5 先輩、クレープ食べに行きませんか?(1)
今回は区切りの良いところで(1)、(2)、(3)と分けて投稿するつもりです。
(3)が書き終わってないのに投稿したい欲に負けて(1)(2)だけ先に投稿します。(3)はもうしばらくお待ちください。
「先輩、クレープ食べに行きませんか?」
ある日の放課後、俺の前に姿を現した彼女は突然そんなことを言い出した。
「いいけど、どうしてまた突然クレープなんて」
「クラスの友達に駅前に新しくクレープ屋さんができたって聞いたので、放課後暇してる先輩と一緒に行こうかなって」
「なかなか失礼だな…俺に予定があるかもとか考えなかったのか?」
「じゃあ聞きますけど、なにか予定があるんですか?」
「いやまあ無いけど…」
俺に放課後一緒に遊ぶような仲の良い友達がいたり、部活に入っていればここで彼女に言い返すことができたのだろうが、生憎そんな友達はいないし部活にも入っていない。なぜだろう、自分で言っていて悲しくなってきた。
「先輩…辛くなるのは自分なのになんで余計な意地張っちゃうんですか」
「…うるさい」
「慰めてあげます」と頭に伸ばしてきた彼女の手を払いながら、俺は帰りの準備を進める。
「なになに、裕斗と夕夏ちゃんどっか行くの?」
会話を聞いていたのか、既に帰り支度を終わらせて肩に鞄をかけた翔也が会話に混ざってくる。
「はい!駅前に新しくクレープ屋さんができたって話を友達に聞いたので、今から先輩と行くんです」
「へぇ、いいじゃん。でも駅前に新しくできたってなると、早くしないとうちの生徒で行列ができそうだな」
「確かに…!それは盲点でした」
「じゃあ俺は部活行くから、二人とも楽しんできてな」
「ありがとうございます。翔也さんも部活頑張ってください」
「サンキュー」
翔也は右手を軽く上げて返事をすると、早足で教室を後にした。
「それじゃあ先輩、私たちも行きましょうか」
「俺はまだ行くとは言ってないんだけどな…」
「まだそんなこと言ってるんですか!いいから行きますよ!」
「はぁ…俺の自由が…」
彼女に強引に手を引かれて教室から出ていく俺たちに、クラスメイトは相変わらず暖かい視線を向けてくるが、彼女の強引さ同様俺にはどうすることもできない。
『もう慣れるしかないな』
前に翔也に言われた言葉を思い出す。
彼の言う通り、もう慣れるしかないのだろうか。
強引に手を引いて前を歩く彼女を見ていると本当にそんな気がしてきた。




