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目が覚めたら目の前に適度に逞しく美しい胸板があった。
「はぅっ♡」
思わず吐血しそうになった。
そっと見上げるとド迫力の美しい寝顔。
「うっ♡」
今度は心臓が止まりかけた(体感的に)。
カーテンから薄く差し込んだ朝日に照らされた寝顔はとても穏やかで、何より神々しい。
美の集大成がここにある!と言われても大納得の美しさ。
この人が今世の旦那様だなんて、私、前世でどれだけ徳を積んだのだろうか。
...考えてみても何一つ徳なんか積んだ記憶がない。
宝くじで一等当たって億万長者になるよりも幸せ過ぎる今の状況。
え?私、早死する?しちゃう?ふとそう思った。
「んっ...」
何とも色っぽい吐息混じりの声が聞こえ、ミューゼ様の目がゆっくりと開いた。
「...おはよう、フェリー」
「おはようございます、ミューゼ様」
ミューゼ様の手が私の頬を優しく撫でる。
一気に真っ赤になったであろう私を見てミューゼ様が優しく微笑んだ。
「目覚めてすぐにフェリーの顔が見れるなんて...神からの褒美みたいだな」
いえいえ、こちらこそご褒美が過ぎます!!
「もう少しこのままで...」
すっぽりと抱き締められてミューゼ様の鼓動を聞きながら幸せに浸っていると、ドアをノックする音が聞こえ、ドア越しに声が掛けられた。
「おはようございます、ミューゼ様、フェリー様」
「支度ならもう少し後にしてくれ」
「承知致しました」
使用人を下がらせるとミューゼ様はゆっくりと私の髪を撫でながら何とも幸せそうな顔をしている。
「ミューゼ様...」
「...フェリー...君は何時になったら俺を「ミューゼ」と呼んでくれるんだ?」
「え?そ、それは...恐れ多いと言うか...」
「これからは「ミューゼ様」と呼ぶ度に罰を与えなければならないな」
悪戯っ子っぽく笑うミューゼ様がまた素敵♡
「罰?」
「あぁ。例えばこんな風に」
唇が重なった。
これが罰ですか?!寧ろ心臓に悪すぎるけど極上のご褒美なんですけど?!
「これは...罰にならないと思いますよ?」
「2人きりならば罰にはならないだろうな。でも人前でならどうだ?」
「ひ、人前?!無理です!駄目です!」
人前でキスなんてどんな羞恥プレイ!
「だったら『ミューゼ』と呼べばいい」
「...善処します」
「口調も固い。俺の前でだけは砕けて構わない。さぁ、ミューゼと呼んでくれ」
「ミュ、ミューゼ」
「あぁ、良いな」
良いのはあなたです!と思わず叫びたくなった。
暫くベッドの中で甘い時間を過した後、用意してもらった適温のお湯で顔を洗うと、ミューゼ様がすかさず優しく顔を拭いてくれた。
「そ、そんな事しなくていいですから!」
「好きでやっている。気にするな」
気にするなって無理だから!
「身支度を整えたいのですが」
「ん?そうか。では手伝おう」
「はいぃ?!」
「妻を美しく飾るのは夫の役目だ!」
「言葉の意味合いが違いますから!」
「同じだろう」
その後少しだけ押し問答があったのだが、ミューゼ様は一歩も引かず、結局私はミューゼ様の手で服を着せられてしまった。
恥ずかしい事この上ないのに、ミューゼ様はとても満足そうで輝かんばかりの笑顔を向けていた。
「練習した甲斐があったな。まだ髪を結ったり化粧を施す事は出来んが、それも何れは...」
「ミュ、ミューゼ?あなた、一体何を目指しているの?」
「完璧な夫を目指している!」
「普通、夫はそんな事しませんよ?!」
「普通じゃなくて構わない!」
何故ドヤ顔?ドヤ顔も素敵過ぎるけども!
ミューゼ様がゲームのミューゼ様からどんどんと逸脱しているのは絶対気の所為じゃない。
そんなミューゼ様も素敵だし大好き過ぎるんだけど...いいのか?
その後、やって来た私付きになったらしい侍女に髪や化粧を施される私を、ミューゼ様はじっくりと観察しながらも「ふむ」「なるほど」と言いながら空中で手を動かしながらシミュレーション的な事をしていた。
本当にどうしたんだ、ミューゼ様!
ブックマーク登録をして下さっている方が1000件を超えていましたΣ(゜艸゜〃)
最短記録です( ☉_☉) パチクリ。
沢山の方が読んでくださっていてアワアワしております。
ありがとうございます(*´˘`*)♡