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私宛の手紙が届いた。


差出人の名前を見てビックリ!


『キリアン・ヘドリック』


キリアン・ヘドリックとは闇落ちすると裏社会のボスになるヒロインの幼馴染である。


キリアン(様は付けません!脳内で位許せ!)は実は伯爵家の一人っ子なのだが、その伯爵家は先代伯爵の領地改革の失策での莫大な借金のせいで没落寸前であり、ヒロインがキリアンと結ばれると恋愛脳炸裂させて没落寸前だった伯爵家を継ぎ見事再起させるのだが、バッドエンドの場合は伯爵家は綺麗に没落し、キリアンは無一文で市井に放り出され、世間の冷たく無情な風に晒され続けた結果闇落ちして裏社会と繋がりを持ち、最終的に裏社会を牛耳るボスになるという、何とも鬱々とした、多分バッドエンドが一番最悪なキャラクターである。


ヒロインとの出会いはヒロインがいた孤児院で、ヒロインはキリアンの身分を知らずに仲良くなるという設定だった。


因みにキリアンはヒロインに一目惚れで、気色悪い(言い方悪いけど)位に一途にヒロインに惚れているという設定でもあった。


ファンディスクでは闇落ちしてボスになった後の話が収録されていて、幸せになったヒロインを祝福しつつも実は酷く妬み、また執着していて、何かと破局する方向で悪事を画策するのだが尽く失敗。


報われないなぁと思っていたらヒロインが産んだヒロインそっくりな女の子と後に年の差婚をし、華麗に貴族社会に復活を果たすというとんでもないハピエンエピで度肝を抜かされた。


24も年の離れた裏社会のボスによく嫁がせたな!ってゲーム板騒然としてたっけ。


そんな相手からの手紙が何故か私に届いた。


手紙の内容は『リリンの事でご相談したい事があります。お時間をいただけませんか?』って感じだった。


何故ヒロインの事を私に相談?


別に仲良くないんですがね、全く。


相談する相手を間違えていませんかね?


でもまぁ、別に話を聞くだけならいいかな?と思って夫であるミューゼ様に手紙を見せてお伺いを立ててみた。


「必要ないだろう!」


ですよねー!としか言えない返事が返ってきた。


「何故フェリーがあの転入生の事でこの男の相談を受けなければならないんだ?!あの転入生とは何の関係もないだろう!寧ろ危険に晒された被害者なのに」


「まぁ、そうなんだけど...ただ、話くらい聞いてあげてもいいかな?と思って」


「必要ない!...2人きりで会わせたくもない!」


「ん?」


「相談となればこの男と2人きりで会うのだろう?そんな事は許せる訳がない!嫌だ!」


も、もしやヤキモチですか?!妬いてくれるのですか?!


最後の「嫌だ!」って何?!言い方といい顔といいズキューーーンと来たんですが!!


思わぬヤキモチに鼻血と吐血、ダブルで噴きそうになった。


「で、でも、私で役に立つなら話位聞いてあげてもいいかな、と」


「フェリー、君が優しい事は十分理解している。が!優し過ぎる!女神なのか、君は?」


え?!何処から女神出てきた?!


聞いてあげてもいいかなって言ったのは『もしかしたらもうちょっと妬いてくれるかな?』っていう邪な気持ちがふんだんに含まれていた(本心でもあるけど)んですが、それの何処に女神要素が?!


「可愛くて美しくて優しいなんてもう女神だろう!」


何やら力説されていますが、大丈夫か、ミューゼ様?!正気に戻れ!相手は私だぞ!私なんだぞ!


「あ、あの、ミューゼ?」


「俺が焦がれて手に入れたのは女神だったか...」


駄目だ、思考が完全にショートしてるよミューゼ様。


『戻ってこーーーーーい!!!』


心の中で山のてっぺんからこだま響かせながら大絶叫してみたがミューゼ様はついぞ戻って来なかった(どういう事かな?)。



キリアンにお断りのお手紙を出したのだが、めげないキリアンは何度も何度も手紙を寄越してきた。


余りに必死なのでミューゼ様にお願いして話を聞くだけと何とか了承してもらって会う事になったのだが、「人目に付いてありもしない噂が立つのは許せない!」との事で我が家(キャー♡言っちゃった♡)に来てもらう事になり、「密室で2人きりには絶対にしたくない!」と言うので屋敷から丸見えになる庭で会う事になった。


聞かれたくない話かもしれないからとミューゼ様はすぐ駆け付けられる庭に面した室内でその様子を見つめるというオプション付きである。


約束の時間よりも少し早くやって来たキリアンはまずミューゼ様に「この度は大変申し訳ありません。こちらの都合を受け入れていただきありがとうございます」と深々とお辞儀をしていた。


「フェリーに何かしたら殺す」


とんでもなく物騒な発言をしたミューゼ様は絶対零度の貴公子さながらに相手が凍り付きそうな冷気を放っていた。


ミューゼ様の視線をビシバシ感じながら、庭に用意してもらったテーブルと椅子に腰掛けて「で?どういった事なのでしょうか?」と話を切り出した。


「ランベルト夫人は最近のリリンをどう思いますか?」


ランベルト夫人?!何その素敵な響き!


夫人で間違いないんだけど、初めて言われたよ!


「どう、と聞かれましても、元からの知り合いでもございませんし...元気なお方なのだなぁとは思いますが...」


「夫人はお優しいのですね...あれを『元気』と言うには行き過ぎていると言うのに」


それからキリアンの口から2人の出会いからこれまでの事を聞いた。


設定通り孤児院(キリアンは慰問で訪れたらしい)で出会った2人は意気投合して仲良くなり、孤児なのに明るく前向きで優しく可愛い(キリアン力説)リリンを好きになったそうだ。


そんなリリンの様子がおかしくなったのは学園に編入するかもという話が持ち上がった直後からだったらしい。


突然「そうだ!それってトゥーラバだ!」と叫んだリリンにキリアンは驚いたそうだ。


「トゥーラバとは何かご存知ですか?」と聞かれたが知らないと答えた。


言える訳がないよね、知ってますなんて。


そこからリリンは猛勉強して学園の編入試験に合格し「これでキリアンと同じ学園に行ける!」と喜びつつも「攻略対象者に会える!ミューゼ様に会える!推し!推しがいる!」と大興奮だったらしい。


あー、その姿が目に浮かぶようだわ。

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