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第12話:愚かだったあの時の僕~クリス視点~

 僕がマーデンに調査を依頼してから1週間、早速調査結果が上がって来たのだ。


「クリス、落ち着いて聞いてくれ。俺が調べた結果、イザベル嬢の言っている事は、全部本当だった。リリアナ嬢は、陰でかなり酷い事をイザベル嬢にしている様だ」


 そう言うと、今までリリアナがイザベルにしていたとされる悪事が、ずらりと並んでいた。


「こんな酷い事を、リリアナは…」


 あんなに優しかったリリアナが、こんな酷い事をするだなんて…でも、マーデンが調べたのだから、本当なのだろう。


 いくら何でも、酷すぎる。僕はすぐにリリアナに調査報告書を叩きつけた。


「リリアナ、一体どういうつもりだい?こんな酷い事を、イザベル嬢にしていたのかい?」


「これは一体…事実無根ですわ。私はこのような事は…」


「言い訳は聞きたくはないよ。この件は、僕から君の父親にも、しっかり抗議させてもらう。これ以上、僕を失望させるような事はしないでくれ!もしまたイザベル嬢に何かしたら、その時は婚約破棄も視野に入れさせてもらうから!」


 そうはっきりと、リリアナに告げた。するとリリアナは悲しそうな顔で…


「クリス様は、イザベル様を愛していらっしゃるのですか?だから私の話は聞いて下さらないのですか?私はこのような酷い事は、何1つしておりません。信じて下さい、私は…」


「これは第三者に調べてもらったものだ!君がなんと言おうと、事実なんだよ。これ以上、僕を失望させないでくれ。話は終わりだ、早く出て行ってくれ」


「分かりましたわ…失礼いたします」


 僕に頭を下げると、悲しそうに部屋から出て行ったリリアナ。その顔を見た瞬間、胸がチクリと痛んだ。僕だって、あんな酷い事を言いたい訳ではない。今でもリリアナを愛している。だからこそ、罪もないイザベルに酷い仕打ちをしたリリアナを、僕は許すことが出来ないのだ。どうしてリリアナは、そんな人間になってしまったのだろう…


 落ちこむ僕を慰めてくれたのは、イザベルだった。


「クリス様、ごめんなさい。私のせいで、大切な婚約者のリリアナ様と不仲になってしまわれたと聞きましたわ。私でよければ、お慰めいたしますわ」


 そう言うと、イザベルはゆっくりと僕に近づいてきたのだ。そして、唇が触れそうになった時…


「悪いが僕には、一応まだ婚約者がいる。そういった事は、控えてくれ」


 そう伝えた。


 そして決定的な事件が起こったのだ。


 何とリリアナがイザベルを毒殺しようとした罪で、捕まったのだ。どうやらイザベルが飲もうとしていたお茶に、毒が入っていたらしい。その毒を入れる様に指示したのがリリアナだと、メイドが泣きながら自白したのだ。


 リリアナのカバンから、毒も見つかった。


 まさかリリアナが、イザベルを毒殺しようとするだなんて…そこまでリリアナは地に落ちたのか…


 さらにリリアナがイザベルのお茶に毒を入れる様に指示をしている姿を、目撃したという人物まで現れたのだ。そう、侯爵令嬢のカーラ・ミューストだ。我が国では貴族を裁くとき、虚偽の証言をした場合は、極刑に処される事もあるため、誰も虚偽の証言をするものはいない。


 それくらい、皆発言には慎重になるのだ。そんな中、侯爵令嬢でもあるカーラがその様な証言をしたため、カーラの証言はかなり信ぴょう性があると判断された。その結果、リリアナはイザベル嬢毒殺未遂の罪で、毒による極刑が言い渡されたのだ。


 まさか僕の婚約者が、罪もない侯爵令嬢を毒殺しようとするだなんて。リリアナにはしっかり罪を償ってもらおう。


 そう思い、最後にリリアナがいる地下牢を訪ねた。食事もろくに食べていないという事で、やせ細り、目もうつろのリリアナがそこにはいた。


「リリアナ、君の処罰が決まったよ。君はイザベル嬢に飲ませようとした毒を飲んで、命を落とすことになった。自分でまいた種だ、しっかり責任は取ってもらう」


 僕の言葉を聞き、ゆっくりと顔を上げたリリアナ。


「私は、イザベル様に毒を飲ませようとはしておりませんわ…そう訴えても、あなた様は私の言う事など、信じて下さいませんよね…今までも私の言う事など、信じて下さいませんでしたから…」


 そう言って力なく笑ったのだ。


「今更何を言っているのだ。決定的証拠もそろっているのだぞ。それなのに、まだ自分の罪を認めないというのかい?いつからリリアナは、そんな人間になってしまったんだ!僕は…」


「私は、今も昔も変わっておりませんわ。変わってしまわれたのは、あなた様です。ですが、私が何を言っても、無駄ですものね…毒でも何でも飲みますわ。ただ…どうか私の家族だけは、見逃してくださいませ…私の家族は、何も悪くはありませんので」


 今にも泣きそうな顔で、リリアナが呟いたのだ。既に死を覚悟しているのだろう。絶望に満ちた目をしているリリアナ。そんな中でも、彼女は最後まで家族の事を心配しているのか?


 ダメだ、きっとこれはリリアナの策略だ。とにかく、この場から去らないと。


「それじゃあ、僕はもう行くよ。リリアナ、しっかり罪を償ってくれ」


 そう声をかけて、僕は地下牢を後にしたのだった。

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