3-1 国民と民族はイコールではない
喫茶店&バー、深紅王宮殿にて。
会議が行われた。
出席者は下記の通りだ。
馬路手 ツヨシ(まじでつよし)
林森 大地
呉槌 ケント(ごついけんと)
バンカラJ.A.P.こと矢場坂 詠人
馬萩田 知溜
馬路手 萌愛
首狩 刹那
夏水 葉月
計8名
深紅王正規メンバー全員が集合したのだ。
1つのテーブルを囲うように、各々椅子に腰を掛ける。
「本日、集まってもらった理由は1つ。緊急事態が発生したのだよ」
萌愛さんが席から立ち上がり、話し始めた。
「軍魔県の廃村だった集落、木目捲村にあたしらと他、5団体で資金を出し合って開拓し、大麻の隠れ畑を作って運営しているってのはみんな覚えてるかな?」
へえ~・・・はじめて聞いた。
「知らねえぜ~~~!興味ね~~~からな~~~!」
バンカラJ.A.P.は興味無さそうだ。
「あ~、詠人は黙ってて。まあ、それでだ、この木目捲村を管理していた人達、裏の求人で募集して集めた6人と、管理監視の為に村に派遣されてた出資団体のグレエングムの2人、合計8人が村に在住していたのだけれど、一昨日から連絡が取れなくなっているんだ。送電設備もやられたようで、村に設置した監視カメラも全滅。何が起きたか全くわからないんだな。そこで、急遽、調査団を組む事になったのさ。5団体の内、人員を出せる余裕がある2団体、グレエングムから3人、ビーフジャンキーズから2人が行く事が決まったのだよ。そこで、あたしらも何人か派遣しようと思ったんだ」
「あ~~?!めっちゃド田舎なんだろ~~?!どうせ、土砂崩れでもあったんじゃねえの~?知らねえけどよ~~~」
バンカラJ.A.P.はかったるそうに答えた。
「正直、災害の線も考えたんだけど、その場合、送電線の都合上、他の集落も停電している事になるのさ。流石に復旧活動が行われるはずなのだよ。考えられる事は、防犯カメラの配線を切られたとしか思えない。なぜなら、村のサーバーが生きているからさ」
「萌愛、それは・・・いったいどういう事だ?防犯カメラだけ的確に殺されている状況・・・・人間の仕業か?」
知溜くんの質問に対して、萌愛さんはうなずいた。
「相手が何者なのか、正直検討が付かない・・・あり得る線としては、中国マフィアか軍馬県の土着ヤクザ、そうで無い場合、裏求人で集めた闇バイターが何かしらの理由でもめたか・・・・」
「そんな何処にやべえやつがいるかわからない状況で、向こう行った所でな~にができるっつーーーーんだぁ~~~?」
バンカラJ.A.P.は嘲笑う。
「とにかく、あたしらの大事な大麻を保護するだけでもしないと、損害額がデカくつくのだよ!ちなみに、あたし自身は行くつもりだよ。大麻のビニールハウス管理システムの不具合調査も、監視システムの状態も、現地で直接見る。それに行方不明者の捜索にドローンも使う。他に葉月にも来てもらうよ。いい?」
え?ボク?
「あ、はい・・・ボクで役に立つなら・・・」
「うん、あんたは大事な戦力だよ。他、詠人。あんた、しばらくスケジュール空いてるでしょ?」
バンカラJ.A.P.こと、詠人はブーブー言っている。
「俺が~~~?!ド田舎に~~~??!っざっけんな~~!だったら刹那くんとか、知溜くんとか、ドンパチやれるやつに頼めよな~~~~!」
「刹那と知溜は万が一に備え、こっちにいてもらう。もし、相手が中国マフィアだった場合、陽動作戦の事も考えられるからね」
「だぁぁーーーー!でも、俺じゃなくていいっしょ?!!なあ!?」
詠人くんは周りに賛同を求める。
「ツヨシくんは動かない方がいい。うちとケントくんは大事な仕事の交渉がある。面倒だけど付き合ってやってくれ。な?」
「あーーーわかった!わかったよ!くそが!だがよ、なあ!?おんな、俺の女ひとり連れて行っていいよな?!!なあ?!!」
「まあ、来てくれるなら連れて来てもいいけど?」
「っっしゃー!おしっ!じゃあしぶしぶ行ってやんよぉぉ!」
こんなノリで、ボク達は軍魔県の秘境に行く事になってしまったのだ。
出発の当日、ハイエースに荷物を乗せる。4人分の服とかの旅行セット。他に、萌愛さんのドローンや何かの装置、ハイエースは結構満帆だ。
「葉月くん・・しばらくの間、会えないけど、気を付けてね」
荷物の準備を手伝いに来てくれた刹那くんが、寂し気な表情をしていた。
「連絡するから、刹那くんも元気にしててね」
そう言って、刹那くんの手を握った。
「・・・ペアチョーカー、今気が付いたよ」
ボク達をじーっと見ている萌愛さんがなんか言い出してる。
「葉月のチョーカーに鍵アクセサリー・・・刹那のチョーカーにハートの鍵穴アクセサリー・・・あたしはね、攻守逆だと思うんだよ」
真面目な顔で何か言ってる萌愛さんだが、何かきもい。
「萌愛さん、変な目で見ないでよ」
「はいはい、どうせあたしゃーピュアな心を無くした汚らわしく腐り果てた女ですよ~だ」
そう言って、萌愛さんは荷物の点検を始めた。
「めっちゃ田舎って、さいたまよりも田舎なの~?うける~」
知らない女がやって来た。バンカラJ.A.P.の女だ。この女という表現が、彼女という意味なのか、ただの情婦かはわからない。
「あ~~、俺の女、紹介するわ~~~!ボンちゃんってんだ!」
「どうも~、あーし、磯富良 ボン(いそふら ぼん)です~。ボンちゃんって呼んでください」
ガーリーな感じの淡い色のワンピースで、細くて綺麗な足が見える。髪型も眺めでふわっとした感じだ。素直に化粧も上手い。バンカラJ.A.P.には勿体ない程の女の子だと思った。
「あ~し~、普段はキャバ嬢してます~。あ、そこでは~ピョッコチーって名前でやってます~。田舎暮らしに興味ありまして~、お誘いに乗っちゃいました~。よろしくお願いします~」
各々挨拶をする。いざ、出発なのだが、運転はボクがすることに・・・高速道路を使って長距離運転するなんて初めてだから緊張するぜ・・・高速道路童貞だから、どの乗り口に入ればいいかもわからにぜ・・・でも、カーナビがあるから行けるはずさ。
ハイエースの運転席にボク、助手席に萌愛さん、後部座席に詠人くんとボンちゃんが乗って、いざ出発。
お見送りしてくれる刹那くん。しばらく会えないのマジさみしいわ~・・・
こうして、未知なる冒険への何かがはじまったのであった・・・
つづくー!