王都・謁見の間
やって来ました謁見の間、
ここから国で何が有ったのか詳しく語られて行く。
もともとパラディオ国は王政など無く、
小さな集落が点在していて、
集落は族長とシャーマンが中心になり、
村人達が協力し合って生活していた、
他の集落とも繋がりを持ち、
お互いに情報交換をしながら平和に暮らしていた、
ボンタ星での異変は700年前、
石板が突然現れた時からと言われている、
ボンタ星には5つの国がそれぞれの個性を持ちながら成長していたが、
基本は平等に共存共栄していく事を掲げている平和な星だった、
そんな平和な星に突然何処からともなく現れた石板、
まがまがしいオーラをまとった石板に書かれている予言は、
『後に来る災いを避けるために、
聖女召喚をせよ、
聖女との子をもうけ、
聖女の予言と共に生きよ、
召喚の手順は以下の通り』
そんな事を書かれていたが、
誰も石板を信じる事も石板に触れる事もしなかった。
それぞれの国のシャーマンや巫女たちは、
石板に触れる事も無く、
石板を封印し厳重な見張りを付けたが、
パラディオ国のあるシャーマンだけは石板を信じ、
石板を信じない族長と対立し、
シャーマンは4人の弟子と共に石板を持って集落を出て行ってしまう、
シャーマンが出て行った後の集落の族長は、
周辺の集落の族長10人に声を掛け、
これからの事を相談し、
大きな集落を作り始め、
それが後の王都になっていく、
最初に声を掛けた族長が王となり、
集まった族長10人は騎士団を作り、
他の集落のシャーマン達は浄化の研究を始め、
何故か浄化の魔法が付与された城壁を作り始め、
王都をぐるりと城壁で囲んだお陰で、
魔物が王都に入る事も出来ずに浄化されていった、
そのお陰で魔物に町を荒らされる事も無い、
そして城壁の中には川や森、
そして大きな畑もあり食料も十分に用意が出来た、
ただここまで広い土地を囲むためにどれだけの時間を有したのか?
なぜ突然広い土地を城壁で囲み始めたのか?
その理由を知っている者は王族と、
ある一部の者だけである、
集落を出て行ったシャーマン達は、
聖女教会を設立し、
石板通りに聖女召喚をして聖女の血を受け継ぐ子をもうけていき、
聖女の血を受け継ぐ子ども達を領主として、
勝手に王都の周りの土地を統治させていく。
そんな勝手な事は許される事も無く、
王都の者達と対立し、
何度も話し合いを700年間して来たが、
目的を果たす為に教会側は王都を潰すべく汚い手段に出る、
そして運命の謁見の日、
教会側は謁見の間で何かを決行しようとしていた、
教会側のメンバーは、
聖女教会の神官とお付が4人、
そしてボナーバ以外の領主3人が、
不敵な笑みを浮かべながら謁見の間に案内されて来た。
謁見の間は広く9人の兵士団長と部下5人が付いて来ても、
余裕な広さがあり天井が高いお陰で声も良く響き渡る様になっている。
案内された神官は玉座を見つめながら、
『おや?王はまだいらして無いのですか?』
玉座の横に控えていた近衛兵が、
『しばしお待ちください』
神官は『フンッ』と鼻を鳴らし、
領主たちに目配せをしていたその時、
玉座の横の大きな扉が開き、
王子アルフォンとその妻フローラが、
何か思いつめた様な表情で入って来て、
『お待たせして申し訳ない、
今朝父が体調を崩したので代わりに私が話を聞く事になった』
そう宣言するとゆっくりと玉座に座る、
神官達は深々と頭を下げてから、
『それは困りました、
我々は王に話が有るのです、
若い王子では荷が重い話なんで…
どうしたものか…
所で…王はどのような様子なのでしょうか?』
神官と領主たちはニヤニヤと嫌な笑いを王子に向ける、
その視線を感じながらも冷静に王子が、
『荷が重いかどうかは私が決める、
取り敢えずご用件をお話して頂きたい』
神官はムッとした顔をして、
『では最近の国の状態をどう思っていらっしゃるのですか?
ここ王宮の生活は問題ないようですが…
ボナーバ達領主の土地は瘴気の影響で酷い状態です。
何か手立てをしない限り瘴気は収まりませんが…
そこら辺をどのようにお考えか?』
神官の話に怒りを隠せない兵士団隊長のジュリアンが、
『それは勝手な話ですね、
我々騎士団が何かの手助けをしようとしても、
立ち入る事も許して頂けないじゃ無いですか、
それをどのようにお考えとは勝手なお話では無いですか?
それにボナーバ様ご兄弟が見当たりませんが、
今日は来られないのですか?』
ジュリアンは冷たい目で神官を見つめる、
神官と領主達はまだニヤニヤと笑い続けていて、
背が小さいケスク領の領主が、
『ボナーバ兄弟は勝手な行動が多い、
ですが…必ず遅れてくるはずなので、
ご心配は不要ですな、
そんな事より王子と王妃は何も仰らないのですか?
1日も早く今の状況を変えないとお困りになるのでは?』
そう言いながら嫌な笑みを王子たちに向けるケスク、
そんなケスクの煽りに向かって王子は冷静に、
『何に困るのでしょうか?
詳しく説明を求めます』
ケスクは肩をすくめ、
ただ嫌な笑いを向けるだけ、
そして小さく溜息をついた神官が、
『王が居ないここで話をしてても仕方ない、
ハッキリと申し上げましょう、
王がご病気で先が短いという話が私の耳に入って来まして、
王がご病気ならばこれからの王都を支えるのも無理でしょう、
ですから私が王の代わりを務めましょう、
先ずは聖女様を召喚して瘴気対策をして行くつもりです、
ですので聖女召喚を反対する方達には王都を出て行ってもらいたい』
神官の発言に兵士団達が騒ぎ出す、
『何を勝手な事を言ってる』
『王の先が短いなどと勝手な事を言うな』
『王都を乗っ取るつもりか』
みんなが勝手に騒ぎ出していたが、
王子は冷静に神官達を見つめていた。
『みんな少し静かにしてもらえないか?』
兵士達は王子の頼みに答え静まる、
『父の話が耳に入って来たと…
それは誰からですか?
それと、父にもしもの事が有ったとしても、
王都の今後は私と兵士団が何とかしていく、
神官殿に代わって頂かなくても結構です』
ケスクは動揺も無く冷静な王子に向かって、
『王子様…本当に宜しいのですか?』
王子は無表情のまま、
『ケスク殿、何が言いたいのですか?』
『神官様のご提案を受け取らないと、
悲しい思いをする方がどんどん増えていくと思いますが』
王子は冷静な顔を崩さずにケスクを睨み、
『ケスク殿が何を言いたいのか私には分からないのですが』
王子の変わらない冷静さにケスクは苦虫を食い潰したような顔をして、
コソコソと他の領主達と話を始めた。
神官は真っすぐと王子達を見据えていたが、
『本当は穏便に済ませたかったのですが…
我々が離れ離れになってから700年の月日が経っています。
もうこれ以上は待てません力ずくでこの王都を頂く事になりますが、
王子はそれでよろしいでしょうか?
犠牲者が増えますけど…』
王子は至って冷静に対応していた、
こんなに王子が冷静でいられたのは、
王の教育もあるが、
ジュリアンからの報告を受けていた事もある、
ジュリアンの話はあまりにも信じ難い話だったが、
ジュリアンは話を誇張したり、
ましてや嘘を報告するような男では無い事を知っていた。
そうなるとジュリアンの話は現実の話、
この国を…この星を助けに来た者がいる、
そう信じた王子はとにかく冷静に、
今回の謁見の時間をやり過ごそうとしていたが、
ジュリアンが言っていた妖精は現れない…
そしてこの神官は何をするつもりなんだ?
王子は神官を睨みながら、
『本性を現しましたね、神官殿、
一体何をするおつもりで?
犠牲者が増えるってどういう事ですか?
貴方のせいでもう犠牲者が出ている様にも聞こえますが』
神官は顔色も変えずに、
『それはそれは、
私の説明が不味かったですな、
犠牲者と言うのは瘴気の魔物の犠牲者ってお話ですよ』
王子に笑顔を向けながら神官は懐に手を突っ込み、
何かを取り出して手のひらに乗せて王子に見せる、
『王子これを見て下さい』
神官の手のひらに乗っているのは、
見た事も無い素材で出来た玉だった。
『王子これは何だと思いますか?
多分お分かりにならないでしょうな…クスッ』
バカにした様に王子達を見渡しながら、
神官は丸い物が乗った手をゆっくりと上げて行き、
『これを床に落とすと破裂します、
破裂と言っても小さい破裂では無いですよ、
そうですね~』
そう言いながらゆっくりと回って周りを見渡して、
『この城にいる者は全て死んでしまうでしょうな』
そう言いながら『あははは~』と笑う神官、
神官の話に腹を立てた兵士達が騒ぎ出し、
ジュリアンが神官に向かって、
『そんな話信じられるか、
そんな事したら神官殿も死んでしまう、
そんな事出来る訳無い』
そう言いながらジュリアンは強く拳を握って、
妖精さんはどうしたんだ?
ここに来るって言っていたのに…
どうか早く来てくれ、
そんなジュリアンの様子を見た神官が、
『確かに、我々も死にますな~
そんな事はどうでも良いんですよ、
我々の代わりなんかいくらでも居ますから』
ジュリアンは神官の返事に驚き、
『異常だ…
そんな奴らに国を任せられるか!』
神官は笑いながら玉をさらに高く掲げる、
その場の全員が玉の行方に集中していたが、
領主たちはクスクスとわらうだけだった。
『さ~行きますよ~
全ては王家の者達のせい、
早く私達の言う事を聞いていれば、
こんな事にはならなかったでしょ~
反省してください、クック』
神官がそう言いながら玉を落としたその時、
落とされた玉に透明な膜が覆い、
空中に浮かび出す、
その後、謁見の間に凄まじい白い光が充満する、
王子や兵士達は玉が破裂したのかと身構えたが、
何の衝撃が来ない、
光が段々と弱まり見えて来たのは、
巨大な白いオオカミと、
オオカミの背中で呑気に寝ている変な人形、
ジュリアンはやっと来てくれたと思ったが、
マヌカの姿が見当たらない。
神官達も何が起きたのか理解できずに、
周りをキョロキョロ見渡すだけで、
その場は妙な静寂が包んでいた、
その時幼い子どもの声が響く、
「あ~ジュリアンさんいた~」
呑気な子どもの声にその場の全ての者が声の方に目を向ける、
謁見の間の天井は高い、
天井ギリギリに白いローブを着た小さな少女が浮いていた、
少女はオパール色の長い髪をなびかせて、
天使が舞い降りて来たかの様な神々しい光を帯びていた。
オーラの自動調整が出来る様になったマヌカは、
フードを外し髪をなびかせて浮かび上がりながら、
神官を見つめていた。
神官達は突然現れた小さな存在に、
何か嫌な予感しかしないのか、
変な汗をかき始めていた。
マヌカは神官の顔の近くに降りて来て、
スンスンと匂いを嗅ぐと、
真っすぐに神官の目を見ながら、
「トカゲ くせ~~」と呟いた。
その呟きに益々汗を流し始める神官と領主達、
そんな事を気にもせずマヌカは、
手に持っている玉をマジマジと見つめている。
『きさま~その玉は私のだ、
返してもらおう』
マヌカはチラっと神官を見てから、
「返すわけ無いじゃん、
これでここを破壊しようとしてたんでしょ?」
そう言いながら玉をポーンポーンと投げてみる、
そのマヌカの行動に慌てたジュリアンが、
『妖精さん危ない事はやめて下さい』
ジュリアンの言葉に神官が、
『妖精だと?』と呟いて、
領主達はまたコソコソと話し出す、
マヌカは神官たちの反応を面白そうに眺めてから、
クルっとジュリアンに向き直って、
「ジュリアンさん心配無いですよ、
あたしの膜で覆ったから、
これで落としても破裂する事は無いです、
破裂…?破裂かぁ~確かにね~爆発じゃ無いんだね~
さすが神官様ハイテクだね~
この玉に火薬を使って無いんだ~」
マヌカはわざと語尾をを伸ばして神官達を煽った、
神官はフンッと鼻を鳴らして、
『火薬だと?
どこの時代の話だ、原始時代か?
そんな物使わなくたって圧縮の力が有れば、
中身が空っぽでも大きな破裂を起こす事が出来るのだ』
マヌカはニヤニヤ笑いながら、
「へ~~~この星はまだ火薬さえ無いのに、
何かを破裂させるって…
神官様ってどちら様?
ま~この星には生活魔法が使えるから、
何かを爆発させる必要も無いんでしょうけど…」
神官は余計な事を口走った事に赤面していたが、
『私どもの教会は色々な事を研究して来た、
王族とは対立していた為、
私達の研究は知らなかったでしょうな』
「研究ね~
さっきも言ったけど、
魔法が有るからそんな研究する必要無いんだけど…
神官様達は必要あったのですね」
そう言いながらマヌカは神官をチラっとみる、
神官はイラっとしたのか、
マヌカに掴みかかろうとしたが体が動かない、
『なんだ体が動かないぞ』
神官が焦っている姿を見ていた領主達も、
自分達の体が動かない事に気が付く、
そんな神官達にマヌカが冷たく、
「あっ、もう動けないですよ~
あたしが停止の魔法をかけましたから」
そう言ってマヌカは王子に向かってフワフワと飛んで行くと、
周りの兵士達が剣に手をかけて、
『幼子よ何処に行く?』
怖い顔をした兵士がマヌカに声を掛けて来たが、
その様子を見てジュリアンが慌ててマヌカと兵士の間に入って来て、
『デガリアこの子は大丈夫だ、
我々の味方の妖精さんだ』
デガリアと呼ばれた兵士は怪訝な顔をしながら、
『この娘がお前が言っていた妖精だと…』
マヌカはデガリアに向かってニッコリ笑い、
王子に向かって声を掛ける、
「玉座に座っている貴方は王子様?
初めましてあたしは銀河の妖精です、
こちらで悪行を行っている者の回収に来ました」
マヌカの話にボンタが『プッ~』と吹き出し、
『アルフォンそいつは妖精なんて小っちゃな存在じゃ無いぞ、
惑わされるな~』
マヌカは「キッ」とボンタを見つめると、
ボンタはオオカミの背中にコソコソと隠れる、
王子は自分の名前を呼ばれた事に驚き、
『何故あの人形は私の名前を知っているのですか?』
ボンタは顔を少し見せながら、
『おいらはこの星の住人の名なら殆ど知っているぞ、
おいらはこの星の意識だからな』
ボンタの話にその場の空気が冷たくなり、
神官が笑いながら、
『星の意識様が肉体を持って、
私達の前に現れ言葉を発するなどおかしな事を言う』
マヌカは神官に向かって、
「おやおや、
それでも神官様ですか?
心の目でボンちゃんを感じて見れば、
彼がどんな存在かって分かるはずですけどね、
やはり神官様は…ね~」
そう言ってバカにした顔で神官を見つめた後、
王子に向かって、
「王子様、
申し訳無いのですが、
その玉座を私に譲っていただけませんか?」
王子は驚いて、
『それは…どういう意味でしょうか?』
「あっ勘違いされませんように、
物理的にその椅子からどいて頂きたいだけです」
王子は『ああ』と納得したようで、
マヌカに玉座を譲った、
マヌカは異次元ポシェットに手を突っ込んで、
ゴソゴソと取り出した透明な玉を、
玉座の上に優しく置いた。
置いた瞬間玉が光出して、
光の中から体格のいい男が現れた。
現れた人物を見たその場の全員が歓喜の声を上げる、
それを苦々しい顔で見つめる神官と領主達、
王子は現れた人に駆け寄り、
『父上!体調は大丈夫なのですか?』
実は王は原因不明な病にかかっており、
いつ死んでもおかしくない様な状態だった。
それが元気な姿で現れた事にみんなが驚いていた、
そんな中王がガハハと大きな声で笑い、
『アルフォン、そして他の者達にも心配をかけたな、
そこの妖精殿のお陰で、
私はこの通り元気になった、
これからはもう何も心配する事は無くなったそうだ、
その説明を妖精殿がして下さるそうなので、
皆も心して聞くように』
兵士達は涙を浮かべながら、
『ハッ』っと声をそろえて返事をする。
喜ぶ兵士達とは裏腹に険しい顔をしている神官達は、
『王が元気だと…』
『聞いていた話とは違うでは無いか…』
『その王は本物であろうな?』
神官達のつぶやきを聞いていた王子が、
『父が元気な事がそんなにおかしい事なのですか?
まさか父が体調を崩したのは貴方方が何かしたとか?』
王子の問いかけに、
領主達は目を逸らしてとぼけていたが、
神官は王を睨みつけると、
『王よいつ元気になられた?
私が聞いた話では今朝も寝床から出れない程、
衰弱していると聞いていたのだが』
王も神官を睨みつけると、
『確かに原因不明な体調不良の為に今朝まで動けなかったが、
妖精殿が治癒の魔法で全ての不調を直してくれたよ、
若い時の古傷迄治っていたのには驚いたがな』
神官はマヌカを睨み付けると、
『お前は…
一体何者なんだ?』
マヌカは神官に向きを変えると、
「私はこの銀河の妖精、
銀河の周波数が乱れ始めたので、
その原因を突き止め、
排除する為に来た、
この星に存在してはいけない遺伝子は全てこの星から排除する、
それがどういう意味かお前らには分かるだろ?」
神官は考えている、
こいつは何者でどこまで知っているのか?
まあ、何を知っていようが我々の計画は変わらない、
変える事など出来ないはずだ、
そう自分に言い聞かせ、
『随分物騒な言い分ですが、
だが私達には関係の無い事でしょう』
マヌカはニコニコと笑いながら、
「さて~
ジュリアンさんが早く説明をしろって言う目であたしを見ているので、
先ずは王様が何故原因不明の病になってしまったのか?
その事からお話をして行きましょうかね~
先に言っておきますが…逃げられないからな~」
神官達を睨みながらマヌカはフワ~っと浮かび上がり、
謁見の間の中央に移動したかと思ったら、
ポシェットをゴソゴソと探り出して、
中から透明な水晶の玉を出して、
床に置いて周りを見渡してから、
「あたしはこの謁見の間に来る前に王の寝室に寄った、
そこで見たのは瀕死状態の王様がベットに横たわっていた。
王の体を調べて見ると…
あ~ら大変王様は病気では無く、
毒に侵されていましたとさ~」
そう言いながら神官達の周りをフワフワと飛び回っていた。
その時王子が、
『毒だと?
いったい何処で毒を盛られたと言うのだ、
誰が父上を殺そうとしていたのだ』
神官は無表情を崩さずに、
『フラフラと飛んでいる妖精は、
どうも我々を疑っているようだが…
何の証拠も無いでしょ』
神官達は嫌な笑みを浮かべながら王子を見つめている。
マヌカは水晶の元に戻ると、
「証拠なら有るけど」
そう言いながら水晶に触れると、
水晶からホログラム映像が現れて来た、
「これは王様のお世話をしていたメイドの記憶、
どうぞ皆さんでご確認して下さい」
そう言って神官に向かってニコリと笑い、
映像を動かしだす。
最初に映像に現れたのは領主ケスクだった。
『いや~ブリジット』
ケスクはブリジットに嫌味な顔で挨拶をしている、
「観てお分かりだと思うのですが、
この映像は王様のお世話係のブリジットの目線の記憶を映し出しています」
マヌカの説明にケスクが息を飲むのが分かった、
「ここには王様の不調になった原因が全て記録されてます、
さ~続きをどうぞ」
映像が再び動き出すと、
ケスクの嫌な笑みから始まる、
『そうそうブリジット、
君のおばあさまが体調を崩した為、
王のお付のメイドだったおばあさまの代わりに、
君がメイドをやっているのだろ?
そんな君にお願いがあるのだが…』
そう言いながらケスクは懐から小さなガラスの瓶を出すと、
『これはある植物から取り出した液体でな、
体に凄く良いものでな、
これを王の食事に一滴ずつ入れて欲しいんだ』
そう言いながらケスクは瓶をブリジットの目の前で振る、
ブリジットは困った顔をして、
『そんな勝手な事は出来ません、
どうしてもって言うなら料理長にご相談下さい』
そうブリジットがハッキリと断ると、
ケスクはクックックと笑うと、
『そんな事言っていいのかな?
あっ忘れてた、
そう言えば先日君の家族を我が家にご招待したんだった、
おばあさまにご両親、
そしてまだ小さい弟君もいたな』
ブリジットは目を見開いて、
『それはどう言う意味ですか?』
『なんの意味も無いが…
ただ今は気持ちよく過ごして頂いているが、
君の返事次第では…どうなる事か…なっ』
そう言って嫌な笑いを浮かべながらブリジットを見つめた。
ブリジットは青ざめてフルフルと震え始めた、
『ま~最初の一滴は私が入れてあげよう』
そう言ってブリジットが持っていた王の朝食に一滴落として、
ブリジットの顔を見てニッコリと笑ったと思ったら、
ブリジットの服のポケットにガラスの瓶を入れた。
『ま~私のお願いが聞いて貰えないなら…
おばあさまが急死って事もあるかもな』
そうブリジットの耳元でささやいた後、
ケスクが立ち去る後姿が映っていた。
それを観ていた王達は怒りの表情になり、
『ケスク…これに関しての説明をしてもらいたい』
王は冷静だがその声は冷たく目は鋭く光っている、
そんな王の様子を見ていた神官が、
『これが真実の映像と言う証拠は無いでしょ、
ここ王都は生活での進化も求めず、
何も研究されてないからお分かりにならないと思いますが、
こんなトリックはいくらでも出来るんですよ、
そんな幼女の話を信じるなんて…』
そう言いながら神官は肩をすくめていた。
そん姿を見たマヌカは、
「トリックね~では証明しましょう」
そう言ってマヌカはパチンと指を鳴らすと、
動けないケスクがビュンと水晶の横に飛び出して来た。
「別に水晶なんか必要無いんですよ、
本人から直接記憶を取り出す事も出来るんで」
そう言いながらケスクの額に小さな手をあてると、
ケスクの頭の上からホログラム映像が現れる、
「さて~これからはこのおっさんの側からの、
今の映像を流してみましょうね~」
マヌカがそう言った途端、
ケスク側の記憶が流れ始める、
勿論映像に流れているのは、
怯えた顔のブリジットの姿だ、
映像を見ていた王側の全ての者は、
マヌカが流した映像は真実だと確信した。
神官達は言い訳をしようとしていたが、
マヌカがそれを許さなかった。
「あ~~もう何も話さないでぇ~
どうせ嘘しか言わないんだから、
そこでじっと見ていればいい、
お前達がやって来た700年の行いをな」
そう言いながらマヌカはまたポシェットに手を突っ込むと、
また玉を取り出して、
「これから700年間何が有ったか説明するけど…
その前に出さなければならない人達がいますので」
そう言いながらマヌカを王子と王女の前に行き、
ゆっくりと取り出した玉を目の前に置くと、
玉が光出しその中から現れたのは、
10歳位の少年と7歳位の少女であった。
その姿を見た王子と王女は、
『アダム、クローリ』
そう叫ぶと2人の子どもを抱きしめた。
『お父様~お母さま~』
子ども達もそう叫ぶと王子達に抱きついたのであった。
その様子を見ていた王が、
『どういうことだ!
孫たちに何が有ったのだ』
動揺する王に向かって王子が、
『父上の意識がはっきりしなくなって来た2日くらい前に、
突然アダム達の姿が見えなくなってしまい、
この2日間探し回っていたのですが、
なんの手がかりも無く…
思い当たる事と言えば、
方々で誘拐事件が起こっている話の後ろでささやかれていたのが…
教会の存在だったので、
もしかしたらと思い、
この謁見の機会に確かめようと思っていた所でした』
そう言って神官達を睨み付ける王子、
『妖精殿この子達は何処にいたのですか?』
マヌカは王子の目を真っすぐ見て、
「あたしはお城に来る前に全ての領主邸の調査をしてきました。
そこで誘拐されていた人達は全て解放し、
子ども達はここに連れて来ました。
子どもが居たのは」
そう言って領主達の顔を見て、
「あっあそこにヒョロッと背の高いおっさんの家ですね」
王子はその男を見つめて、
『ウブリエ殿でしたか』
そう言いながら恐ろしい顔で睨み付ける、
「あの~神官達はみんな共犯ですからね、
領主1人が勝手にやっている事は無いです、
ただ…それを指揮しているのはその神官みたいですけどね、
あっそれとこいつは勝手に酷い事をしてたみたいですが」
そう言ってマヌカはまたポシェットをガサガサと探って、
2つの玉を取り出すと、
王と子ども達の玉を出した時と違い、
乱暴に神官達の方に投げた、
投げた球は神官達の近くで落ちて、
一瞬光った後現れたのは、
パンツ一丁の巨漢で泥だらけ、
寂しくなった髪の毛はもうまばらになりボサボサだ、
もう一つの玉からはチョビ髭をはやしたガリガリのおっさんだった。
出て来たおっさん達はボナーバ兄弟、
何かモゴモゴ言っているがマヌカはガン無視、
そんな姿を見た子どもが、
『お母さま怖い~』
そう言って王女に抱きついていた。
マヌカは、
「あっごめんごめん、
気持ち悪かったよね~
えっと、お姫様?
これからここで酷い話がされますので、
お子さん達は別の場所に移られた方がいいと思います」
『そうだな、
アルフォン、子ども達を安全な場所に連れて行きなさい』
王は神官達から目を離さずに王子に指示をする。
王子は王女に目配せして、
『フローラ、
私もここで妖精殿の話を聞きたい、
だから子ども達を連れて他の部屋で待っていてくれ』
そう言って王子は兵士達を見て、
『ジュリアン、フローラたちの護衛を頼む』
そう言われたジュリアンは頷き、
部下の兵士4人に指示を出して、
フローラ達は兵士達と一緒に謁見の間を出て行った。
マヌカはフワ~と浮かび上がると、
腰に手をあてて、
『では、始めましょうか、
700年こいつらが何をして来たか!』
そう言って神官達を指さし不気味な笑みを浮かべるマヌカであった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




