缶ケリ 〜缶コーヒーで蹴りつけようぜ〜
缶蹴りのルール?忘れましたね。
「缶蹴りやろうぜ!お前缶な!」
「何を言い出すんだお前は」
傍から見ればアホかって思いたくなるような発言が友人から発された。
ただそこにいるだけで凍える寒さの中、自販機で缶コーヒーを購入した俺は、友人を生ぬるい目で見る。
「ルールは簡単、その缶コーヒーで、俺とお前との因縁にケリをつけるのさ」
「さらに訳のわからんことを言い出したぞこいつ」
つまり、缶蹴りがしたいだけじゃないか。
「缶蹴りするのはいいが、とりあえずこれ飲んでからな」
「何言ってるんだマイブラザー、未開封のままで殺る方が面白いだろう?」
「上手くルビを付けたつもりか」
金は後で払えよ、俺の百円をお釈迦にするんだからな。
「なーに、細かいことは気にするな」
何故か俺の手から缶コーヒーを取り上げる友人は、そのまま十歩ほど距離を置いてから振り向く。
「喰らえッ、白銀の美脚!!」
クソ過ぎるネーミングセンスの必殺技名と共に、友人は缶コーヒーを放り投げ、左脚に白銀色の闘気を纏わせると、放り投げた缶コーヒーを蹴り出してきた。
ただの缶蹴りじゃないんかい。
いきなり始まった缶蹴り (意味不)だが、俺はその白銀色の闘気に包まれた音速の缶コーヒーに対し、両腕でガードの姿勢を作って受ける。
瑠璃色のスパークが俺の両腕と缶コーヒーの間で迸り――競り勝った俺は缶コーヒーを上方向に弾き飛ばし、落下してきたそれをキャッチ。
「チッ、まさか俺の白銀の美脚を受け切るとは……」
はい、今度は俺のターンです。
素手に氣を集中させ、暴力的な高エネルギー体を閉じ込め、極限まで高めていく。
「く、狂おしいほどのこの力……これは一体!?」
「否が応でも受けてもらおうか」
輝く缶コーヒーを天高く放り投げ。
「ゲシュタルト崩壊しろッ、ライトニング・ペディピュレート!!」
唐突に発生した落雷を右脚へと纏わせて、蹴り飛ばす。
凄まじいばかりの雷光を纏った缶コーヒーは真っ直ぐに友人へ。
「ヘヤアァァァァァ!?」
溢れ出す闘気と雷光を直撃、友人は吹き飛ばされて公園のフェンスを突き破り、そのままダストボックスへ頭からシュート。
とどめとばかり、雷撃によって破裂した缶コーヒーがその中身を友人へ降り注ぐ。
「ぐわっちち熱っ、あっつ!」
ついでに、中身の無くなった缶コーヒーの缶が、カコンと友人の頭へ落ちた。
「戦いの厳しさってのは、こういうものさ」
「さ、才能が違いすぎたということか……」
完。
お気づきでしょうか。
この小説、実はしりとりで出来ていることに。