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理狂う人  作者: たけしば
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1-5 少数派は周辺に経済効果をもたらせば叩かれない

前回までのあらすじ。ついていったら大麻がいっぱい!


妙な臭いが漂う部屋。見渡す限りの大麻。ここは、大麻の密造現場だったのだ!しかも、見た感じ、水耕栽培だ!妙に技術的だぞ!

「えへへ、俺達、こんな事して、おまんま食ってるんだ~」

ツヨシさんは恥ずかしそうに苦笑いしている。

「あ~、あ~、はい。これは・・・これはぱないっすね~・・・」

ボクはどう答えていいのやら、下手な事言えば、殺されるかもしれん。とにかくボクも、苦笑いするしかなかった。

「はいはい。まあ、そうなるよな~。非合法だもん。悪い事だもん」

萌愛さんはボクの背中に何かを押し当てている。下手に身動きが取れない。

「あの・・・萌愛さん・・・ボクは~、ほら、海外では合法って聞きますし、その、ありだと思いますよ。ありだと思います。アリ中のアリ、ありありのアリーヴェデルチですよ」

ボクは、震えていた。まるで、携帯のバイブレーションのように震えていた。

「あ、そんな、怖がらないで。これは、合法なタイプなんだ」

震えるボクを見たツヨシさんがそんな事を言ったんだが・・・

「え?合法・・・なのにこんな所で・・・」

しばらく気まずい空気が流れる。

「ごめん、嘘。違法!」

「ですよねー!ですよねー!」

背中に強い圧力を感じる。萌愛さんが何かをぐっとボクの背中に押し付けてる。

「よく聞いて、葉月・・・だっけ?ねえ、あたしらは違法な事やってんの。でも、これだけの設備が充実してるって、どういう事だかわかる?」

「え・・・?」

そう言われれば、確かにそうだろう。それだけ大麻が儲かるのだろうか。

「欲しい人が多いの。今ね、この国は大麻ブームの真っただ中にあるの。知らなかった?」

それは知らなかった・・・

「いい?わかってると思うけど、誰かにこれ言ったら、ぶっ殺すから」

「あ~でも、ボク、これを話す友達もいませんよ・・・」

しばらく気まずい空気が流れる。

「あ~、葉月くん、友達いないんだ~・・・ぼっちか・・・うん、よし、俺、友達になるよ」

と、ツヨシさんがフォローしようとしている。しかし、これはフォローなのか・・・

「まあ、ボッチならボッチでいいから、そのメスニナール錠剤の入手経路、なんとかしてつかめない?」

萌愛さんは話を続ける。

「あのね、うちら、とある中国人のバイヤーに大量に持ち逃げされたんだよ。そいつが持っているリキッドを奪い返すか、なければその分の金を巻き上げなきゃならないのさ。このまま持ち逃げされたんじゃ、商売敵に笑われるのさ」

あ~、事情はわかりました。

「しかし・・・その中国人バイヤーと関係あるか・・・わかりませんよ?」

「いい?華僑の連中はそれなりにコネがある。あんた、客のフリして内情調査するんだよ」

これは、断る事は出来ないのだな・・・

「わかったよ・・・わかったから、背中のそれ、押し付けるの止めて~」

ボクは泣き寝入り状態だ。でも、萌愛さんは背中に押し付けていた謎の物体を引き下げてくれた。ボクはさりげなく振り返る。

「あ、見ちゃった?」

そう、背中に押し付けていたのは、黒くて四角い形して、先端に穴があって・・・どう見ても拳銃だ!グロック系の拳銃だ!グロックではじめよう新しい脅迫を~

「あ!こら萌愛!簡単に拳銃を人に向けるな!」

ツヨシさんは起こってる。

「は~い。・・・わかった?これ、グロック19。いいでしょ?」

あ~、まじか・・・実銃か~・・・今日は2回も銃を向けられた。なんて日だ!欧米か!?

「いい?葉月くん。あなたの個人情報、免許書、遠くから望遠カメラで撮影済みだから。住所とか、あたしは割り出せるよ。絶対、逃げれないからね」

やはり、脅してくる萌愛さん。恐ろしい子・・・

その後、ボクは萌愛さんの連絡先を教えてもらい、ロシア生まれのSNSのミハエロビッチグラムをスマホに入れ、いつでも萌愛さんに連絡できるようにさせられたのだった。

ボクは解放され、人民解放軍され、部屋に帰った。

どっと疲れて、ボクは帰ってすぐ、冷蔵庫にキープしていたエシャレットをかじって、癒しを求めた。やっぱり、エシャレットしか勝たん・・・

そうだ、貯金が少ない。この調査、上手く行ったら報酬とかあるのかな?疑問に思った事をすぐ、ミハエロビッチグラムで萌愛さんに質問した。答えは、報酬は結果次第だけど出すとの事。助かるわ・・・

でも、どうやって調べるべきか・・・外を見ると、暗くなってきた・・・

突然、ベランダに人の影。いや、サングラスをかけて帽子を深くかぶったマスクをした男が立っている!手には金づちをもって、窓をぶっ叩いてカチ割って、中に入ってきた!

「いきなり団子!何者!!」

ボクはびっくりころころびっくりこ!お池にはさまってわあ大変!泥棒出て来て

「コンニチハー」

これは突然の大ピンチ!

「ココニ、クスリ、タカイ、クスリ、マチガイ、クスリ、」

片言の日本語、何処人かわからんが、薬を誤送した運び屋かもしれん・・・ここは、警察を・・・いや、絶好のチャンスだ!飛んで火にいる夏の虫だ!こいつを捕まえれば、元締めまでたどり着くかもしれない!しかし、相手は手に金づちを持っている。立派な武器だ。ボクも何かを持たなければ・・・周囲を素早く見回す。パソコン!だめ、勿体ない。スマホ!で、どうしろと・・・エシャレット!食べたい。座布団!君に決めた!

ボクは素早く座布団を手にする。相手は手に持った金づちを振り下ろす。それをボクは左に受け流す!そして、相手の顔面に座布団を押し付け、小指から順番に握りしめた拳で、座布団ごと相手の顔面を殴りぬける!!相手はぶっ倒れた。ボクは素早く、ノートパソコンの電源コードを使って、倒れた相手の手を縛り上げた!

「タスケテ、ヤメテ、タスケテ、」

相手はなんか、すぐにあきらめたのか、抵抗しなくなった。ボクは萌愛さんに連絡をした。すぐに駆け付けると言っている。さて、どのくらいかかるかわからないけど、それまでこの何人かわからない相手を押さえつけていればいいか・・・

「タスケテ、オネガーイ、」

「ダメ、タスケナイ、ダメ、タスケナイ」

ボクまで片言が感染してしまう。

しばらくして、萌愛さんが仲間を連れて部屋に入ってきた。鍵、閉めていたのに普通に入ってきた。ピッキングしたのかな・・・

「コイツ、コイツダヨ、ツカマエタヨ」

「なんであんたが日本語わからんくなってんのさ・・・」

萌愛さんはあきれた顔をしている。萌愛さんが連れて来た、お仲間さん、肩幅が広くて、なんか鍛えてる感がある人が、黒づくめの頭を掴んで、何か話し始めた。中国語みたいだ。それを聞いた相手も流暢に国外の言葉で話し始めた。

「萌愛ちゃん。こいつ、確かに例の中国人の手下だよ」

「じゃあ、あいつがいる場所、聞きだして見ちゃってよ」

「ぎょい~」

肩幅の広い人はまた、中国語と思わしき言葉で会話をし始めた。

「あ、萌愛さん、なんとかやりましたよ・・・相手からやってきましたけど・・・」

萌愛さんは腕を組んで、うなずいた。

「チャンスを逃さなかった所だけ、評価する感じ」

あまり評価されていないようだった。

「こいつから話を聞き出すために脅すから、人数いたほうがいいから、一緒に来い」

ボクは萌愛さんに従った。アパートの前に、堂々とダッヂの車が路上駐車されてて、捕まえた中国人らしき人をさらにきつく拘束して、トランクにぶち込んだ。萌愛さんと僕は後部座席に乗る。肩幅の広い男は運転席に乗った。大きな低音が鳴り響く。エンジンがうなっている。ダッヂの車は走り出した。ボクはなんか、生きた心地がしなかった。拉致されているような気分だった。この先、どうなるのだろうか、心配しかなかった。

「えっと、葉月くん?でいいんだよね?」

運転している男はボクに話しかけて来た。

「あ・・・はい・・・」

「うちのボスが君を妙に気に入ってるみたいで、あ、おれっちは呉槌 ケント(ごつい けんと)っていうんだ。まあ、よろしく」

「あ・・・はい・・・」

会話ははずまなかった・・・

しばらく車は走って、人気のない埠頭にたどり着いた。拘束した中国人を下ろしたケントさんは、海の近くに彼を座らせて、何か話してる。相手は涙を流しながら、どうやら命乞いをしているようだった。

「ケント~。必要な話しは済んだ系~?」

ケントはうなずく。すると、萌愛さんは、突然ボクに拳銃を手渡してきた。

「あ、これ、モデルガンだから、相手、他にも何か隠してると思うから、これつかって脅してみて」

ボクは、モデルガンと言われた拳銃、形状は・・・この前、突きつけられたグロックと同じだと思う。多分、グロック19。ボクは、それを、中国人に向けた。

「・・・どうすればいいかな?」

「空砲だから、うっちゃえ!脅かしてやっちゃえ!」

萌愛さんは笑いながらそう言った。ボクは早く済ませたかったので、中国人めがけて引き金をひいた。ドンという大きな衝撃に腕が持ち上げられた。ちゃりんと薬莢が地面に落ちた音がした。拳銃は上部のスライドが後退し、そこで硬直している。排莢口と銃口からほんのりと白い煙が出ていた。初めての衝撃、モデルガンにしてはとても、強い衝撃だった・・・気が付けば中国人は仰向けに倒れていた。妙な汗が噴き出したし、背筋に寒さが走る。

「・・・弾、出たやつ?・・・これ」

ボクは振り返る。笑顔の萌愛さんは、ボクから拳銃を取り上げ、弾倉を抜き、別の弾倉を挿入し、上部のスライドを引いて、拳銃の後退した上部を戻した。装填したのだ。そのまま萌愛さんは倒れた中国人に近寄り、そして、それに銃口を向けた。ダン、ダンという乾いた発砲音と共にチカ、チカとまぶしい光が放たれる。中国人の体はビクン、ビクンと跳ねるように動いた。そして、全てが静かになった。

「終わり。ケント、掃除屋さんに連絡して」

人を殺した彼女はとても満足した笑みを浮かべていた。そして、ボクの肩に手を乗せ、耳元でささやいた。

「あんたも共犯ってやつだから。よ、ろ、し、くー」

悪夢だ・・・ボクも、人殺しに加担してしまった・・・

その後、ボクはアパートまで送ってもらった。別れ際に、10万円、手渡された。また明日と、見送られる。ボクは部屋に戻って、散らかった部屋を掃除して、窓にガムテープはって、そして、シャワーを浴びて、冷蔵庫からチューハイ出して、エシャレットをさかなに飲んで・・・

思ったより動揺していなかった自分がいた。これって、どうよ・・・

しかし、これで10万円・・・高いのか、安いのか、ようわからんな・・・



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