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短編 お勧め順

だったら、召喚しないで下さい

作者: 紀伊章


 私、神田理紗子が背を丸めるようにしてトボトボと歩いていたのは、真冬の寒さのせいだけじゃない。


「またダメだった……」

 児童養護施設に居られるのは原則、高校卒業まで。

 もう高校三年の冬なのに就職が決まらない。

 ホントは進学したかったけど、経済的にそれは厳しい。


 面接で不採用を告げられることは無いから、一応まだ分からない。

 でも、人の悪意に敏感に育ってしまった私でなくとも、今日の面接の感触が悪い事は分かる。


 施設で仲の良かった子は皆進路が決まっていて、一人決まらない私とは少し溝が出来てしまっている。


「このまま決まらなかったら、どうしよう……」


 施設の職員さん達は皆優しいけど、どうしようもない事もある。

 私の就職活動を応援してくれてるのが、私のためなのは間違いない。

 でも、進路の決まらない私が厄介者なのも、多分事実なのだ。


「帰りたくないなぁ」


 思わず足を止めてため息をついた私を、下からの強烈な光が突然照らしだす。


「え?何?」



***


 光が強すぎて何も見えない状態から一変。

 見慣れない人達に囲まれていた。

 

「おお、成功だ!」

「聖女様!」


「聖女様、こちらへどうぞ」

「聖女様、お名前は何と?」


 警戒して少し後ずさりながら、周りを見回す。

 基本的に欧米系の顔立ち。

 言葉は日本語に聞こえる。


 半分くらいが、白を基調とした聖職者のような格好の人達。

 この人達からは一応、悪意は感じられない。


 もう半分位は、一昔前のヨーロッパの貴族みたいな、豪華で色とりどりの衣装を着た人達。

 ほとんどが、多分警戒している。

 そのくせ笑顔で名前を聞いてきたり、移動を促してくる。

 しかも数人、明らかな敵意を向けてくる人達がいる。


 聖職者っぽい人達の方に位置をずらす。

 ……派手組の警戒心が強まった気がする。


「状況を説明して下さい」


 一応、聖職者っぽい組の人に向かって言ったんだけど、派手組の眼鏡の人が答えた。

 

 曰く、この世界ユーグライトでは瘴気というものが溜まってしまう。それを数十年に一度、異世界である地球から適した女性を召喚して、浄化してもらう必要があるのだ、と。


 ネット小説で見たヤツだ、コレ。

 異世界トリップ。憧れた事もあるけど、実際に遭うとそんな能天気にはしてられない。


「元の世界に戻してもらえるんですか?」


 思いもよらなかった言葉を聞いたみたいに戸惑う人々。

 ……ダメなタイプの召喚じゃない?コレ。


 聖職者っぽい人達が、元の世界に居場所がないと思っている人しか対象にならない召喚方法になっているはずだったと説明してくる。

 過去に、元の世界に戻った人は居ないらしい。

 聖職者組(実際に教会関係者だそうで聖職者だった)の人達は、召喚の不備を謝罪し、申し訳なさそうにしている。


 それに対し派手組(今いるオードリア王国の王侯貴族)は、言質を取られるような真似をしてこない。

 遺憾の意を表しつつ、待遇面をちらつかせ、浄化作業を要求していると思う。


 私が、教会関係者側に寄ろうとしていると、取り分け装飾の豪華な若いイケメンが、声をかけてきた。

 

「……浄化をして下さる聖女殿に敬意を表しよう。王城に滞在されよ」


 さっきから明らかに私に敵意を向けていたイケメンが、渋々、という様子を隠しもせずだ。

 こう言っておけば絶対そうなる、と思っている様子。謎の自信を感じる。


「……それは命令ですか?」


「国王陛下であっても、聖女様に命令は出来ませんぞ」

 

 教会関係者が言ってくれる。良い事を聞いた。


「私は、教会に身を寄せたいと思います」


 イケメンはこの国の王子だったらしい。

 そのイケメンと、その周りの側近だというこれまたイケメン達が、私が王子を拒否った事にざわついていたが、無事、教会預かりとなった。


 いや、教会関係者も召喚という名の誘拐の共犯ではあるから、無事、は言い過ぎだけど。一応、狙い通り。



***


「遂に聖女様が召喚される日がきてしまったのね……」


 わたくしは、このオードリア王国の公爵令嬢、ヴィヴィアン・ルーシャー。

 そして、この世界を舞台とした乙女ゲーム「夜明けの世界であなたと」の悪役令嬢です。

 聖女であるヒロインが、この世界で夜に例えられる瘴気を攻略対象と共に切り開いて、夜明けの時代を迎えるというエンディングに因んだタイトルなのだと思います。

 メイン攻略対象であるウィリアム・オードリア王太子殿下の婚約者として、そして、やはり攻略対象のワイアット・ルーシャーの妹として、ヒロインの当て馬役がゲームでのわたくしですわ。


 まだ婚約前の幼少の頃に、この残酷な運命を教えてくれる前世の記憶を手に入れてから、必死に運命に抗おうとしてきました。

 けれど、ウィリアム様との婚約を一時遅らせる事は出来たものの、母の病死は防げず。

 結局はウィリアム様に恋してしまい、ウィリアム様からも乞われ、今では正式な婚約者となっています。


 今は、父にも兄にも、ウィリアム様にも愛されているとは思います。


 でも、ヒロインが現れてしまえば、これまでの絆など軽く覆ってしまう、そう思うと怖くてなりません。


 聖女召喚などなければ。そう思っても、この世界の瘴気を払わなければ、無辜の民に犠牲が出ます。

 民を思いやるべき公爵令嬢の立場で、反対など出来ない。


 この日にあって、わたくしに出来た抵抗は、聖女召喚の場に立ち会わない事だけ。

 ウィリアム様が、そして兄が、ヒロインに心奪われるのを見ているのが耐えられなくて。


「ああ、ウィリアム様。あなたの愛を失うのが怖い。

 どうしたらいいの?どうしたら……」



***


「リサ様。今日からリサ様のお世話をします。ケイティです」

「よろしくお願いします」

「リサ様は聖女様なんですから、頭を下げなくて良いんですよ」


 教会関係者に、リサ、とだけ名乗った。

 本名を名乗ると隷属の~、という小説ネタが頭をよぎったし。

 事情があって名字は気に入ってないし、理紗子じゃなくてリサって呼ばれてる事が多かったし。


 教会関係者からは、特に不審がられていない。

 こっちの世界では、平民が名字を持たないのが普通だし、リサという名もあるので、むしろ親近感を持たれている。


 あの後、改めて召喚を謝ってくれて、戻せるように異世界召喚の研究を進めてくれる事になった。

 まだ存命の先代聖女とも連絡を取って会わせてくれるそうだ。

 先代聖女は、聖女召喚に反対の立場を表明していて、私が召喚されるまでは教会に警戒されていた。

 今回、私が召喚されるなり元の世界に戻る事を口にしたため、教会側も改めて彼女の話を聞く事にしたらしい。

 教会側の手のひら返しみたいな気がするが、召喚はされる側にとっても良い結果であると信じていたのが覆って、混乱しているよう。

 先代聖女は今は、ディランという大国の皇太后をしているそうだ。


 数十年に一度召喚される地球人女性は、この世界の瘴気を浄化する事を期待されており、召喚後は聖女と呼ばれる。

 世界のって言ってるけど、大陸の、位の範囲のようだ。

 瘴気が何かはよく分かっていない。


 異世界召喚技術は教会が独占しているが、かなりコスト(魔力だったり、材料費だったり)がかかるので、国が持ち回りで担当し、聖女は各国を回る。

 浄化の能力は、召喚後十年から二十年ほどで衰えて来るので、ある程度で引退する。

 ほとんどの聖女は担当国の王妃になるそうだ。

 

 あの睨んできたヤツと結婚させられるの?と思って、聞いてみる。

 ヤツの名は、ウィリアム・オードリア。王太子。


「婚約者がいるの?

 聖女と結婚する予定っぽいのに?」


 聖女召喚の時期がずれる可能性があるが、次期国王の結婚が遅れるのも問題なので、最悪婚約解消などが可能な自国の貴族女性と婚約しておくものらしい。


「そんなにどうしても聖女を王妃にしないといけないの?」

「教会としては、推奨している訳では無いのですが……」


 召喚される女性は、十代後半。

 この世界の女性は二十歳位までには結婚するもの。

 聖女の力が使えるのが、召喚後十年から二十年。

 召喚聖女を直ぐに娶ってしまえば、自国の王妃=聖女の期間が十年から二十年。


 政治的な理由だなぁ。

 全方位的に不幸しか起きてない気がする。



***


「王太子殿下、お望みの物の入手に成功しました」

「ワイアット。お前にとっても業腹だろうに、良くやってくれた」


 渡された隷属の首輪を手に取る。

 これをあの忌々しい女の首にはめるのだ。

「後は、名が必要だが」

「リサ、と名乗っているとか」

「そうか」


 ヴィヴィアン、許せよ。

 愛するお前を日陰者になどしたくないが、王国の威光のために聖女を正妃に据える必要があるのだ。

 大国ディランでも同様にしていると聞いている。


「あのような見ず知らずの女をのさばらせはしない」

「御意」



***


 先代の聖女がやって来てくれた。

 二人だけで話をしている。


「結局、こちらを馬鹿にした話なのよ。

 子供を産まされたけれど、奪われたわ。

 わたしにはお飾りの地位しか与えられない。

 それで、十分だと思っているのでしょうね」


 聖女の役割を果たしつつ、皇后となって、産んだ子供は皇王になって、自身は皇太后となったけれど、実質的な妻と母の座は、側妃のものであり続けた。


「でも、抗うわ。

 あなたも協力してちょうだい。

 あなたのためにもなるはずよ」


 先代聖女は、アメリカ出身の方でした。

 ナディアさん。皇太后だけど、敬称も敬語もいらない、と言われた。

 言葉は、召喚時につけられた自動翻訳だった。


 ナディアさんの勢いに、NOと言えない日本人と化しそうだったが、ちょっとだけ抵抗、というか提案をしてみた。


「それも考えていたわ。

 聖女召喚をもう止めさせましょう」



***


 先代聖女のナディアさんと協力しあう事にした翌日。


「王太子殿下がいらっしゃいました」

 私が王子を嫌がっているのを知っているので、ちょっと困った様子のケイティが告げてきた。


「嫌な感じがするわね。

 隷属の首輪でも用意しているかもしれないわ」


 召喚当時のナディアさんは、本人曰く結構チョロかったらしく、逆に隷属の首輪は使われずに済んだそうだ。後年、反抗的になってから使われそうになったが、その時には、色々知識もついていて逃れたそう。


「わたしにも小娘だった頃があったと言う話よ」

 今のナディアさんは貫禄たっぷりです。


「逆に罠をしかけましょう。

 聖女に隷属の首輪をはめようとした、と教会側に確認されれば、もうリサがオードリア王国に囚われる理由は何一つ無いわ」


 私からすれば、勝手に召喚した国に自分の身柄の所有権がある、など到底受け入れられないのだが、こちらの世界の国際的な事からすると、召喚コストを支払った国から他国が聖女を勝手に連れ出すわけにはいかない。協定を結んでいる教会も然り。

 なので、教会預かりではあるが、この国からは出られない私だったのです。



***


 リサという名が不完全である事を知ったナディアさんは、完全な名を使って隷属の首輪をはねのける方法を教えてくれた。


「名を知られていなのはアドバンテージだわ。

 わたしにも知らせないようにしなさいな」

 ……ナディアさんは色々あったんでしょうね。


 流石に王子も、隷属の首輪を教会に持ち込むほどでは無かった。

 しかし何故か、私が王子達の事を好きだと思い込んでいるようで、王宮にのこのこ出向いた私に、大した警戒をしなかった。

 あったとして、私が家名を持っているはずだ、と言ったくらいかな。

 適当に思いついた田中、と名乗っておいた。


 プレゼントだと言う首飾りを素直に身につけさせる。


「タナカ・リサ!

 この時を以て、お前はこのウィリアム・オードリアの奴隷だ!」


「……残念です。

 聖女様に関して、教会は今後、オードリア王国に協力致しません」


 付き人の振りをして教会の大物について来てもらったが、王子達、迂闊すぎじゃないだろうか。

 端々に、私が彼らの事を盲目的に好きだと思っているという言動をされる。気持ち悪い。


「っ大神官!?騙していたのか!

 しかし、リサはもうこちらのモノだ!」


 クズ王子からやっと離れられると分かった時点で、もう距離を置いている。

 気持ち悪かった首輪を外して、大神官に渡す。


「あんたらの事なんか好きなわけないし、フツーに嫌いだから。

 名乗る訳ないし。

 妃になんか頼まれてもなりたくない」


 驚愕の表情を浮かべ、何の指示も出さない王子達。

 そのおかげで、難なく教会に戻って来れた。



***


「何なの?アレ?」


「……申し訳ありません。リサ様、ナディア様。

 実は、召喚に適した方を選ぶためと考えていた部分に、まじないがありまして」


 異世界召喚に際して、聖女に、召喚した国の王族や高位貴族と惹かれ合いやすくなる、というまじないがかかるようになっていたそうだ。

 最初こそ、元の世界で幸せでは無かった女性に、こちらの世界で幸せになって欲しいとかけられたまじない。

 思いあう相手が居る者には効果は無い、弱いまじないだったそれは、各国の重鎮に知られるようになり、聖女を政治的に取り込むのに利用されるようになった。


 世界に自分の居場所が無いと思う程、落ち込んだ状態で召喚された十代後半の少女達は、召喚先で煌びやかな貴人に親切にされると容易く恋に落ちてしまう。

 本来なら、相手も聖女に恋に落ちるようになっていたまじないだった。

 相手に心に決めた者がいたら、特に効果は発揮しないハズだった。


 これが捻じ曲げられて、聖女だけが、親切にしてきた王子達に心奪われるように利用されていたらしい。


「今回、王子側が全く親切じゃなかったからねぇ」

「まじないを捻じ曲げていたのは、王子達の演技力だったのに、今回はそれすら怠ったのね」



***


 教会は元々協力的だったのだけど、さらに協力的になったので、色々お願いする。


 先ずは、瘴気とは何ぞや、から始める。


 多分、初期の頃に、瘴気の解決=聖女召喚、となってしまったために、思考停止してしまったんだと思う。


 実際は瘴気なんてものは無くて、火山性の毒ガスだった説が濃厚。

 この大陸は活火山が多くあって、何か所も該当する地域があったのも原因だと思われる。

 聖女が行っていたのは、異世界召喚が理由の豊富な魔力量で、空気よりも重い毒ガスを吹き飛ばしていただけのようだ。


 今は、この世界独特の魔法で、多少は中和しつつ吹き飛ばす方法を模索、実行してもらっている。



***

 

「リサ様!

 グラン山の浄化が無事終了したそうです!」

「やったね!

 これでもう、聖女召喚が要らないって発表できる!」


 あれから2年が経った。

 

 オードリア王国を出た私は、他国の瘴気が発生しているという場所に向かった。

 いつの間にか使えるようになっていた魔法で、思わず硫黄の匂いを吹き飛ばして浄化と言われて、アレ?となって、ナディアさんにも聞いて、仮説を立てた。


 教会に色々研究してもらって、この世界で瘴気をどうにか出来るように取り組んでもらった。

 この世界の事は、この世界で何とかしてほしい。


 召喚聖女は、元の世界で幸せじゃなくて、最初はウィンウィンだったかもしれない。

 それが次第に、こっちの世界に来ても不幸なままになっていった。

 ナディアさんが色々動いて、元々集めていた歴代聖女の手記などを公開。煌びやかな生活に隠された悲しい聖女の実態を明らかにしていった。


 特にナディアさんを召喚した大国ディランと、私を召喚したオードリア王国は、非難の的である。

 他の国では、隷属の首輪を使用した記録が見つからなかった。


「せめて隠そうと思ったかどうか、それ位の違いはあるんでしょうね」

 ナディアさんの言葉だ。

 他の国の記録もまだ諦めずに調べているが、少なくともディランとオードリアの王族は、王族から降ろすと息巻いている。ナディアさんの血も引いてるはずだが、もうそんな関係ではないらしい。


 私は、クズ王子達が廃嫡になったので、ちょっとスッとした。



 今回、私が一番許せなかったのは、クズ王子の婚約者ヴィヴィアンだ。

 何故か、私の所に訪ねてきた。


「ヒロインなのに、何故?」

 それが、第一声。


 最初、意味が分からなかった。

 何度も質問して、ヴィヴィアンの前世が日本人で、この世界の事を乙女ゲームの世界だと思っている事が分かった。

 

「わたくしも運命に抗いましたのに、ヒロインのあなたとはこんなにも違う……」


 悲劇のヒロインムーブにイラッとした。

「運命に抗うって何やったの?」


「……お母様を助けようとしました。でも、力及ばず……」


「……そう。他には?」


「……お父様やお兄様、そしてウィリアム様との関係を……」


「成功してんじゃん。他には?」


「え?」


「他にやる事あったでしょう?」


「……」


「聖女召喚、防ごうとした?

 瘴気をどうにかしようとした?」


「……」


「アンタ、自分の事だけだな。

 前世が日本人なら、アンタだけでも、聖女召喚が誘拐だって分かって欲しかった。

 聖女の立場を考えられたはずじゃないの?

 出来なかったとしても、訴えてみた?

 瘴気だって、その場まで行ったら思いついたことあったんじゃない?

 聖女に頼るにしろ、その前の時間に何かあったでしょう?」


「……ゲームでも瘴気は聖女しかどうにもならないと。

 聖女召喚も、ゲームでヒロインに家族が居ないって分かっていましたから……」


 パンッ。

 思わず平手打ちしていた。

 手が痛い。

 でも、


「家族が居なかったら、誘拐しても構わないって事?

 私、両親どっちも生きてるよ。

 アンタのせいで、未来永劫会えなくなったけどね」


 父は、母と私に暴力を振るっていた。

 刑務所に入る事になって、私の保護者では無くなった。

 父と同じ神田の名が嫌いだった。

 もう会いたくないが、他人に会えないようにされるのは違う。


 母は、父の暴力に耐えかねたのか、心を病んでしまった。

 病院に入る事になって、私の保護者ではいられなくなった。

 父から庇ってくれなかった母には思うところはあるが、他人に会えなくされる筋合いは無い。


「え?だって、児童養護施設に入ってて……」


 パンッ。

 

「二度も言わせんな。

 もう帰って。

 アンタが何しに来たか分かんないけど、もう二度と会いたくない」


 血が繋がっていなくても、一緒に暮らしていた施設の友人や職員さん。

 彼らとの繋がりを、何も無いみたいに言われたくない。


「……ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」


「……」


 目で合図すると、部屋に一緒に居てくれた教会の人が、連れ出していってくれた。

 その場で泣いていたら、ナディアさんがやって来て抱きしめてくれた。

 大泣きした。


 

 その後、ナディアさんが教会の協力で無双して、ディランとオードリアという国は無くなった。

 聖女に隷属の首輪を使用した証拠のあるクズ元王子と、ナディアさんに証拠を握られていたディランの元国王(ナディアさんの夫だった方、まだ存命だった)は処刑された。

 二人の協力者だった者達も、それなりに処罰されていたが、その中の一人だったヴィヴィアンは、処罰とは別に自害したらしい。隷属の首輪を使用するためと分かっていて、私に家名があるはずだと、クズに言ったのだったそうだ。自害した理由は、クズが処刑されたかららしいが、もうどうでもいい。

 


 教会の異世界召喚については、ナディアさんとで話し合っている。

 基本やらない方が良いとは思うのだが、本当にどうしようもなく追い込まれた人をこちらの世界の教会が助けるなら、悪い事では無いようにも思えてしまって。

 元の世界に居場所がないと思っているを、元の世界に未練が無いとかに、改善してもらえるなら有りかなと思ってしまうのだ。

 

 私は、ナディアさんもいる事だし、もうこっちの世界に居る事にした。

 ナディアさんももう今更戻っても、という事だし。

 ただ、母を迎えに行けないか、教会に相談している。

 しばらく研究すれば目途が立ちそうという事で、私の覚悟次第かもしれない。


 もう少し心が強くなりたい、今はそんな風に思っている。




読んで下さってありがとうございます。


初レビューを頂いた作品になりました。

書いて下さった方、ありがとうございました。

(何処にお礼を書くのが良いんでしょうね(^^;)

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