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シャーリンの謝罪で王太子ルートに入ったと思ったのだろうか?
リリンがまたもや元気にヘルドリアスに突進していく光景を目にするようになった。
でも前よりは控えめ(普通は有り得ないけど)で、腕を絡める事はたまにしかしなくなり、ただひたすらにヘルドリアスの隣の席を死守している。
上目遣いでヘルドリアスに話し掛けて、ヘルドリアスも普通ににこやかに対応している。
それをヒューゴが嫌そうな顔で見てる。
ヘルドリアスを観察してて分かったが、ヘルドリアスは本当に女子には優しい。
リリンを真似してわざとぶつかって来たりしてヘルドリアスと接触しようとする女子達も出て来たのだが、そんな女子達にもヘルドリアスは気持ち悪い位に優しく接している。
「わざとだと分かっててもあの対応...反吐が出るな」
そんなヘルドリアスを見てミューゼ様は毎回そう言っている。
分かってても優しく出来るって筋金入りじゃない?
シャーリンが可哀想だ。
シャーリンとはお友達になったものの、友達って何するんだっけ?レベルな私は今一つ距離を縮める事も出来ず、会えば挨拶程度の仲のまま平行線を辿っている。
スザンナやオリーヴとは子供の頃からの付き合いだし、スザンナがグイグイ来るので私とオリーヴはスザンナに引っ張られてる感じで、それでも上手く行っている。
話題も大体がスザンナから提供があり、そこから膨らんで脱線したりしなかったりしてダラダラと話しているだけ。
互いに共通の趣味があるのかと聞かれても、スザンナはショッピングと小旅行が趣味でオリーヴは恋愛小説マニア。
私は...ミューゼ様マニア、かな?
特別な趣味なんてない。
それでも仲良くやっている私達って実は凄い?
シャーリンとの距離を縮めたいなぁと思ってはいるのだが、如何せんシャーリンには勝手にくっついている取り巻きが多くて、それを掻い潜ってまで近付く度胸は持ち合わせていない。
「はぁ...」
「どうした?シャーリン嬢の事か?」
どうしてあなたは的確に私の思考を読み取るのですか?!
やっぱりエスパー?エスパーなの?私限定の?!
「何やらおかしな事を考えていないか?」
「...ミューゼはどうして私の考えてる事が分かるんです?」
「うーん...長年フェリーを見て来たから、か?何となくだが分かる」
私だって長年見て来ましたがさっぱり分かりませんよ?!
時々「どうしてその方向に?!」と戸惑う程ですよ?!
でも好きなんですけどね、そういうミューゼ様も。
「それにフェリーは素直過ぎて顔に出ているからな...ほら、今だって」
頬を撫でられて「俺の事が好きだって顔をしている」と耳元で囁かれた。
このまま死んでもいいですか?!
...はっ!駄目だ!死んじゃ駄目だ!
「茶に誘ってみてはどうだ?フェリーがシャーリン嬢を我が家に招待すれば余計なやつらは付いて来れないだろう」
ほう、その手があったか(何故気付かなかった?)!
早速帰宅してすぐにシャーリンに個人的な茶会へのお伺いを立ててみたら、翌日本人が直接教室に来てくれて「是非参りますわ!」とピカピカの笑顔を向けてくれた。
女性キャラって推した事なかったけど、シャーリンならば推せる気がする。
*
やって参りました、茶会の日!
朝からウキウキと指示を出してセナ様ご自慢のティールームをさり気なく飾り付けてもらい、あれこれ考えてミューゼ様と直接選びに行った茶菓子を最終チェックし、クリス様がさり気なくくださった外国の珍しくも美味しいお茶に私の好きなお茶も用意し、かなり早くから前のめりでシャーリンが来るのを待っていた私。
「そんなに楽しみか?...妬けるな」
「え?ミューゼ様との茶会の時もこんな感じでしたよ?」
「フェリー...今すぐ抱いていいか?」
「駄目に決まってます!」
またもやおかしな方向に走りそうになったミューゼ様をほっといて今か今かと待っていると、1台の馬車が我が家にやって来た。
流石この国が出来た時から脈々と続いているこの国最古の公爵家の馬車は我が家の物よりも大きくて立派で、馬は4頭立てだった。
「馬が4頭...凄いですね」
「格の違いを見せ付けてきたか...クソっ」
実は我が家とシャーリン様の家はあまり仲良くないらしい。
何でもシャーリンのお父さんがクリス様を毛嫌いしているとかで、何かにつけてお家自慢をしてきたりするそうで「いい大人が子供同士のじゃれ合いをしている」とミューゼ様はそんなお2人を馬鹿にしたような目で見ている。
特に政敵等の関係ではない、あくまでプライベートでいけ好かない関係のようだ。
だから私がシャーリンと友達になったと言った時は驚かれた、セナ様に。
でも同時に「これであのくだらないお遊びのような大人気ないやり取りともさよなら出来るかもしれないわね!でかしたわ、フェリーちゃん!」と褒められた。
さて、シャーリンとの初めてのお茶会である!
ご指摘を頂き、馬車の馬の数を3頭から4頭に変更しました。
何かの小説で3頭立ての馬車と記載されているのを見てそれが頭に残っていて3頭にしたのですが、あまりいいものではないらしく、また馬車として偶数立てが当たり前らしく。
実際の現実世界とは異なる世界なので現実はどうあれ別に構わないかとも思いましたがおかしいのであれば変更しなきゃなぁと変えてみました。




