農村再び
残暑見舞い申し上げます。
農村に戻って来たマヌカにはやる事が山の様にあった。
すっかり暗くなってしまった農村、
農村の人達もそれぞれ家に帰った様で静かな広場に、
突然凄い光を放ちながらマヌカ達がワープして来たのだ、
ワープして来た場所は治癒魔法陣の上なので再び治癒エネルギーの光が放たれる、
そんな光に気が付いた村長達が家から出て来てマヌカ達を迎えた。
『妖精様お帰りなさい、
ちょっと時間がかかっていたので心配してましたぞ』
村長の言葉にマヌカが振り返ると、
村長達も分身体達にお風呂に入れられたのか、
お肌はツヤツヤでスエット上下を着せられていた。
その姿の思わず笑ってしまいそうになってしまったが、
「そっ村長、お風呂入ったんですね」
『そうなんです、
小さな妖精さんに手を引かれて行って…
頭からつま先まで洗われてしまいました』
そう言いながら恥ずかしそうにしていた。
「分身体達がそんな事まで…クスッ」
マヌカは笑うのを我慢するのに必死だった、
そんな中連れて来られた王宮兵士達が騒ぎ出したのだ、
『うわぁ~なんだこれ~傷が治ってる~~』
ある兵士がそう言いながら隊長の姿を見ると、
『隊長、古い顔の切り傷も綺麗に治ってますよ』
そう言われた隊長は頬の傷に触れてみるが、
何もないただの肌になっている事に驚く、
他の保護した人達も勿論病気や傷も治りぼぉ~っと佇んでいたが…
働き者の分身体達が次々と保護した人達を風呂小屋まで運んで行ってしまった。
王宮兵士達も手を掴まれて連れて行かれそうになった時、
『おいおいおい何をするんだ』
分身体は怪訝な顔をしながら、
『綺麗にするだけですよ』
『いやいや勝手な真似はしないでくれ』
そう言われた分身体がマヌカに向かって、
『マヌカ、無理やり連れて行っていい?』
「いや~無理やりは不味いでしょ」
そこに兵士が口を挟む
『俺達を無理やりに連れて行けると思うの?
そんな小さな体で無理に決まってるでしょ』
分身体は『ニヤリ』と笑って
『何でも出来るよ、やってみようか?』
マヌカは不味いと思い
「待て待て~本人の希望をちゃんと聞こうよ」
分身体はちょっと怒った顔で、
『マヌカなんで?このおじさん達臭いよ、
それに衛生的にして無いとまた傷が出来た時に雑菌が入っちゃう』
兵士達は臭いと言われてショックを受けていたが隊長だけは違った、
『お嬢ちゃん達私達は確かに臭いかもしれないが、
何をされるか分からない所にはついていけないよ』
隊長の言葉にマヌカが答える、
「ただお風呂に入ってもらうだけですけど…
まぁ~村長さんは隅々まで洗われてしまったらしいですが」
風呂と言う言葉に兵士達は驚いている様だ、
『風呂ですか?そんな贅沢をしているのはほんの一部の方々だからな、
村長さんも驚いてしまったのでは?』
そんな隊長の言葉に村長は、
『いや~驚いてしまいましたが、
身も心もスッキリした気分で、
最後に温かいお湯に浸かったのですが…
あんな気持ちいい経験は初めてでした』
そう言いながらうっとりとした顔をしている村長
「なんで体を洗う習慣が無いのですか?」
『習慣が無いって訳では無いのですが、
そこまで綺麗な水が無いんですよ、
瘴気の毒にやられているので、
浄化する作業が必要で、飲み水の確保だけで精一杯なのです…が…ん?
あれ?何でここは風呂なんかに水が使えているんだ?』
「さっきも話したと思うんですが、
ここから半径100キロの土地を浄化したので水も浄化されてますし、
ここに引いた水は綺麗な地下水をくみ上げているので大丈夫なんです、
風呂に関しては温泉を引きましたし、
だから良い機会だから是非体を洗って来ると良いですよ、
疲れも取れるし良く寝れるはず」
『そうそうマヌカの言う通り』
そう言いながら分身体達は兵士の手を掴んで歩きだすと、
兵士も興味を持ったのがそのまま風呂の小屋までついて行った。
そんな姿をニヤニヤしながら見ているマヌカにボンタが、
『おい、マヌカ、
村まで帰って来たんだから約束は守れよな』
マヌカはボンタの顔を見る事も無く団子とおはぎを出してやり、
保護した人達もお腹を空かせているだろうと思い、
他の食事も用意したのであった。
用意された食べ物を見たボンタが、
『おいなりさんってどれだ?』
「覚えていたんかい、どんだけ食べ物に執着してるんだよ」
そう言いながらおいなりさんを出してあげるマヌカ、
ボンタはおいなりさんを不思議そうに見ながら『ぱくっ』と一口食べてみると、
『うま~い』と叫んだ、
そんな姿を見た村長達も、
『私達も頂いて良いですか?』
「もちろんですよ、どんどん食べて下さい、
今までひもじい思いをして来たんですから、
これからはお腹いっぱい食べられる生活に戻していきましょうね」
そんなやり取りをしている間に続々とお風呂から保護された人達が戻って来た。
保護された人達は何が起きたのか分からない様で、
みんな不安そうにしている、
特に子ども達は大人が怖いのか分身体にしがみついていた。
その中でも一番小さいであろう女の子は、
分身体の背中に顔を埋めてぎゅ~っとしがみついていた、
保護された大人達は自分達の体が、
健康になっている事を現実なのか理解できないし、
周りには見た事も無い子どもが浮かんでいるし、
変な生き物がバクバクと何か食べているし…
普通の人と思われる人は見た事も無い服を着ている、
『あの~すいませんここは何処ですか?
私達は死んでしまったのでしょうか?』
「いえいえ~死んでなんか無いですよ、
ただ皆さんを保護して病気や怪我を治しただけです、
これからの事はここに居らっしゃる村長さんと、
相談して頂ければと思っているんですけど…」
マヌカの話に何一つ理解が出来ない様な顔で、
『何もかも信じられない感じで…
怪我が治ってるのも何ででしょう?
指を2本無くしてしまってたので…何で治るのか…』
不思議そうに自分の手を見ながら話す青年に村長が、
『君の気持は良~く分かる、
私達も驚いている所なんだよ…
今朝までここは廃村で村人は死ぬのを待つだけになっててな…
そんな所にここに居る妖精さん達が来てくれて、
私達を助けて下さったんだよ』
妖精と言われてマヌカに注目が集まる、
マヌカは妖精なりきりスイッチを入れると、
『そ~でぇ~~す、
あ・た・しが妖精、銀河の妖精は何でもできちゃうんで~す』
わざとらしくニコニコ笑いながら宣言すると、
子ども達には受けたのか笑ってくれてる子もいた、
一番怖がっていた小さな少女も、
分身体の背中から少し顔をずらしてマヌカを見ていた、
マヌカはこれはチャンスと思ってフワフワと小さい子に顔を近づけて、
「はじめましてぇ~あたしは妖精、
貴方のお名前を教えてもらってもいい?」
少女は消え入りそうな声で
『……ノノン』
マヌカはその声を聞き逃さない、
大きく手を広げて大喜びをしながら
「えええ~~~か~わ~い~い~~
ノノンちゃんていうの?
あたしは銀河の妖精で、
ここに居る大人達は誰もノノンちゃんを、
いじめないから怖がらなくっていいよぉ~」
マヌカはそう言いながらニコニコ笑ってノノンのほっぺをツンツンすると、
ノノンはほんのちょっとだけ笑ったが…
分身体から離れようとしなかった、
そんな姿を見ていた子どもの中の12歳くらいの女の子が、
『ノノンは路地裏に来てからまだ3日しか経って無くって…
色々辛い事があって、まだ話もしないんだよ…』
保護され子ども達の表情が暗くなっていく、
そこに10歳位の少年が
『そりゃ~仕方ないよ…
ママが死んじゃってまだ3日しか経ってないし…
ノノンはまだ3歳って言ってたじゃないか』
「それはノノンちゃんが言ってたの?」
マヌカの質問にみんな俯いてしまい誰も答えない、
「ごめん、悪い事聞いちゃったかな?
さ~みんなもお腹空いてるだろうから何か食べて、
ベットでゆっくり寝てよ」
マヌカは明るく子ども達に言うと、
『ね~妖精さん僕達はこれからどうなるの?』
「これからは優しい大人に守られながら大きくなっていけば良いんだよ、
生活に落ち着いたらやりたい事をやって、
たまには大人達の手伝いをして、
安心安全な楽しい人生を送るだけだよ」
マヌカの言葉に子ども達だけでは無く、
村長達大人達も困惑の顔をしている、
そんななか村長が、
『妖精様はいつまでここに居て下さるのですか?』
「他にやる事がまだまだあるんで、
今夜にも他の場所に移ろうかと思っていますが」
村長はこの世の終わりの様な顔で驚いて、
『妖精様が居なくなってしまったら、
この村はどうなってしまうのですか~』
「え~~どうもならないよ、
ず~っとこのままだし~、
悪い事考えてる人はもうここには入って来れないし~、
瘴気ももう戻らなくするし~」
その話に村長は困惑するばかりで、
『ではでは~あそこの治癒の魔法陣?とやらも残るのですか?』
「あれは~あんな所に有ったら邪魔でしょ、
消そうと思っているけど…」
『お願いですじゃ~消さないでくだされ~』
「え~なんで~~~」
『わしらの生活で衣食住も問題ですが、
何より病気や怪我をした時の対処法が…
領主様にお願いするしか無く、
それも治療に支払う代償がとんでもなく…
みな治療をあきらめて死んで行ってしまい…』
話を聞いていたマヌカの目がまた「ふっ」と細くなる、
そこへ突然ボンタがポカンとマヌカの頭を叩いて、
『マヌカ~お前のその目なんかやばい感じがするんだよな~
直ぐに感情に流されない様に精進しろよ』
「はぁ~?口の周りがきな粉だらけの変な生き物に、
精進とか言われたく無いんですけど、
だいたいボンちゃんさ~この星はどうなってるのさ~
治療はどうしてるの?」
『あのな~この銀河にいる星はみんな優秀なんだよ、
森の恵みで病気は勿論骨折さえも治療できる葉や実が存在するんだよ』
ボンタの話にみんな驚愕の表情をしていた所に大きな声がかかる、
『マ~ヌ~カ~』
声を掛けて来たのは風呂から兵士を連れて戻って来た分身体だった。
マヌカは声を掛けて来た方に振り向くと、
『マヌカからもこのおじさん達に言ってよ、
もしくは力ずくでも良い許可を頂戴』
怒っている分身体とは対照的に、
兵士達の表情はツヤツヤと癒された顔になっていた。
「いや~今大事な話をしていて…
何か問題でもあった?」
『問題ありありだよ、
このおっさん達着ていた服をあたし達に渡さないんだよ』
分身体達がそう言った途端村長が叫ぶ
『ああああああ~~そうだった妖精様に聞きたかった事がぁ~』
「今度は村長さんですか…
みんな~順番に話して行こうよ~」
『いやいや妖精様違うんです、
今服を渡さないって話です、
わしら風呂から出た時…着ていた服を全部燃やされてしまったんじゃ、
この服をもらっていいのか、燃やされた服はどうしてくれるのか…』
「え~~燃やしちゃったの?」
驚いて分身体に聞いて見ると、
『当たり前じゃん、
服には虫が湧いてたし、
雑菌だらけで…洗濯しても落ちそうになかったし、
もう燃やすしか無い、
あんなの着てたら小さな傷からでも雑菌が入って酷い事になっちゃう』
「虫が湧くって…
でも本人の許可なく燃やしちゃったのは不味いでしょ、
村長さんごめんなさい、
同じ服はあたしが用意しますから、
はぁ~話がごちゃごちゃで説明がごちゃごちゃになっちゃったけど、
先ずあたしが居なくなった後も畑からの収穫は未来永劫出来る様にします、
それと今日保護された大人達はみんな何らかの職人さんだったので、
そのお仕事を続けたいなら道具と素材も用意します、
ここで村の為に働いて貰っても良いし町に戻ってもらっても構わないし」
そう言ってマヌカはパチンと指を鳴らして小さな小屋と大きな小屋を作った、
「小さな小屋には治癒の魔法陣を作りました、
ただ約束をして欲しい事がある、
まず魔法陣を私利私欲の為に使わない、
そしてどんな人、動物、虫や植物にも分け隔てなく治療する事、
大きな小屋は倉庫の様になっているので、
職人さん達の道具や素材を用意しました、
後はここに住む人達の為の服やその他の生活必需品を置いてあるから、
これもみんなで仲良く分けて使って下さい、
ここでの生活がどんなか知らないから…
あたしの知っている範囲で用意してあるから、
使い方が分からない事も考えてここに使用説明書も用意します」
そこで村長が『はい!』と元気よく手を上げる
「はい村長さんなんでしょ?」
『ここの村には文字の読み書きが出来る者はいません、
どうしたらいいですか?』
その話に驚いたマヌカは目を見開いて村長を見てると、
隊長が声を掛けて来た、
『文字なら私が読んで説明をしよう』
その申し出に村長達は喜んでいだ、
職人達も
『文字は私達も読めるのでお役に立てると思います』
そこにいるみんなはますます大喜び、
「まてまて~隊長さんはいつか城に戻るんでしょ?
職人さん達も自分の仕事したいだろうから、
村の人達と子ども達に文字を教える方に回ってもらえますか?」
その話に子ども達が
『え~あたし達にも文字を教えてくれるの?』
「もちろんだよ、
文字を覚えると色々な本が読める様になって知識も広がるからね」
『じゃあ説明書は文字を覚えてからと言う事ですかの?』
「それじゃあ倉庫の道具の使い方が分からないだろうから、
別の方法を考える」
マヌカはそう言ってパチンと指を鳴らすと、
光と共に現れたのは分身体の人形だった、
『あの~これはなんですじゃ?
分身体と言われてる方の人形ですかな?』
「ふっふっふ~ただの人形ではな~い、
説明ちゃんだ~」
ネーミングのセンスを疑われるような名前を、
自信ありげに叫ぶマヌカを見る目は冷たく、
ボンタだけが『プッ』と吹き出し、
『だっせ~~』と口に出してしまった。
「あああん、ボンちゃんいいのかな?
おはぎと団子はもう出さないからね、
え~っとねこの人形はね」
そう言ってマヌカは手に歯ブラシを出して見せる、
「これは歯を磨くためのブラシ、
使い方分かる人居ますか?」
みんなだんまり停止している、
「うそでしょ?歯も磨かないの?」
マヌカがビックリしていると隊長が
『歯は磨くが自分で用意するやつを使うんだよ、
木の枝を平たく削った物を先をつぶして柔らかくするんだ、
それを歯にあてて汚れを落とす』
マヌカは隊長の口元をジ~っと見つめている、
隊長もそれに気が付き思わず口を押えたのであった。
「それって…江戸の人がやってたやつ?
では歯を綺麗にするって事はやってるのね?
話は戻してこの歯ブラシを説明ちゃんの目の前に持っていくと」
そう言ってマヌカが人形の目に歯ブラシを見せると、
人形の頭から歯ブラシに歯磨き粉を付けて、
歯磨きを始める分身体の姿がホログラム映像で流れ始める。
そんな人形を見てみんな驚き、子ども達は喜んでいる。
「これで音声で説明も流れて使い方も目で見て分かるからいいでしょ」
それぞれが頷いて『いい、いい』と言っている。
「倉庫にある物で使い方が分からない物は、
説明ちゃんに見せてくださいね、
じゃあ倉庫の説明はこれでいいかな、
兵士の皆さんも出来るだけの期間、
ここでお手伝いをして頂けると助かるんですけどね」
そんな事を言っているマヌカの顔を睨む分身体いる、
「え~っと分身体ちゃん何か有るのかな?」
『だ~か~ら~おっさん達の服も燃やさないと、き・た・な・い
折角体を綺麗にしたのに~』
マヌカは分身体を見つめて
(こいつ…あたしの分身体なんだよね…
潔癖症なの?クソ真面目?風紀委員?
あたしってこれなの?)
「わかったわかった、
おっさん達の服が綺麗ならいいんだね」
マヌカはパチンと指を鳴らして兵士達の服や靴を浄化して綺麗にした。
「え~っと、これで満足して頂けましたでしょうか?
分身体ちゃん…」
『うん、服が綺麗になったんなら怪我しても安心』
それを見ていたボンタが
『それだよそれ、
なんでここの国の連中は浄化魔法を使わないんだよ、
他の国の連中は浄化魔法を使って、
水や着る物だって体だって綺麗にしているぞ
この星は完ぺきなんだ飢えたり汚くなったりしないはず』
「ボンちゃん話を戻すなよ、
みんな生活魔法が使えないって洗脳されてるんだから、
これから使える様にボンちゃんも協力していけばいいじゃん」
マヌカの話に『はっ』としたボンタは、
何も無かったかの様に団子を食べ始めた。
「こいつ~なにもしない気だな~
ま~こんな変なのは無視して、
ちゃんと食べて飲んでゆっくり休んでください」
そんなマヌカを見ながらボンタは
(やっぱかぁ~ちゃんだよな)
マヌカはノノンに近付いて
「何か食べよ、どれを食べてみたい?」
そう聞かれてノノンはボンタが食べている団子を指さした、
「そっかそっか~あれが食べてみたいか~
あれはね串が刺さってるから分身体に見て貰って、
気を付けて食べてね」
そうマヌカが言うとノノンが
『ぶっぶんぶぶんし~い』
「ん?何が言いたいのかな?ぶっぶんぶん?」
『ぶんしんいい?』
「あああ~分身体?」
そう言うとノノンはコクコクと頷く
「そっか分身体って言いにくいよね、
じゃあさ~ブンちゃんでいいじゃん」
『ブンちゃん?』
「そうそうブンちゃん!」
そう言ってマヌカはニッコリ笑うと、
ノノンも笑い返して来た。
そんなノノンの顔を見て少し安心したマヌカは、
「さ~串団子を食べてみようか、
ブンちゃんもノノンちゃんに串団子を食べさせてあげて」
分身体はコクリと頷くと、
ノノンをおんぶしてテーブルに向かって行った。
そんな姿を見てマヌカはノノンちゃんの詳細が気になったので、
12歳位の子に近付いて、
「あのさ~お話したく無いのは分かるんだけど、
路地裏生活の詳細をしりたいので~
貴方の記憶を見せてもらってもいい?」
声を掛けられた女の子は驚いて、
『そっそんな事ができるの?』
「うん、出来ちゃうの妖精だから」
『じゃあ見てもいいよ、
あたしも説明するの辛いから』
「ありがと、ちょっだけだからね」
そう言ってマヌカは少女の額に人差し指をチョンと数秒付けると、
「ありがと」
『え?もういいの?』
「うん十分に分かったから大丈夫、
今まで逃げ切ってくれてありがとね」
マヌカの言葉に少女は『はっ』として涙を浮かべていた。
「さ~もう安心だからみんなとたくさん食べて」
マヌカの言葉にコクリと頷き少女は食事を始めた。
マヌカと少女のやり取りを聞いていた村長が、
小さな声で聴いて来た。
『妖精様、本当に今ので詳細が分かったのですか?
もし分かったのならわしらにも教えて頂いた方が、
これから子ども達にどう接していくかの目安になるのですが…』
マヌカは村長の目を真っすぐに見て、
「凄く辛い話だけどいい?」
いつの間にか子ども達のお世話を了解してくれた夫婦達も集まって来て、
『私達も聞きたいです』
そう言って来たので、
少し離れた場所でマヌカが見た路地裏の話を始めた、
「なぜあんな小さなノノンちゃんが路地裏に来れたのか?
それが気になったのでそこら辺の記憶の話です。
ノノンちゃんの両親はわずかな食べ物を路地裏の子達に分けていて、
だから両親の事は子ども達も知り合いのでした。
そんな中ノノンちゃんも産まれて一緒に路地裏にも来てたんですが、
ノノンちゃんが3歳になったばかりの時に…
父親が病にかかり、あっと言う間に亡くなってしまったようです。
悪い事は続いて父親の病が母親にもうつってしまい…
もう長くは無いと知った母親がノノンちゃんを連れて路地裏にやって来て、
死ぬまでの間一緒に路地裏生活をしていたようです、
母親に死んだ後にノノンちゃんの事を頼むと言われ…
他の子達も同じような境遇で路地裏生活になったので、
みんなで頑張って行こうと話していました。
母親が亡くなったのが今から3日前って事ですから、
ノノンちゃんの心の傷は深いかと…」
『なぜ大人に頼まないのでしょうか?
家の中での生活の方が安全でしょうに?』
「う~ん、それがさ~
聖女教会って知ってる?」
『はい、名前だけは知ってますが』
「その教会の人達が子ども連れて行ってしまうと、
子どもが酷い目にあいながら亡くなってしまうって話があって、
大人も亡くなると教会の人が死体を持って行って、
良からぬことに使ってるって話があるそうで…
だからノノンちゃんの母親はノノンちゃんを連れて路地裏で息絶えたそうです」
その話を聞いてた村長達は真っ蒼になって、
『それって…領主様と同じことをしています、
領主様もやたらと子どもを欲しがりましたし、
誰かが亡くなると…弔ってやると言って…
死体を持って行ってしまうのです』
「なるほどね~教会と領主は繋がってると思って間違いないね」
『それでノノンちゃんの両親のご遺体はどうしたんでしょ?』
「町でもみんな色々と協力し合って、
子どもを守って死体は見つからない様に持ち出して、
町の人達が弔ってたみたい、
子どもの記憶だからそこら辺は詳しく分からなかった」
話を聞いてた若い夫婦はポロポロと泣き始めて、
『これ以上子ども達に悲しい思いをさせない為にも、
私達が守って行きます』
「ありがと、そう言ってくれて嬉しい、
あたしもこの村は全力で守って行くから、
なんの心配しないで子ども達のお世話をお願いしますね」
みんなは大きく頷いてテーブル戻って行った、
マヌカもテーブル戻りみんなの様子を見ると、
さすがにお腹が空いていたのか凄い勢いで食べている兵士達に目が行った、
そんな中隊長のウォーレンだけは何か真面目な顔をしてマヌカに向かい、
『これらの食べ物は何処からきたんだ?』
「なになに~?
あたしが変な物でも出したって言うんですか?
それなら説明しますが…
空気中のエネルギーをより集めて、
あたしが知っている食べ物に変換させたって感じですかね」
『説明を聞いても訳わからんが…』
そこにボンタが
『ウォーレンはまだマヌカを信じられないんだな』
その言葉に慌ててウォーレンが、
『いや~信じていないって訳では…
まて?まだ信じられないって言うのが本音だな、
こんな経験は初めてだし、妖精の話なんかは聞いた事も無いし』
「ま~信じてもらえなくても、
あたしはあたしの出来る事をやるだけだから、
協力の約束だけ守ってもらえればいいですよ」
『その事なんですが、
勿論協力はさせてもらうが、
一度城に戻って王に報告をしたいんだ、
その後でもいいかな?』
マヌカは少し首を傾げると、
「別にいいけどさ、
ここから城ってどの位の距離が有るの?
何日ぐらいでも戻れるのさ?
歩きだと時間かかるじゃん」
その時ウォーレン大きな声で
『ああああああ~うま~馬はどうした?』
隊長ウォーレン大きな声に若い隊員達が、
食事をしながら、
『あー町に置いて来ちゃいましたね』
その返答にマヌカがちょっと怒り、
「はぁ~?置いてきただと?
何処にどんな状態で?」
『そぉ~っすね~
木に縛り付けたままですね~』
「はぁ~~?縛り付けたままって…
飲み物や食べ物は?」
『え?えっえ~~っとですね~
何もないです………』
マヌカはスゥ~っと兵士の側に行くと、
兵士の目をじ~っと見つめ、
兵士の額に人差し指を付けたと思ったら、
グリグリと力を込めながら兵士から馬情報を読み取った、
『痛い痛いっすぅ~』
涙目になっている兵士から馬の情報を読み取った後、
スゥ~っと浮かび上がって両手を広げて、
農村の土地を少しだけ広げて、
小さめの牧場を作り、
大量の牧草を出して、
牧場の中心に湧き水も設置した。
湧き水の匂いに誘われて、
ずっと寝ていた土地神のオオカミが動き出すと、
保護された者達が騒ぎ出す、
『あっあれは~なんでしょう~~大きな生き物が』
兵士達も『あんぐり』と口を開けて土地神の姿を見つめる、
土地神はそんな事を気にもせず、
真っすぐマヌカに向かって来て。
『マヌカ様、われもあの湧き水を頂いて宜しいですか?』
「あっオオカミさん勿論飲んで下さい、
色々あってお待たせしてて申し訳無いです」
『いえ、
われはマヌカ様の側に居させて頂けるだけで満足です。
こんな短時間で農村も素晴らしくなりましたし、
ではわれはあちらに言って湧き水を頂きます』
ドスドスと音を立てながら移動している土地神に注目する兵士が、
『あれは魔物ではないですよね?』
ボンタは兵士の反応にがっかりしたような顔をして、
『お前達…土地神の事も忘れてしまっているのか?』
兵士達は皆顔を見合わせ顔を傾げながら、
『忘れたもなんも…聞いた事も無いっすよ』
『お前達の国には、
シャーマンが居たと思うんだが?
生活魔法の事も土地神の事も言い伝える役目がシャーマンだ』
『しゃーまん?聞いた事ないですね』
『はぁ~』と溜息をつくボンタがチラッとマヌカを見たが、
「ボンちゃんそこら辺はこの星に住む者同士が、
協力しながら元に戻していくしか無いよ、
情報が集まって来てるからこの国で何が起きたか何となく分かって来たけど、
失った知識はいずれ戻って来るから大丈夫だよ」
そこに隊長が口を挟んで来て、
『土地神とはそんなに重要なのか?』
『ウォーレン…土地神とはな~土地を守りし者なんだよ、
ここの土地も酷い状態だが、
土地神が守っていたからこの程度にすんでいるともいえるんだ』
ボンタは偉そうに腰に手をあてて説明している
『なんですと?ではあのオオカミの土地神にお礼を伝えなくては』
『あの土地神は隣の国の土地を守る土地神で、
ここら辺の土地神はヘビと鹿だ、
土地によって形は違えど、
土地神の共通点は全ての土地神は白いんだよ』
隊長はその話に
『ではいつか私達の前に土地神が現れる事もあるのか?』
『あ~マヌカの浄化のお陰で土地神も元の姿に戻り、
みんなの前にも表れる事もあるかもな、
もともと人前には出たがらないんだが…
マヌカには会いたいらしいからな~』
『それはなんでで?』
ボンタが嬉しそうに胸を張って答えようとした時に、
マヌカはボンタの前に出て、
「それはあたしが銀河の妖精だからですよ、
そんな事よりあたしは馬を迎えに行って来ます」
そう言ってマヌカが消えたと思ったら、
直ぐに戻って来た。
『おいおい嘘だろおチビちゃんが馬を連れて来たぞ』
そう言いながら兵士達は馬に駆け寄って行った、
『まじ俺達の馬じゃないかなんで俺達の馬が分かったんだよ』
そんな話にボンタが『クスッ』と笑い、
『おまえさっきオデコに指を付けられただろ?』
『あ~痛かったっすぅ~』
『あの時お前の記憶を見られたんだよ』
『え~そんな~本人の許可無く…
プライバシーの侵害じゃ無いですか~
俺のあんなことやこんな事も見られちゃったって事ですよね』
そんな話を聞いていあマヌカが心底嫌な顔で振り返り、
「そんなもん見てないわ~馬の情報だけだわ~
だいたい…記憶を覗くだけで…
考えまで見る訳ないっしょ」
ボンタはニヤニヤしながら兵士見て
『お前は見られては困る事を日頃考えているんだなハハハ』
言われた兵士は顔を真っ赤にしていた、
そんな状況でもマイペースな隊長が、
『さ~馬も戻って来た、
誰かに城に戻ってもらう事になるが』
そう言って兵士達に目を向けると
兵士達に何故か緊張が走った。
『もし城に戻るのなら…
隊長が行った方がいいと思います』
そう言われた隊長は驚いて、
『なんで俺なんだ?』
『俺達は直接王様と話をした事なんか無いし…
この状況を説明するなんて事俺らには無理って言うか…』
隊長は軽くため息を付いて、
『そんなこんな状況俺だって説明は無理だが…
目の前で起きた出来事を出来るだけ伝えるしか無いからな、
それに俺が手紙に書くから、
それを王に渡してもらえればいい、
だいたいお前達は町に居た時城に帰りたがってたよな?』
兵士達にさらなる緊張が走ったが、
『いや~隊長、
町では子ども達も見つからない日が続いていて…
ちょっと疲れちゃってたと言うか…』
そんな話をしている兵士をジッと見つめていた隊長は、
『そうかそうかクリス、
ではお前が手紙を持って城に帰ってくれ』
そう言われたクリスと言われた兵士は、
この世の終わりの様な表情になり唖然としている、
「なんで城に戻るの嫌なの?」
『だってこんな面白い状況から離れたくないっしょ』
「面白いね~
ちゃんと村の為にお手伝いはしてもらいたいんですけど」
『それは勿論やらせてもらうっすよ、
後は城に行くまで結構時間がかかるのがな~』
「それはあたしが送って行きますよワープでねフッフッフ
ではあたしも他にやる事があるんで、
隊長さんはさっさと手紙を書いて下さい」
そう言ってマヌカはレターセットとボールペンを出して、
隊長に手渡した、
隊長はボールペンをマジマジと見て、
『これで文字を書けるのか?インクはどうなってる?』
「インクはそのペンの中に入ってますよ、
そのペンはそれはそれはスラスラと文字が書けなすからね」
『他にもやる事があるって何をするんだ?』
マヌカは隊長の顔をジッと見つめて
「なんでそんな事聞くのですか?
それも王様に伝えるのかな?」
『ま~内容によっては伝えるが』
「まっいいか、
あたしは領主を確保する為に領主の所に行きます」
その話を聞いた者は血の気が引いてしまったのか、
真っ蒼な顔をマヌカに向けている、
『領主を確保してどうするつもりだ』
マヌカは空を仰ぎながら憎々しい顔で
「それは考え中~
あいつはこの星でやりたい放題…
あいつ達はここでやってはいけない事をやっているからね」
そこへ村長が慌てて駆け寄って来て、
『妖精様、
領主様が居なくなった後はこの村はどうなってしまうんですか?』
「700年前の平和な生活に戻るだけですよ」
『ではそれまで妖精様はここに居て頂けると』
「それは無理です、
あたしが居るとあたしに依存してしまうでしょ?
それでは本当の意味での自由な生活とは言えない、
これからみんなで話し合って生活を工夫して行けばいい」
『そんな~妖精さんが居なくなってしまうと不安で…』
「そこは分身体達を置いていくから、
子ども達の為にもそれがいいでしょ、
そうだな~子ども達が成人になるまでは置いておくよ、
小さくても強いし面倒もみるし…まっいいでしょ」
話を聞いていたボンタがフンッと鼻で笑ってから、
『自由に工夫って…
マヌカがここまで便利な村にしちゃったけどな~』
マヌカは少し顔を赤くして、
「だ~か~ら~
星の住人とはあまり関わらない様にしたかったのに~
生活魔法もちゃんと伝わっていなかったんだから
仕方なかったの…だからこの村は特別」
そこへ隊長がたずねる
『この村は特別と言う事は?』
「ここと同じような事を他の場所ではしない、
だからこそ、食べ物とかを他の人達にも配って欲しいんだけどね、
取り敢えずあの小さな町には夜が明けたら野菜を持って行って欲しい」
『わかった、俺が責任を持って他の兵士達と運ぶとしよう、
ただ馬に乗せられるのも限界があるからな…
町には結構な人がまだ住んでいるからどうしたものか?』
そこに村長も
『暑くなってきたら直ぐに傷んでしまう物も有りますし』
マヌカは少し考えてから、
「ここまで来たら…もう何やってもいいよね」
そう言って指をパチンと鳴らすと、
荷台付きトゥクトゥク3台出して見せた、
2台はリヤカーの様な荷台だが、
1台は箱の様な荷台だ、
『おいおい何だよこれは浮いてるぞ』
兵士達は大騒ぎだ、
「これはトゥーリア星と言う星から持って来た、
浮かぶ石を使っているから浮いてるの、
この高さまで浮いていれば、
道は補正されて無くても動くのは簡単ですからね」
それから乗り方などを兵士達に説明をして、
「それとこの荷台には」
そう言って箱の扉を開くと、
『うわ~冷てぇ風が出て来る~なんだ~』
「これもトゥーリア星から持って来た、
冷気をを出すクリスタルを付けているので、
ここに入れて運べば野菜などの鮮度保てるのです」
その話をみんな唖然と聞いているが、
兵士達はトゥクトゥクを乗り回して大騒ぎをしている。
「またまた話がずれてしまいましたが…
早くお城迄行きたいので手紙宜しくお願いします」
それからみんな夜中なのにトゥクトゥクで大騒ぎをしていた、
隊長は手紙を書き終えてクリスと言う兵士に渡し、
マヌカは兵士と共に城にワープして行った、
マヌカが村に戻ろうとしたその時クリスと言う兵士が…
『妖精さま~~どうかどうか手紙を渡した後、
俺も村に戻れるようにしてもらえませんか?』
「なんで?」
『だってあんな面白い所から離れるなんて…』
悲しそうにしている兵士を見てクスッと笑ってしまったマヌカは、
「しょうがないな~」
そう言うとマヌカの手が光出して、
手のひらから小さな透明な玉が出て来た。
それを兵士に渡しながら、
『用事がすんだら、
この玉を握りしめて村に帰るって言えば帰れるよ、
村に戻ったらこの玉は消えちゃうけどね』
それを聞いて兵士は飛び上がりながら喜んでいた。
そんな姿を見ながらマヌカは村に戻り。
村ではまだまだトゥクトゥクで大騒ぎをしていたが、
そんな中とうとう夜が明けてきてしまった。
「村長さん!」
村長はマヌカに呼ばれて
『妖精様お帰りなさい』
「あたしはそろそろ出発したいと思います、
何か困ったら分身体達を頼って下さい。
オオカミさ~~ん次の場所に行きますよ~~
ボンちゃんはどうするの?」
声を掛けられた土地神は、
スクッと立ち上がって優雅にマヌカに走り寄る、
ボンタは兵士達と一緒にトゥクトゥクで遊んでいたが、
『一緒に行くに決まってるだろ』
そう言いながら飛んで来た。
隊長も駆け寄って来て、
『まだ聞きたい事があるんだ~』
「もう夜も明けて来たのであたしは行きます、
隊長さん何も心配はいりませんよ、
王と王子夫婦にはあたしも用があるんで会いに行きますから」
『え?』
「ここに来た時から情報収集はしていたので、
ある程度は分かってますからね~~~」
そう言いながら1体と2匹の体は高く飛び上がり光と共に消えて行った。
まだまだ暑い日が続きますが皆さまご自愛を忘れずに、
最後まで読んで頂きありがとうございました。




