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今日は朝から珍しいものを見た。


ヘルドリアスがリリンを拒否していたのだ。


何時ものように「ヘルドリアス様♡」と熱が籠ってない癖に妙に甘い声を出してヘルドリアスに張り付こうとしたリリン。


でもヘルドリアスが「婚約者がいるのでこういうのは困る」と言ったのだ(ビックリ)!


成長したじゃないか、ヘルドリアス(誰目線?)。


しかし、そう言われた後にリリンが何故か私を睨んできた。


いや、私何もしてないからね?!


何故私を睨むかな?


「あいつ!」


私を睨んでいるのに気付いたミューゼ様が非常に不機嫌になった。


「何もされてないから、ね?」


「何かして来たら今度こそ完膚なきまでに潰す!」


あ、あの、ミューゼ様?


教科書が握り潰されてとんでもない事になってますが?!


握力どうなってるの?!


ミューゼ様の尋常じゃない冷気を感じたらしいリリンは慌てて目を逸らして教室を出て行った。


そして、授業開始ギリギリに戻って来たのだが、拒否られたのにちゃっかりヘルドリアスの隣に座っていた。


へこたれないのね、リリン。


休み時間になるとまたヘルドリアスの腕に腕を絡めようとして拒否られていたリリン。


そしてまた私を睨み付けてきて、ミューゼ様が今度は万年筆をバッキバキに折ってしまった。


「ミュ、ミューゼ?手は、大丈夫?」


「大丈夫だ」


「でも、インクで凄い事になってるけど」


「大丈夫だ。拭けば問題ない」


「大丈夫じゃないから!洗って来て!」


渋々手を洗いに行ったミューゼ様だが、たかだか手を洗いに行くだけなのに、わざわざキリアンに声を掛けて「フェリーを頼む」と私のお守りを任命していった。


「す、すみません」


「構いませんよ」


ニコニコ顔のキリアンは本当に子犬のようだ。


シャーリンが推すのも少し分かる(好みではないが)。


「あの、少しだけ相談があるんです」


「はい、何でしょう?」


「最近やたらと視線を感じていて...誰かに凄く見られている気がするんです」


「そ、それは...気の所為では、ないんですか?」


気の所為じゃないのは私がよく知っている!


絶対シャーリンだ!


どんだけ見てるんだ、シャーリン!


気持ちは分かるけど。


「気の所為なのかな?廊下や食堂等で特に感じるんですよね」


「...そう、なんですね」


「もしかして、僕、モテ期なんですかね?!」


「え?」


「人生には凄くモテる時期があると言うじゃないですか?!もしかして、僕、今がその時なんですかね?!」


「さ、さぁ?そうかもしれませんね」


「僕にもモテ期が到来したのかー♪いやー、どうしよう、参ったなぁ」


キリアンがニヤニヤしながら1人で照れている。


最近思うのだがこの世界のキリアンはどうも腹黒要素がない気がする。


結構なポジティブ思考な気がするのだ。


リリンと結ばれなくても家を復興させる目処が立ったからなのか、ゲームとは性格が違うだけなのか分からないけど、明るいし前向きだし、真の子犬キャラなのだ。


エスパーミューゼ様も「キリアンには腹黒さはない」って言ってたから間違いないと思う。


「僕、あの子かな?って思ってる子がいるんですよ」


「へ、へぇ」


「知りたいですか?仕方ないなぁ、ここだけの話ですよ?隣のクラスのレイラ嬢じゃないかと思うんです。へへへ、参ったなぁ」


隣のクラスのレイラ嬢とはシャーリンの取り巻きの1人で、何時も大抵がシャーリンの真横ポジを死守している伯爵令嬢だ。


フルネームがレイラ・セイラムだったはずだ。


2年程前に子爵から陞爵して伯爵となったセイラム家の三女だったはず。


何故陞爵したのかは知らない。


シャーリンと常に一緒で、しかも真横にいるのだから勘違いしたんだろうなぁ。


「実はシャーリン様なんですよ」て言ったらどんな反応するんだろうか?


絶対言わないけど。


「レイラ嬢の事は最近まで知らなかったんですけどね」


目をキラキラさせているキリアンには申し訳ないけど、絶対レイラではないと思います!


そしてキリアンよ、これは相談と言うのかい?!


ミューゼ様が戻って来るとキリアンは小さくスキップしながら席へと戻って行った。


その後ろ姿にはケモ耳と尻尾が見えた気がした


「何やら楽しそうだったな...妬けるな」


「そういうのじゃないの。キリアン様、今モテ期らしくて、そのお話を聞いていたのよ」


「モテ期?キリアンはそんな事で浮かれていたのか?!馬鹿馬鹿しい!」


「男の人ってモテ期とか嬉しいものじゃないの?」


「俺はフェリーにだけ好かれていればいい。不特定多数に好かれるモテ期など必要ない」


ミューゼ様の場合、多分年中モテ期だと思う。


何せ氷の貴公子と呼ばれていても顔が神がかってる程に素晴らしく良いんだから。


私は前世・今世通してモテ期なんてあったかな?


全く記憶にないなぁ。


「フェリーは俺に愛されるだけでは足りないのか?」


「ううん!ミューゼにさえ愛されればそれだけでいい」


「フッ、そうか」


そう、モテ期とかそんなのより、ミューゼ様に出会えて、ミューゼ様と結婚まで(妊娠も)出来てるこの奇跡に感謝こそあれ、不満なんて何もない。


本来なら一生分のモテ運使ったって叶わないはずだった想いだ。


不満なんて抱いたらバチが当たるってもんだし、当然不満なんて抱きようがない!


だってこんなに甘々な旦那様、他にいない。


今だって教室だというのにとんでもなく甘い笑顔を私にだけ向けているミューゼ様。


その笑顔で溶けそうです!!


受けるべき授業が終わり、今日も今日とてお姫様抱っこで階段を下りようとしたミューゼ様。


こちらとしてはそろそろ体重も赤ちゃんの成長の分だけ増えて来てるし、お姫様抱っこで階段の上り下りって結構危ない気がしてお断りしたいと思っていたので、今日こそは!と思って言ってみた。


「抱っこされて下りる方が危ない気がするの。だから自分で下りるよ?」


「心配はいらない。階段等目をつぶっていても上り下り可能だ!」


「え?!」


「ここで見ていろ」


そう言うとしっかりと目を閉じて階段をスタスタと下り、また目を閉じたまま普通にスタスタと上ってきたミューゼ様。


え?見えてますか?見えてますよね?!って位に普通に難なくスタスタと上り下りしちゃったよ!


ミューゼ様ってエスパーなだけじゃなくて超人でもあったの?!


脳内で前世でたまにテレビで見ていたビックリ超人(お腹の上をトラック通過しちゃったり、焼けたガラスの上裸足で歩いちゃったりする類の人達)が浮かんで消えた。


「これ位出来て当然だ」


「いや、普通は出来ないと思うし、私には無理だと思う!」


「フェリーはやる必要はない!頼まれてもやるな!」


うん、絶対頼まれてもしません!怪我必至だと思うから!


そしてやっぱり今日もお姫様抱っこで階段を下りる事になった。


「そろそろ重くなってきてるでしょ?」


「フェリーは元々羽のように軽いから、子の分体重が増えようと全く問題ない」


「羽...」


「フェリーなら3人いても抱いて歩ける」


私が3人もいたら怖いからね?!


「それとも、俺に抱かれるのは嫌か?」


「だ、抱かれる?!」


言い方!言い方エロい!!


「嫌じゃ、ないです」


「フェリーは可愛過ぎるな。そんな可愛さは俺にだけ見せてくれればいい。他では決して見せないで欲しい」


その可愛さというのがどれなのか全く分かりませんが、ミューゼ様以外に見せる相手なんておりません!!


「フェリーはどんどんと可愛く、そして美しくなっていくからな...心配は尽きん」


「誰も好き好んで人妻であり妊婦の私なんて狙って来ないと思うけど」


「フェリーが他の男のものだったとしたら、俺なら人妻だろうが妊婦だろうが関係なく奪いに行く!...誰かのものになっているフェリーを想像するだけで嫌だが」


はい!奪いに来てください!


まぁ、それ以前に私がミューゼ様以外に靡く事なんてないんだけどね。

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