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【書籍・コミックス二巻発売中】ヒロインが来る前に妊娠しました~詰んだはずの悪役令嬢ですが、どうやら違うようです  作者: ロゼ


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ハロウィン特別SS・ハロウィンパーティーをしよう

ずっと書いてみたいなと思っていたハロウィン物です。

なんとかハロウィンの日に間に合ってよかったw

 この世界にはハロウィンは存在しない。


 クリスマスが存在しないのだから当然といえば当然だけど、あんな素敵イベントが存在しない世界なんてどう考えてみても残念としか思えない。


 クリスマスは恋人達や家族とのイベントって感じで捉えていて、前世の私には無縁のイベントだったけど、ハロウィンはコスプレイベントという毛色が強く、一度やってみたいなーとおもっていたけど、それを達成することなく死んでしまったはずなので、やってみたい気持ちが強い。


 そして、そしてですよ!


 クリスマスイベントよりもハロウィンイベントの衣装の方が断然好み!


 トゥーラバはネットアプリゲームではなかったから、アプリゲームみたいに季節ごとのイベントなんて発生せず、世間がハロウィンコスプレに身を包んだ推しキャラ達に黄色い声を上げる中、「ミューゼがハロウィンコスしたら……」と妄想するしかなく、本当に残念・無念な気持ちでいた。


 だってですよ! 想像してみてくださいな!! ミューゼが吸血鬼や黒猫、魔法使いなんてコスプレに仮装した姿なんて、悶絶級なんてもんじゃないでしょ!


 鼻血の海で海水浴できるレベルで憤死確定じゃない?


 なんのご褒美なのか、今世はそんなミューゼ様の妻として生きているわけで、おまけにミューゼ様そっくりな可愛い息子もいるわけですよ?


「こういうのやりたいの」なんて言ったら、涼しい顔してわがままを受け入れてくれる、私に甘々なミューゼ様の妻の座についているわけで、こんな特権を利用しない手はないと思わない?


 ということでミューゼ様に提案してみた。


「ハロウィン? それは前世の世界であったイベントなのか?」


「そうなの。みんなで仮装をして、悪い物を追い払って楽しく過ごすためのお祭りみたいなものよね」


 正しくは違うだろうけど、ハロウィンについての知識なんて「トリック・オア・トリート」と仮装くらいしかない。


 この世界にはないのだからその説明は適当でもいいと思う。


 だって誰も「違うよ!」なんて指摘してこないし、そもそもやるのは家の中だけだから。


「本来は町中にカボチャの飾り物やお化けやコウモリなんかの飾りを飾ったりしてみんなで楽しむものだけど、領地でそんなことをしたら費用もかさんでしまうし、準備するのが厳しい家もあるかもしれないでしょ? だから、屋敷だけででも楽しめないかな? と思って」


 そう伝えるとミューゼ様は少し考え込んだけど、「いいだろう、フェリーの望みだからな」と了承してくれた。


 すぐにお義父様に提案しにいったミューゼ様。


 彼が許可しても、最終決定権はまだお義父様にあるのだから、却下されてしまったらそこで終わりなのだ。


 でもそうなったらそうなったで、親子だけでひっそりと楽しむ方向にシフトチェンジすればいいと思う。


「フェリーちゃん! ハロウィンってなぁに? なんだか楽しそうな話を聞いちゃったのよ。楽しいことはみんなでやった方が盛り上がるわよね」


 ミューゼ様がお義父様に提案しにいって十分足らずで部屋にやってきた義母のセナ様が、いつも以上に少女のように目を輝かせて尋ねてきた。


 なので大まかな(適当だけど)説明をすると、早速メイド長を呼びつけて、お屋敷でハロウィンパーティーをすることを伝え、皆にも準備をするよう言いつけていた。


 使用人の仮装の衣装費用はセナ様が出してくれるとのことで「素敵な衣装を確実考えて作るように」とも付け加えていた。


「大丈夫なんですか? お義父様はいやがりませんか?」


「私がやりたいって言えばあの人はなんでも『うん』としか言わないわよ。仮装するのでしょ? 私、仮装はしたことがないのよ! どんな仮装がいいかしらね? 私にどんな物が似合うのかしら? 想像するだけでワクワクしてくるわね!」


 仮装をするのは大道芸人や舞台の役者しかおらず、貴族が仮装をするなんて下品だと言われてもおかしくない世界だ。


 そんな中で堂々と仮装ができるとあって、セナ様ははしゃいでいた。


 というわけでいともあっさりと決まってしまったハロウィンパーティー。


 でも、女性陣、男性陣にわかれ、当日まではどんな衣装を着るのかは内緒にしてもらった。


 事前情報を持っているより、そんなのがない状態のほうが当日までドキドキワクワクできるし、見た瞬間の破壊力も桁違いだと思うのだ。


 私が好きな物を着せる楽しみよりも、あれこれ想像しながら待つという、焦れ焦れモードを選んだ私。


 私とセナ様は一緒に衣装を考え、使用人達も時々意見を求めてきたりして、みんなハロウィンを楽しみにしてくれているようでホッとした。


 使用人女性達の仮装は猫が多いようで、懇意にしている商店に猫耳のカチューシャを二十個ほど、様々な色や柄で特注してもらった。


 私も黒猫がよかったのだけど、みんながするのならばと諦めた。


 セナ様はメイド長たっての要望で花の妖精の仮装をすることが決まった。


「私が着ても大丈夫かしら? ちょっと若すぎるのではないかしら?」


 出来上がった衣装を見て躊躇していたセナ様だったけど、着てみると全く違和感がなく、むしろ本物の妖精か?! と思うほど似合っていて「これぞ美魔女! 恐るべし」と思ったものだ。


 ハロウィン当日。


 朝からせっせと使用人達が屋敷や庭をハロウィン仕様に飾り付けをし、いよいよパーティーが始まった。


 パーティーといっても、みんなでカボチャ料理を食べて、仮装した姿を見せ合うだけなんだけど。


 エリオンはセナ様がゴリ押ししたため、小さな魔法使いの仮装になったのだけど、それがまた可愛くて可愛くて。


『うちの息子、なんでこんなに可愛いの?! え? 私、天使産みました?』


 そう世界中に叫びたいくらいに可愛くて、もうどうしようかと思ってしまう。


 きっと幼少期のミューゼ様もこんな感じに可愛かったのだろうと思うと更に可愛くて、愛おしくて。


 本人は魔法の杖が気に入ったようで、あちこちに「エイッ!」と杖を振り、気を利かせたメイド達がサッとお菓子を出したりしてくれるため、本当の魔法使いになったつもりでいるようだ。


 最近しっかりしてきたといってもまだまだ幼児。無邪気で可愛すぎる。


 私とセナ様が一緒に会場である食堂に入ると、真っ先にミューゼ様の姿が目に飛び込んできた。


 黒い立襟の長いマントに、中には白いワイシャツ、パンツは細身の黒いスラックス。


 マントの内側は赤い裏地が貼られており、今まで見たどのドラキュラよりも妖艶で美しいドラキュラがそこにいた。


『神様ぁぁぁぁぁぁ!! ありがとうございまぁぁぁぁぁす!! 一生感謝いたしますぅぅぅぅ!!』


 神に感謝してもし足りない。


 そして、脳内では神様に感謝を大絶叫しながらも鼻血大噴出である。


 もう目が釘付けで、一瞬たりとも目が離れてくれない。


 目玉が飛んでってミューゼ様にくっついてるんじゃないだろうか? ってくらい目が離せない。


 そんな私を見て、ミューゼ様はニヤッと意味深に笑ったのだけど、その瞬間に口から白い牙が見え、本当に絶叫するかと思った。


『き、き、き、き、牙! 牙ですよ、牙!! なにあの似合いっぷりは!! あんなのもう罪だって!! ギルティー!! あの牙に噛まれたい!!』


 脳内が大変なことになっていた。


 その後、ゆっくりとこちらに近づいてきたミューゼ様。


「魔女殿」


 ドラキュラになりきっているのか、少しキザな感じで話しかけてくるミューゼ様が、普段よりも何倍も素敵に見えすぎて、倒れてしまいそうだ。


 そう、私は魔女の格好をしていて、ツバの大きな黒い三角帽を被り、真っ黒いコートにホウキを持っている。


「そういう姿も新鮮だな」


 耳元でそっと囁かれ、全身の骨が一瞬にして砕けて、腰どころか私自身がドロドロに溶けながら崩れ落ちそうだった。


 その後、パーティーは夕方まで続き、みんなとても楽しんでくれたようだ。


 夜になり、ミューゼ様は普段の服に着替えたのだけど、私は魔女の仮装のまま部屋に入った。


「まだ着替えないのか?」


 ミューゼ様は一瞬不思議そうな顔をしたのだけど、すぐに「中に仕掛けがあるのか?」と言ってきた。


 そう、この魔女の衣装はただの見せかけで、中には別の衣装を着ていたのだ。


 どうしても黒猫が諦めきれなかった私に、セナ様が気を利かせてくださって、ミューゼ様だけに見せる衣装として下に着ることになったものだ。


 魔女の帽子を外し、コートを脱ぐと、この世界でははしたないと言われるミニ丈のドレスが顕になった。


 黒字に赤いリボンをあしらった黒いミニドレスは、前世のゴスロリの衣装を思わせるような可愛いデザインだけど、色が黒ということもあり私でも着られた。


 帽子の下には黒い耳の付いたカチューシャをつけていて、ドレスの後ろの部分には黒いシッポもついている。


「猫か……実に愛らしい猫だな」


 そっと近づいてきたミューゼ様は私をそのまま抱きしめると「こんな妖艶で愛らしい猫は、俺の腕の中にだけいればいい」と囁いた。


 本当はこの衣装を着るのはとっても恥ずかしかったけど、喜んでくれているのがわかって、着てよかったと思った。


 でも……。


「こんな猫を離すことはできそうにないな。今夜はずっと俺に可愛がられるといい」


 なんて言われて、本当に一晩中愛され、翌朝は起き上がることすらできないくらいヘトヘトになるなんて思っていなかった。


「愛らしすぎるフェリーが悪い」


 そんなことを言われたけど、そういうことじゃないと思う。


「来年は真っ白なウサギになってくれ」


「え? 来年?」


「これだけ愛らしい姿が見られるんだからな、我が家の恒例行事にするだろう、当然」


 てっきりお義父様が反対なさるかと思ったけど、妖精姿のセナ様にメロメロになっていたようで、あっさり許可がおり、ハロウィンパーティーが我が家の恒例行事になることが決定してしまった。


 私としては仮装姿のミューゼ様が見られるのだから嬉しいのだけど、本当によかったんだろうか?


 ちなみにお義父様は狼男の仮装をしていたようだけど、その姿を私は一切見ていなかったのでセナ様に聞くまで知らなかった。

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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ嬉しいハピハロエピソードをありがとうございます♪ 供給過多で悶え死ぬところでした( ゜∀゜):∵グハッ!! また、季節系のエピソード読んでみたいです! よろしくお願いいたします(>人<;)
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