この世界に時空移動してきて十分以内にこれ程の高エネルギーを使うとは思わなかった。
宿舎は仮設だが、不自由するような事は無い。この世界の仮設は快適だ。
部屋に入り現地の報道を見る為、映像デバイスを作動させるとやはりこの地域一帯の情報が映っていた。
上空から撮影された映像は地震によって廃墟と化した町だった。
幸い陸地への影響はほぼこの辺り一帯のようだった。
「にゃ~ん」
猫の鳴き声が聞こえる。
その方向を見ると瑠奈が餌を与えていた。
とても可愛いい。
まあ、猫とは言え保護できたのは幸いだったのだろう。
映像デバイスの音声に耳を傾けると、なかなか的確な状況分析をしている様だ。
陸地への被害はそこまで無かったが、津波を対処しなかった時の被害を的確の分析していた。
もし津波に無策だった場合は推定で五千万人に影響が出ていた様だ。
映像デバイスのチャンネルを変えると、津波が来る直前が映しだされていた。
そして突如として発生した光。その後の海の状況も映し出される。
映像解説者は我々の技術を高く称賛している様だった。
この仮説住居も映し出され、対応の早さに驚愕を隠し切れない様子だった。
そして十年前のシュミレーターの計画を分析している専門家も映し出されていた。
この災害はこの世界でシュミレーターの影響力が絶対になる事件だったのだ。
読んで貰えてありがとうございました。




