ヲタッキーズ76 ヲタクの迷宮
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第76話「ヲタクの迷宮」。さて、今回は元ギャングのヒップホップの大立者の娘が誘拐されます。
誘拐犯は"論理迷路"を駆使した高度な戦略を展開、主人公をセラピーで欠くヲタッキーズは苦戦…ん?苦戦しない?笑
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 誘拐
夜明けのパーツ通り。
アキバの夜は異様に早く、そして朝はルーズに遅い。
コロナで観光客が激減し、この傾向に拍車がかかる。
「おはよう!」
「…」
「御苦労様。頑張って!」
ジョギング中の幼女が、新聞配達に声をかける。
日本語が不自由な相手は手を振って笑顔を返す。
その背後に黒いセダンが迫る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕の苦手なバリキャリ系のスーツ女子だw
「テリィたん、コーヒーは?」
「え。もう始まってるの?」
「飲むの?デカフェだけど?」
彼女は、SATOのモリン心理作戦部長だ。僕は宇宙から地球に帰る度に彼女のカウンセリングを受けるコトになってる。
あ、SATOはアキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直属の組織で"南秋葉原条約機構"の略だ。
"リアルの裂け目"のアチラとコチラでデジマ条約締結され、秘密防衛組織ジャドーはSATOへと発展的改組w
「仕事ならカフェインにしよーかな」
「あら、いつもそんな感じなの?」
「セラピーまで、まだ10分以上アルょね?」
ギャレーで時間を潰そうとしたのに損した気分だ←
「コレ、雑談だから。時間まで待ってもOKょ?」
「元ジャドーならわかるだろ?自分がいない時に限って、アキバに何かが起きる」
「でも、音波銃とIDで出来るコトは限られてる。ましてや、テリィたんは民間人でしょ?」
「民間人だから、会社からメールが来る」
「電源はオフにして」
「無理」
「テリィたん。今日は、第3新東京電力の仕事は忘れて私に従って。ココでは私がルール」
ハムラビ法典かょ…僕はスマホの電源を切る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
未だ街灯が消えないパーツ通り。ジョギングする幼女を追う黒いセダンが、さらに距離を詰めようとした時…
がっしゃーん!
路地から飛び出した、ハマーか?軍用の大型SUVが黒いセダンをマッチ箱のように押し潰して乗り上げるw
「やっちまえ!」
ハマーから降りた傭兵?がショットガンで黒塗りの運転席を木っ端微塵に粉砕、立ちすくむ幼女を拉致スル!
「長居は無用。Go Go Go!」
幼女を乗せたハマーはサイキック抑制蒸気が漂う中を中央通り方向へ。突然の出来事に呆然とスル新聞配達w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部のメディカルセクション…
とはいえヤタラと豪華な応接室だがw
「じゃセラピー始めるわね…テリィたん、怒ってるの?」
「まさか…うん、まぁ少しは」
「私に指図されたくない?」
「指図は誰にもされたくないな」
「あら。ムーンライトセレナーダーからも?」
ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿で、最近コスプレを白にチェンジw
「アレは指図じゃなく、尻に敷かれてルンだ。モリン部長は指図されるのが好きなの?」
「前回、宇宙勤務を終え地球に帰還してセラピーを受けた時も、テリィたんは私に腹を立ててたわ」
「あの時は…何か事件が起きてたょね?あれ?何だっけ?」
「なおさらでしょ?穏やかに私と接していれば、コトは簡単に済んだ。お座なりなカウンセリングにサインをして全てが終わったのに」
「…まさか、僕が貴女に助けを求めてた、とか?」
「テリィたん、こうしょ?お互い率直に話すの。精神分析ゴッコはヤメ」
「了解」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早朝のパーツ通りに規制線が張られる。ココは誘拐現場だw
「状況は?」
「ボディガード1名が死亡。異次元人の幼女が誘拐されました。ホセカ・ンティは11才。毎朝ジョギングの習慣アリ」
「幼女の早朝ジョギングに護衛がつくの?」
規制線をくぐり、ビニ手をしながら報告を聞くのは、万世橋警察署の敏腕警部ラギィだ。僕とは新橋鮫時代からの知己。
「母親が大物なので。エロボ・ンティ」
「誰?」
「"永久機関レコード"の創設者にして会長です。異次元ヒップホップの大立者。因みに"リアルの裂け目"経由の麻薬取引、マネーロンダリングでウチの捜査対象にもなってます」
「ギャングなの?」
「"裂け目"のアチラ側にある裏アキバのストリートギャング"18丁目ヲタクス"出身で、ギャング時代に貯めた資金で秋葉原に異次元ヒップホップを流行らせ、大成功を収めた…」
騒然とした誘拐現場の中、か細いスマホの鳴動音がスル。
「死んだボディガードのスマホが鳴ってます!着信番号は…1の羅列?」
「捜査本部!」
「はい、警部。モニターして逆探知をかけます。電話に出てください」
ラギィがビニ手で血染めのスマホをとる。
「エロボのボディガードか?」
「彼は、ショットガンで撃たれて即死。アンタは?」
「エロボの娘は預かった。身代金は2億6380万円。現金で用意しろ。猶予は1時間。出来なければ殺す」
「何ょその端数?しかも、現金?1時間じゃ無理に決まってるでしょ!暗号資産や公開されてない収益情報ではどう?投資家にとっては宝の山だけど」
「1回しか言わない。現金だ」
一方的に切れる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
モリン心理作戦部長は、ミニスーツの脚を組み替えるw
「テリィたんは、民間軍事会社ヲタッキーズの社長ょね。社員である彼女達の話をしてくれない?」
ヲタッキーズは、ムーンライトセレナーダー率いるスーパーヒロイングループで元ジャドーとは軍事契約を締結してる。
「彼女達の話?」
「社長のテリィたんがいなくてもヲタッキーズは機能スルのかしら」
「ヲタッキーズは、元ジャドーと契約するために立ち上げた1種のペーパーカンパニーだ。僕は、名目上の社長に過ぎない」
「ずいぶん控え目な紹介だけど…本心?」
「いいや。単にモノゴトをナナメに見るクセがついてるだけだ。ヲタクだから」
「テリィたんの推し、ムーンライトセレナーダーは?」
「ミユリさん?」
「彼女はどんな人?」
「頭脳明晰。恐ろしくタフなのに控え目と逝うヲタク殺しの王道。リアルでは絶対いない女子」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「報道規制はそのママ。どーせ広まるけど…ソレから異次元人絡みだから本件は、ジャドー、じゃなかった、SATOとの合同捜査ょ。みんな、仲良くやってね」
「ROG!既にウチの捜査官とヲタッキーズのエアリが被害者宅に急行中」
「ムーンライトセレナーダー、テリィたんから連絡は?」
ムーンライトセレナーダーは、白のヘソ出しセパレートと逝うコスプレだが捜査本部には溶け込んでる。アキバだから←
「スマホは留守電ってか、もともとメールしか反応しない人だから。コレが犯人の電話の情報?あら。逆探知失敗したの?」
「ゴメンね。ウェブLINEのサービスを使ってた。VoIP」
「データ通信の音声版?じゃ逆探知は無理ね」
「面目ナイ」
「何とかして発信源まで遡らなきゃ…ルイナに頼んでみるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボは、SATO司令部に併設してる。
「ええっ。マデラ司令官代理、チューリングマシンのソンな使い方は初めて見たンですけど!」
「ルイナ。私としては、何とか有限状態マシンを構成したいと思ってるワケょ」
「司令官代理、認知発言理論は?」
「あら。いきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ何?」
「不調な時は、いつも私の肩越しに…」
「いいえ。肩越しじゃなくて肩ソノモノを見てたの。ルイナは純和風の撫で肩ね。このヲタク殺し」
「え。そーかしら?テリィたんも気にしてるかな?」
気にしてないw
女子って生き物は、井戸端会議的に良くもまぁ会話を延々と続けられる生き物だ。ルイナは国宝級IQの超天才なのに…
対するのはSATOのマデラ司令官代理。SATO司令部がゲーセン地下に秘匿されてる関係で2人ともコスプレしてるw
ルイナはメイド服。マデラはロマンスカーEXの車掌さん。
「あら。ミユリさんだわ…はい、マデラです」
「あ。SATOとの合同捜査案件が発生しました。ルイナ、いますか?」
「ええ…ルイナ、貴女にだわ。ムーンライトセレナーダーから。ウチとの合同捜査らしいから、相談に乗ってあげて」
「はい。ルイナです。ねぇテリィたんって撫で肩に…」
「VoIPだけど?」
「IP電話?」
「逆探知、頼める?」
「 IP電話って従来の電話と違って、データがメールみたいにサーバを通るワケ。ソレで…」
「1時間で誘拐犯を見つけないと幼女が死ぬの」←
「わかったわ。誘拐犯からのIP電話を逆探知スルのね?でも、過去の通話は無理ょ。リアルタイムなら追える。パケット再伝送の分析モデルがアルから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
またまた脚を組み換えるモリン心理作戦部長。
「テリィたんの推しミユリさんには心理分析の知識がある」
「やっぱり?モリン部長の商売仇?パイが狭いね」
「テリィたんとは?」
「僕は違うなw」
「でも、交渉スルには、相手の心理分析が不可欠。誰にだって行動分析は必要ょ?」
「ミユリさんのは、次元が違うのさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エロボの豪邸は、東秋葉原にあるタワマン最上階にある。
現地に飛行呪文で舞い降りたエアリから捜査本部に連絡。
「ミユリ姉様?」
「あら、マリレ。何か問題でも?」
「エロボが捜査には協力しないと言い出して…鉄扉越しに説得中です」
どうやら面倒臭い人間のようだ…あ、異次元人か。
「エロボと電話を代わって」
「了解」
「もしもし!アンタがムーンライトセレナーダーかい?娘に何かあれば、私は秋葉原を焼き野原にしても報復に出る。ヲタクやタイムトラベラーが大勢死んだCD戦争の再来さ。誘拐犯をそう脅してやるつもりだょ」
「こんにちわ、エロボさん。貴女もパワーをお持ちのスーパーヒロインだそうですね?」
「YES。瞬時にゼロ気圧までの爆発的減圧が出来る。アンタもカラダ中の血液が沸騰して死にたい?」
「no thank you」
「アタシには、ヲタッキーズや警官隊をアタシのペントハウスから追い払う権利がアル」
「あらあら。娘のホセカちゃんが1人で恐怖に耐えてる最中に引き上げろと?」
「アンタ達は、アタシが"裂け目"を出た時から、ズッと監視して来たろ?え?異次元人キラーのジャドーさんょ?」
「今、ソレって関係あります?ソレに新年度からSATOに改名したの。今は、一刻も早くホセカちゃんを保護したいだけ。そのタワマン最上階のペントハウスに連れ戻してあげたい。それだけょ」
「嘘ょ」
「ホセカちゃんを取り戻すため、可能な限りの情報提供をスル。スーパーヒロイン同士の約束ょ」
「わかった…でも、最終決定はアタシが下す。OK?」
「出来る限りそのようにスルと約束スルわ(何の約束にもなってナイw)…女手1つでホセカちゃんを育てた苦労、お察しします」
「え。実は父親が誰だかワカラナイの…」
「ワダカマリを捨てて互いに協力しましょ?ホセカちゃんを救い出すコトだけ考えるの」
「アンタ…マジでヲタッキーズ?」
「誰だと思った?」
「ヤリ手の離婚弁護士」←
捜査本部の全員が笑いを必死に堪えるw
「正面ゲートを開けて…そこのメイド服だけ入れておやり。あ、刑事サン達はお断りだょ!」
電話の声がヲタッキーズのエアリに代わる。
「姉様、どんな手を?」
「まぐれ当たり。エアリ、エロボから片時も離れないで」
「ROG。今から私は彼女の手錠」
再び閉じた鉄扉の外にいる警官隊から報告。
「Ms.エアリ、ペントハウスに入りました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、捜査本部とルイナのオンライン会話は続く。
「で、その IP電話の送信元が辿れる"パケット再伝送の分析モデル"って何?」
「"エクスプロイト"のコトょ」
「だから、ソレ何?美味しいの?」
「IP電話ってメールに似てるの。パケットデータがネットを往来するワケ。例えるなら、空港の手荷物。目的地に着くまで、手荷物は多くの空港を経由スルでしょ?その手荷物にステッカーを貼るのが"エクスプロイト"。貼られたステッカーを見れば、その手荷物が何処を経由したかがワカル。つまり、パケットがサーバーを経由した経路をたどれば、脅迫電話をかけて来た犯人の居所が特定出来る」
「うーんウィルスを仕込むハッカーみたい感じ?」
「少し似てる。ラギィは例えが好きだモンね。今のでわからなければ、とっておきの例え話が…」
「別の日にゆっくりね」
ソコへ制服警官が駆け込んで来てラギィに報告。
「警部!手術が終わりました!」
「え。誰の?」
「生き残った方のボディガードです」
「ヲタッキーズのマリレ!ウチの若いのと病院へ行ける?状況がわかったら連絡を」
「了解」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃…脚を組み換えるモリン。見えそうで見えナイ←
「ミユリさんの心理分析は何処が違うの?私と技量は大して変わらナイのに」
「ミユリさんは、思考分析自体が好きナンだ」
「テリィたんは?」
「疲れるだけだ。クタビレ果てて、そんな夜はシャワーを浴びて全て洗い流す」
「ニューヨーカーみたい。でも、ソレでスッキリする?」
「後は、御屋敷に出掛けてミユリさんのオリカクを飲んだりアフターしたり」
「気取った答えだけど…ホントにソレで解消出来るの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、エロボの豪邸に入ったエアリは。
「万世橋の連中は、この3年間、私の屋敷の盗聴に失敗してる」
「まぁ。ナゼわかるの?」
「盗聴されてないか、1日おきに調べてるから。毎回、盗聴器がザクザク出て来るわ」
「全部が警察じゃナイわね」
「金や地位がアル限り、私は狙われ続ける」
エロボは、ため息をつき、自分に言い聞かせるように逝う。
「でも、私は誓ったの。娘には真っ当な人生を歩ませるって。数ヶ月前、カラダの弱かった娘が早朝ジョギングをして、いつかママのような大立者にナルと言ってきた。娘の目には私はカッコ良く見えてるみたいょ…シングルマザーなのに」
「子供にとって母親は、誰でもスーパーヒロインに見えるのね…誘拐犯の心当たりは?」
エロボは、弱気なシングルマザーからギャングの顔に戻る。
「私の敵?東秋葉原に潜む全異次元ギャング。ソレとレコード会社。2つの共通点は金の亡者。容疑者の心当たり?多過ぎて特定は無理。自分でも目移りしちゃうわ」
エロボのスマホが鳴動。モニター中のオペレーターが相手の電話番号を確認して盗聴の準備を整えてOKサインを出す。
「誘拐犯からです」
「待って。ルイナ?」
「"エクスプロイト"のインストール完了。通話してくれれば経由中のサーバーがわかるわ」
エアリがエロボに伝える。
「OK。出て」
「もしもし…先ず娘と話をさせて」
「その前に。ソコにいるスーパーヒロイン、名前は?」
「何のコト?私だけょ。アンタ、もしも…」
「ソコにいるのはわかってる。名前は?」
エアリがエロボのスマホに向かって名乗る。
「エアリ」
「ヲタッキーズ?!あらあら。コッチも気合い入れなきゃね。ムーンライトセレナーダーは元気?」
「ちょっとアンタ!」
「万世橋の誘拐犯逮捕の成功率は86%らしいわね。エロボ、残り14%になってみる?」
「娘に何かあったらアンタを…」
「会長さん、脅しとユスリは、ストリートを離れた時に卒業でしょ?現金は黒いカバンに。30分で地下アイドル通りの公衆電話BOXへ持って来て。3回鳴らして電話に出なきゃガキは死ぬ」
唐突に電話は切れエロボは頭を抱える。何かの豪華なトロフィーを掴んでガラステーブルに投げつけ、粉々に叩き割る。
「落ち着いて、エロボ。ゲーム開始ょ。とりあえず、現金で2億6380万円が入り用。手元に聞き分けの良い銀行のリストがアルけど」
「必要ナイ。電話で済ますわ」
「マジ?」
エロボは、不敵に笑う。
「ただし、相手は聞かないで」
第2章 相棒は2度死ぬ
同時刻のSATO司令部のラボ。
「 ルイナ。IP電話の追跡はどうなったの?」
「サーバーのISPアドレスから場所を特定中。ちょっと待って…あら?神田台所町のマンガ図書館?公共のサーバーを使ってる?」
「げ。東秋葉原じゃナイの?秋葉原の東西横断コースw」
「マリレ、飛べる?」
「はい、姉様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、何回目かの脚の組み換え。もう見飽きて(何を?)…
「ヲタッキーズのマリレとは?」
「もう長いつきあいだ」
「時間ナヂスだけど、気にならない?」
「彼女は国防軍だぜ?…まぁ最初は早々に負けると思ってた」
「貴方に?」
「アキバにさ」
「彼女を信用出来なかった?」
「ソレはどうかな…でも、ミユリさんも安心して背中を預けてる。今じゃ頼れる相棒さ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田台所町は、神田明神からアキバへ下る左側の界隈。
いわゆるアキバから遠く離れて萌え系の御屋敷もナイ。
「先ず、私が確かめて来ます。もし、何かあったら突入をお願いします」
SUVで待機スル警官隊に告げマンガ図書館に入るマリレ。
館内に入りヲタクを1人1人確認してからスマホを抜くと…
「こらぁ!電話はやめて!メイドさんも仲間なのね?」
初老の司書が飛んで来て、マリレを叱責スル。
あ、マリレはカフェ勤務でいつもメイド服だ。
「仲間って?」
「今、追い出してやったわ!音楽を聴いたり、パソコンに向かって延々と話をしたり…ヲタクにしたってヤリ過ぎよっ!」
「確かにキモいですね」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
モリン心理作戦部長は、今度は身を乗り出して来る。
ソンなに前屈みになると…わ!たわわな胸の谷間が…
「マリレから見たテリィたんは、どう見えてるでしょう?」
「ソレを僕に聞くのか?多分カッコ良いとか素敵な社長とか…」←
「彼女の意見を聞いてみます」
「ソレを聞いてから僕に聞けっ!」
「仮に厳しく接したとして、彼女はどう思うでしょうか?」
「対応出来るさ。気にしないと思う。元が軍人だしね。国防軍だけど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「容疑者は、中近東系40代で黒の巻き毛。体重は約80kg。身長約180cm。5分前に出たそうです」
捜査本部の全員が耳をダンボにしてスピーカーから流れるエアリの容疑者情報を聞く。
エアリが"怒れる司書"から聞き出した内容で、ようやく容疑者の輪郭が見えて来る。
「エアリ。容疑者の似顔絵が欲しい。今からマンガ屋を行かせるから、その司書のおばちゃん、捕まえといて…何か怒ってるみたいだけど大丈夫?」
「ROG。ってか、彼女を署へ連れて行きましょうか?ねぇおばちゃん、私と空を飛んでみない?」
「警部!異次元人の総領事館から負傷したボディガードの情報が来ました!」
"リアルの裂け目"からアキバ入りした異次元人は秋葉原デジマ法に拠り登録され基本的人権を保障される。
一方、総領事館では、そうした基本情報だけでは知り得ない詳しい経歴などもデータベース化しているのだ。
「本名ロホス・ラロワ。異次元にある裏アキバのストリートギャング"18丁目ヲタクス"のメンバーで、逮捕歴はテンコ盛り。ってか、警部。エロボの部下の大半は前科者ですね…え。何?ジャドーのパツキン姐さん?」
「新年度からジャドーじゃなくてSATOです!誘拐犯は、ナゼ携帯がウェブLINEだと知ってるのかしら?」
「もっともな疑問だわ、ルイナ」
またまたルイナがオンラインで話に割り込んで来るw
「警部。従来の電話だと電話料金がかかるのょ」
「だから、警察は電話料金の支払いに使われたクレジットカードから犯人を追うのが常套手段なの。え。 IP電話って料金がかからないの?」
「インターネットの使用料はかかるけど、ソレって契約次第で"電話料金"としては明示されないから( IP電話とか概念的に全く理解が出来て無いラギィにはw)追跡は難しいカモ…」
ルイナの逝わんとするコトがヒシヒシと理解出来て、フト黙り込むラギィ警部…と、その部下達…と、捜査本部の全員w
オズオズと若い刑事が口を開く。
「そんな小難しいIP電話を何でボディガード達は使ってるのでしょう?まさか電話料金節約のためとも思えないし」
「ソレもそーね。ルイナ、 IP電話ってどうやって使えるようになるの?電話屋さんに電話スルの?」
「だから、電話屋さんじゃナイのょ。サイバーショップで対応ソフトをスマホにインストールするの…あ、ラギィ(と捜査本部の全員w)。ちょっと向こうを向いてて…」
「え。ルイナ、何処を向くの?」
「あ、済んだわ。ちょっと通信法違反をしたので…異次元人ロホス・ラロワ氏は先週、パーツ通りのジャンク屋で格安ソフトをインストールしてるわね」
「え。先週?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1分後。大立者エロボは怒っている。
「ねぇ!確かにアンタは警官じゃないけど、やっぱりコレって家探しょね?アンタがメイド服着てるから掃除と思おうとしたけど、ヤッパ胸クソ悪いわ!」
「黙ってて!ホセカちゃんのためだから!」
「ってか、もし麻薬や音波銃が出てきたら…」
「その時は気絶してあげる…って言ってるソバからw」
ミユリさんから連絡を受けたエアリは、エロボ立ち合いでロホス・ラロワのデスクを令状ナシで"家宅捜索"している。
「ロホスとは"リアルの裂け目"を渡る前からツルんでた。アイツが私を裏切るハズないわ」
「あのね。もうアンタはストリート育ちの薄汚いゴロツキじゃない。タワマンの屋上にプール付きのペントハウスを構える大立者なの。彼がアンタをウラヤマシがっても当然でしょ?ソレがどーしてワカラナイかな」
「だって!車も食事も充分与えてるし!」
「公認会計士も?」
エアリは、ロホスの引き出しに入ってた帳簿を見せる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部でミユリさんとラギィの巨乳…いや、巨頭会談←
(ムーンライトセレナーダーは微乳設定です念のためw)
「ラギィ。ロホスのデスクからエロボの会社の納税申告や収支関係の書類が出た。恐らく誰かに渡してエロボの経済力を探ってる」
「え。ムーンライトセレナーダー、ありがとう。恐らく1時間で用意出来るギリギリの額を調べたのね?ソレで身代金がヤタラとハンパな額ナンだわ…彼が黒幕かしら」
「まさか。単なる実行犯でしょ。とりあえず、話を聞きに逝く?2人がかりなら…」
「あら。私が悪い警官役?」
不本意そうに口を尖らすラギィ警部。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕の目はモリン部長のたわわな胸の谷間に…
「マリレのコトで僕が心配なのは、彼女がある日、突然アキバに長く居過ぎたと悟るコトだ」
「彼女が悟る?」
「彼女は、1945年の陥落寸前のベルリンからアキバへ脱出して来たタイムトラベラーだ。シニカルになって当然だと思う」
「いずれマリレがそうなると?」
「恐らくヒドい経験がキッカケとなってね」
「確か…"時間ナヂス"のUFO型タイムマシンを撃墜したのは、貴方達でしたょね?
「ふーん良く知ってるなw」
「驚きましたか?なぜ私が知ってるかと思ってる?でも、私はちゃんと知ってるのょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"は、アキバに市場があった頃からの医院がイメチェンした病院だけど、今ではアキバの中核医療機関にw
「ボディガードの2人の内、1人はショットガン浴びて即死、もう1人はかすり傷。怪しまれて当然ょね?いくらもらったの?」
「何だ?俺とボスは"裂け目"を渡る前からのつきあいだ。ボスもお嬢のコトも大好きだ」
「ふん。犯人との連絡用に自分のスマホをIP電話にしたでしょ?ソレと、ボスの家のアンタのデスクから、ボスの納税申告書のコピーが出て来たけど」
手術後、ようやく意識の戻ったロホスからビシビシ"事情聴取"する"悪い警官役"のラギィ警部。
傍らでは"良い警官役"なのでメイド服のミユリさんがカツ丼を出すタイミングを推し量っているw
「…弁護士を呼んでくれ」
「良いわょ。右も左もワカラナイ新米の公選弁護人を呼んであげる。エロボは、アンタのために腕利きの顧問弁護士ナンか絶対に雇ってくれないわ」
ラギィは、ロホスと鼻と鼻がぶつかる距離でまくし立てる。
「黙秘スルなら構わない。でも、よく聞いて。25分で私達はアンタと誘拐事件を結びつけた。今日中には物証も集まる。ワカル?アンタを有罪になるの。だから、仮に子供が助かっても刑期は気が遠くなるホド長い。ましてや、死んだら…確実に死刑ね」
ロホスは、暫く押し黙り…やがて、歌い出す。
「…俺のせいじゃねぇ。ハメられたンだ」
「誰に?」
「中近東系のハードな2人組」
「ハード?」
「"裂け目"のアッチとコッチに前科がアル連中」
「名前は?」
「知らない。帳簿を渡した時を含め2回しか会ってナイ」
「アンタの死んだ相棒は知ってたの?」
「兄貴は正しかった。2人組が突然撃って来た。咄嗟に俺は死んだフリして助かった。でも、兄貴は…」
「あのね。その2人組は、自分の分け前が減らないよう、最初からアンタ達を消すつもりだったの。わかった?」
「そぉか。そぉだったのか…あの2人組は目的のためには殺しも平気でヤル…お嬢が生きて帰るコトはナイ」
「その時はアンタもね」
ココで、せっかくメイド服で来たミユリさんが溜め息。
「あらあら。全部悪い警官だけで済ませたの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、僕はモリンのたわわな谷間にも飽きてしまい…
「で、テリィたん。次はヲタッキーズのエアリだけど」
「彼女は…地球が冷え固まって以来、ずっとアキバに居続けてる"永遠の命"だ」
「ムーンライトセレナーダーとも何度か死闘を繰り広げてる」
「今はワダカマリはナイょ」
「ところが、彼女は、その気の遠くなるような人生を通じて、トラウマと呼ばれるモノを負ってナイの」
「うーん確かにソンな様子は無いね」
「そういう点をテリィたんも見習うべきだと思うの。学べる何かがアルカモ」
「なーるほど」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エロボの"会長車"は、大型よりもさらに大きいSUVで、この車なら軍用のハマーが体当たりしても大丈夫そうだ。
ガンガン!
分厚い防弾ガラスを叩く音がして、会長自らパワーウィンドを下げると…黒いランニングの下はタトゥーだらけの少年w
「親父が借りは返したって」
ぶっきらぼうに告げて、ヤタラ重そうでミリタリーなダッフルバッグをヨイショと渡すと、ニコリともせズに走り去る。
「私、何も聞かナイから」
「賢明ね。アンタ、大金って見たコトあるかい?」
「アトランティスが沈む時に王宮で」
実は、地球が冷え固まって以来ズッと生き続けてるエアリは真実を語ったのだが、何を勘違いしたかエロボは爆笑スルw
エアリの肩をバンバン叩くw
「で、いくらクスねたんだい?」
「まさか」
「やっぱり。ヲタッキーズって最高だわ!」
また爆笑w何がウケてるのか皆目ワカラナイ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
身代金の受け渡しを控え、緊張が高まる捜査本部。
「コチラ万世橋。5分でムーンライトセレナーダーとマリレが配置につく。私、ラギィは捜査本部で指揮を取るわ。ミユリ、テリィたんは?」
「ずっと留守電」
「かき入れ時に呑気な社長さんねw」
ソコへSATO司令部からルイナが割り込む。
「ねぇ聞いて良い?2億6380万円って、ズイブンと中途半端な額だと思わない?」
「大金ょ!でも…確かに、誘拐犯は事前にエロボの財務記録を調べ、慎重に額を算出した形跡がアル」
「でね。私、最初は心理学的意義を考えたけど、一括均衡を探ってたンじゃナイかって思うの」
捜査本部の全員がポカンと口を開く。代表してラギィ。
「何ソレ?美味しいの?」
「エロボが短時間で集められる最大金額を算出したワケ。コレって結構高度な思考がナイと無理カモ」
「つまり、ルイナは誘拐犯が系統的なアプローチが出来る思考をしてると言ってるワケ。この場合"ケーキカット問題"と呼ばれる手法が適用出来るわ」
会話に横入りし混乱に輪をかけるSATOマデラ司令官代理。
「ケーキカット?いよいよ美味しそうだけど…ねぇ今、エアリ達が身代金2億円を抱えて…」
「つまり、チョコとバニラの2層のケーキを2人でどうカットして分けるか、という問題なの。普通は、半分コだけど、1人がバニラ好きで、もう1人がチョコ好きなら、ケーキはバラバラなカットにスルのが実は1番公平。さらに3人でカットとなるとマスマス複雑になるわ」
「誘拐犯には2人組がいるみたいだけど、全員で何人になるかは不明ょ」
ルイナのお喋りは知的な奔流となり、ソレに踊らされるように、彼女はホワイトボードに難解な数式を描き連ねて逝く。
「不明でOKなの。出発点は2億6380万という数字。ソコから逆にたどる。少なくともソレがコトの発端でしょ?コレに、誘拐犯の2人組とボディガードの2人が関わるワケ」
「ボディガードは、ダマされただけみたい」
「でも、分け前をやると言われて協力したんでしょ?この場合、分け前は各人が負う危険と困難さの変数。つまり、この状況に対して分割選択の考え方とパレート最適性の原理が適用出来るの。さらに考慮すべき変数は、準備費用や逃亡予測、交渉の必要性や考えられる損失の想定など…」
「素晴らしい思考だわ、ルイナ。さすが、超天才!」
「理解者が1人でもいて助かります、マデラ司令官代理!私は1人じゃない!」
突然、捜査本部のモニターに数字が並ぶ。
「ルイナ、ありがとう。で、その数字は何?美味しいの?」
「誘拐犯が欲している実際の金額。今、解析したてのホヤホヤ」
「ソンな金額を知って何か役に…ちょっと待ったー!」
ラギィ警部の大声に全員が振り向く!
「1億6517万円?その数字、何処かで見た気がスル…ねぇ!申告書の1120を見せて。確か20-bだったと思う…ソレょ!」
モニターに別の資料がUPされる。
「エロボが立ち上げた"永久機関レコード"創業当時の初期資本金の金額だわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「了解。わかりました」
誘拐犯の指定場所へと向かうSUVの車内。スマホをしまいながら、エアリは正面のシートに座るエロボに話しかける。
「1億6517万円って何か思い出す?」
「ハシタ金?」
「あのね!ソレじゃ教えてあげるわ。アンタが"永久機関レコード"を創業した時の資本金ょ」
「だから?」
「その投資を取り返したがってる奴に心当たりがアル?」
「…ねぇアンタ。私をハメる気?」
エアリは、溜め息をつく。
「あと2分ょ。ソンなヒマはないわ」
第3章 2年目のダンテス
美人は3時間で飽きる。巨乳の谷間は30分で…
「地球が冷え固まって以来の経験ナンて、僕には想像もつかナイな」
「でも、テリィたんだって、AMCのタイムトンネルで、夏への扉を開いたコトがアル」
「ホントに良く調べてルンだねwでも、永遠の命からはホド遠いさ」
「遠さは意味がナイ。距離の概念は関係ナイから」
「だとスルと…自分はマシと思いたい気持ちってコト?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
誘拐犯の指定場所まであと1分を切ったSUVの車内。
「あくまで"例えば"の話だけど…」
オズオズと口を開くエロボ。
「昔、東秋葉原でコンな話を聞いたコトがアルわ。美女2人組のレオタード強盗団が東秋葉原の地下銀行に押し入った」
「へぇ。自分で"美女"という辺りがもうアウトだけど、あくまで"例えば"として聞くなら、その"もう1人"の名前は?」
「ナシラ・ドゥケ。地下銀行での身入りは予想以上だった。期待してたよりズッと多かったわ」
「まさかソレが1億6517万円だナンて言わないでね。あくまで"例えば"だけど」
「OK。だから、あくまで"一般論"として、明後日の方を向いて言うけど、こんなコトが出来るのはナシラだけ。ホントに頭の良い女で、警報解除も彼女。緻密な計画を練るのが得意ナンだけど、ホスト遊びで身を滅ぼした。半年で分け前を使い切り、別の強盗で捕まった」
「その一方で、相棒はレコード会社を興して大当たり?"例えば"の話だけど」
「うーんホントに"例えば"だけど、元手を倍に増やした"誰か"は全てが順調。出所した方の"誰か"は、ソレを見て金を無心に来る。あの口の聞き方…普通ならその場でブッ殺されても仕方なかった。そうならなかったのは"誰か"が良い母親になりたいと誓った直後だったから。ほどなく、その、もう片方の"誰か"は東秋葉原から追放…されたような気もスル。あくまで"例えば"2年前ぐらいに」
「ヤレヤレ。2年の間、恨みmaxにして計画した復讐だったワケ?恐ろしく厄介なヤマじゃナイの、コレ!例えば!」
「何のコト?あくまで"一般論"だけど、ホセカを取り戻したら、東秋葉原の果てまで追いかけて息の根を止めてヤルわ」
「外でやって!東西南北問わズ秋葉原にいる間は、誘拐犯の逮捕は警察に任せるの。コレが最強の"一般論"!」
SUVが急停車。エアリのスマホが鳴る。
「エアリ、準備は?」
「ミユリ姉様?OKです」
「公衆電話にラギィが盗聴装置をつけた。音声は共有スル。電話が鳴ったら直ぐに出て」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
今どき珍しい街頭の公衆電話が鳴る。
「ママ?」
「ホセカ!大丈夫ょ何も心配ナイから…ナシラ!娘に手を出すな」
「あら?お偉い会長サマが覚えてたとは驚きね。やっと気がついた?走って3分でパーツ通りへ行って。また電話スル」
またまた一方的に電話は切れる。
「アクセスポイントは…パーツ通りです」
「容疑者ナシラはパーツ通りょ!マリレ、向かえる?」
「ROG」
一方、公衆電話を切ったエロボにエアリは…
「私ならストレッチが済んでるから」
「何の真似?」
「あのね。アンタが行けば殺されるの。でも、私なら金の話で済む(カモしれないw)。幸い、さっきの電話で自己紹介も済んでるし」
「待て。代わりにアンタが殺されるカモしれナイょ!」
マリレは答えない。2億円入りのダッフルを肩に走り出すw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通りは昭和な電気街の風情を残すレトロな街並みだ。
角の煙草屋跡には自販機が並ぶが、その狭間で電話が鳴る。
走り込んで息の切れたエアリが出る。
「あら。ヲタッキーズなの?あの腰抜け会長に泣きつかれたのね?でも、アンタが出て来るのは計算済みょ」
「ホセカちゃんと話をさせて」
「イズミ親水プラザ。2分後ょ。魔法は使うな。ソレと目障りなチェックのメイド服を追っ払って。次に見かけたらガキを殺して姿を消すわ」
例によって、一方的に電話は切れる。
「マリレ、尾行がバレたわ。とりあえず下がってパーツ通りでビラでも配ってて。たくさんいるメイドに紛れて」
「ROG。姉様、すみません」
「OKょ。次は私が逝きます。ルイナ、ターゲットは絞れた?」
「和泉橋の北詰め…アクセスは恐らくソコから」
「私達をソコへ誘導してるのかしら?」
「もっと難解なプロセスだと思う。何らかの論理体系に基づいてる。彼女、几帳面で抜かりがナイわ。進む道さえ誤らなければ、優れた数学者になれたモノを」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
脚もパンチラも谷間も見飽きたが…
「でも、まだ話してない人が1人いるわね」
「ルイナのコト?」
「うーん惚れっぽい超天才という噂はまた別の機会に…ミユリさんのコトょ」
「特に仕事に支障は出てナイと思うけどな」
「彼女とは、彼女がスーパーパワーに覚醒スル前からのおつきあいね?」
「…YES」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
殺気立つ捜査本部。
「容疑者ナシラは、既に3カ所移動を強いてる。目的は何なの?」
「尾行をまく?」
「なら、この先も行く場所や通話が増えるのかしら。安全と分かるまで移動が繰り返される?」
その時、会話アプリでルイナが割り込む。
「迷路だわ!彼女は迷路を作ってる!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
イズミ親水プラザは、神田リバーに向かってスリ鉢状に下る親水エリアでアキバのスケボーのメッカ。
ココはスケボーギャング"ベジタブラ7"の縄張りだが、リーダーのミサラに話を通してフリーパス。
公衆電話が鳴る。
「ヲタッキーズ、ダッフルを神田リバーに投げろ。ただし、手を離すな」
どぼーん!
「どう?少しは休めた?」
「バッグが重くて手が千切れそう。離してもOK?」
「バッグをリバーから引き上げて。2分で中央改札。魔法は使うな」
唐突に電話は切れる。
「エアリ、大丈夫?」
「魔法さえ使えれば飛べるのに…しかし、何のために神田リバーに?」
「多分GPSを壊すためだわ。頑張って」
濡れてズッシリ重いバッグを背負い、再び走り出すエアリ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
脚、谷間と来て次は仕方なく顔を見る。確かに美人だけど…
「しかし、ミユリさんはスーパーパワーに覚醒し、ムーンライトセレナーダーとなった。どんな気分なの?毎回推しに助けられるのは?」
「毎回、事件を食い止めるために必死さ。相手は異次元人の殺人鬼や強盗、テロリスト。より早い解決のためにはスーパーヒロインの投入は不可欠だ」
「つまり、必要悪なの?」
「何で"悪"かな?確かに、スーパーヒロインの前で、ヲタクはいつも無力だ。時に、辛かったし良い気持ちがしなかったコトもアル」
「ムーンライトセレナーダーに、そう言いましたか?」
「え。何で?」
「では、何て話したの?」
「覚えてないなw要するに、そういう話だったとしか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部にアプリ経由でルイナの声が響く。
「つまり"論理的迷路"よっ!この場合、指定場所に着くとルールが変わって行く。ねぇビー玉落とし、やったコトある?」
「おもちゃの?」
「アレは、数学的には典型的な状態図なの。ビー玉を落とすには2つの動きが必要。その2つの動きとはx軸とy軸。穴に落ちるようビー玉に速度や傾きを加えるワケ。そうしなければ、ビー玉は穴に落ちナイ」
「その場合、プレイヤーは私達で、穴は逮捕?」
「概ねYES。そして、状態図を使うとスルと、当然統一モデリング言語を使うコトになるワケ」
「ソレ何?やっぱり美味しいの?」
ルイナは自信満々だ。
「ねぇ迷路が解けるカモしれない。そうすれば、終点が判明スル可能性がアルわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
メイド服で全力疾走のエアリがJRの中央改札に駆け込む。
「何処?何処なの?」
心を落ち着かせ、雑踏に耳を澄ます。微かに聞こえるコールは…待合室のベンチの下だ。スマホをテープで止めてアルw
「来たわょ」
「イヤホンを外して。ココからはバッグアップなしょ…え?え?ムーンライトセレナーダー?」
「いいえ。アキバに良くいる(コスプ)レイヤーさんです。じゃエアリ。頑張って」
雑踏から現れたムーンライトセレナーダーは、大胆にも白のヘソ出しセパレートのコスプレだけど…再び雑踏に消えるw
まぁ光景的にはアリだ。ココはアキバだから←
「ムーンライトセレナーダー、エアリを追って!貴女が離れたらエアリのカバーがいなくなるわ」
「ダメ!ミユリ姉様、エアリを追いかけてはダメ!」
「ルイナ?エアリをロストするわ!」
「大丈夫。エアリとナシラの行く先はわかったから!」
「何ですって?」
「そして、次が…この迷路の終点だから」
「そんな!もし違ってたら?」
ラギィは気色ばむが、ルイナは涼しい顔だ。
「私がエアリを死なせると思う?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
案の定、あっさり顔も見飽きたので、次は瞳を…
「TOと推しとの関係は?」
「今のトコロ、出禁は食らってナイな」
「ビジネス上も?」
「全く問題ない。時々尻に敷かれてる気分にナルけど、多分気のせいだ」
「そっか。やっと報われたのね、テリィたん。昔は推しに振り回されてたけど、今は推しを使う側になった?」
「うーんソレは違うな」
「テリィたんは、ようやく推しを支配する立場をゲットしたのょ」
「ソンな気はナイ。なぁ全然わかってナイょね。ミユリさんは良く出来たヒロインだし、何より僕はアキバのメイドさんを尊敬してる。ソレに、そもそもTOに限らず、ヲタクは最初から推しに魂を捧げてるのさ」
第4章 地下ライブハウスの対決
"たんぱビル"は元は低層の商業ビルで、アキバの市場時代には恐らく時代遅れな洋品店とかが入ってた昭和な物件だ。
いつか地下アイドルが出入りスルようになりショーウィンドウ越しにライブが見れたりしたが、今はシャッターを閉鎖。
「ミユリ姉様?なぜ?」
「ルイナが教えてくれた。はい、音波銃」
「駐車場に例の軍用ハマーが…」
"たんぱビル"の地下へと降りる階段の影に、ムーンライトセレナーダーが隠れている。
彼女から受け取る、銃口がラッパ型に開いた音波銃を太腿のホルスターに収めるエアリ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「警部!メイド通り"たんぱビル"の駐車場に軍用ハマー発見。突入します!全員、対スーパーヒロイン戦用意!」
万世橋の警官隊が一斉に音波銃を抜くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エアリが地下への階段を降り切ると、正面のライブステージからヒラヒラワンピにミニハットの地下アイドルが現れる。
「ライブでもやるの?ナシラは?」
「楽屋にいるわ。私はコロナ。ねぇ覚悟は出来てる?」
「モチロン…でも、マスクして」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
隊長が前衛の肩を叩く。突入チームが一斉に動き出すw
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「運転席、クリア!」「後部座席、クリア!」
「トランクは?…ラギィ警部、ハマーには誰もいません!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、リアルタイムの地下ホール。
「ねぇメイドさん!コッチに来て!私に会いに来て!」
「ホセカちゃんは無事なの?」
「ソレは良いから!並んで!物販みたいに」
そう呼びかける一方で、袖に向かって手招きスル仕草。
ステージに向かっていたエアリは、フト歩みを止める。
「ダメ。止まらないで!私に会いに来て!」
「コレ以上は、ホセカちゃんの無事を確かめてからょ」
「…お迎えが来たわ。お顔を出して」
地下アイドルが舞台挨拶のように大袈裟な仕草をスルと、上手の袖からチョコンと顔を覗かせるホセカ・ンティ、11才。
「ホセカちゃん!今、助けてあげる!」
「メイドさん。ステージへ上がって」
「2億6380万円が水を吸ってズッシリギッシリ重いンですけどwヒップを推してくれナイ?」
パンツ丸見えでヨイショとステージ下手に上がるエアリ。
上手に陣取る地下アイドルとホセカ・ンティと対峙スル。
「ソコでSTOP!バッグを開けて!」
エアリは、肩のバッグをドサリと落とし、両手を挙げたママゆっくりと屈んでから、バッグを開けると…2億6380万円w
「メイドさん。もっと良く見せて」
エアリがバッグを広げて、地下アイドルが身を乗り出した瞬間…銃声!背中から撃たれ地下アイドルはバッタリ倒れる!
「ホセカちゃん、動かないで!」
地下ホールに幼女の悲鳴w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部も大騒ぎだw
「誰?いったい誰が発砲したの?」
「地下アイドルは?エアリは助けに行ける?」
「ダメ!未だ動かないで!」
SATO司令部のラボから、ルイナが会議アプリで割り込む。
「ルイナ!でも、ココが迷路の終点なんでしょ?ココが貴女のデータ解析の結果なのょね?」
「ラギィ、違うの。コレは最後のゴールじゃなくて、最後の障害、ラスボスの登場ょ。ナシラは、地下アイドルを射殺して取り分を増やした。計画を変更して、身代金を独り占めしても自分が安心出来る戦略を実行してる」
「ソレはわかったけど、もう出方を待てないわ!」
「ダメ。待つしかないの。直ぐ動きがあるハズ」
ステージの上では、ホセカちゃんの悲鳴が泣き声に変わる。
「ホセカちゃん、大丈夫?私、ヲタッキーズのエアリ。貴女をオウチに帰すってママと約束した。だから、必ず助ける。貴女を守ってみせるから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
彼女の脚も谷間も顔も瞳も見飽きて…僕は何をしてルンだ?
「ミユリさんは素晴らしいメイドですか?」
「今までで最高の推しだ」
「でも、彼女を信じてナイ」
「え。何で?」
「感情に溺れる超天才。生真面目過ぎる魔法使い。ナヂスのトラウマを抱えるロケット娘。ソレでも、テリィたんはヲタッキーズを信用してるの?ソレは…テリィたんにとって都合が良いから?そうょテリィたんはヲタッキーズを信じてナイ」
「え。そーなの?」
「じゃ何なの?ヲタッキーズの社長はヲレだ、社長は信頼スルんじゃなく、されるのが仕事だって思わない?」
「別に」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
背中を真っ赤に染めて倒れた地下アイドルのスマホが鳴る。
エアリは慎重に間合いを取り、死体を転がしスマホに出る。
「もしもし」
「狙撃用の音波ライフルで狙ってる。2人とも射程内ょ。お金を置き、入った階段から出てって。妙な真似をすればガキから撃つ」
「わかった。私は丸腰ょ」
ステージ上をユックリ歩いて、泣き腫らしたホセカちゃんに近づくやヒシと抱くエアリ。覆い被さるように抱き締める。
「さぁココから出ましょ。私にしがみついて。離れナイで」
その様子を音波ライフルの照準スコープに捉えるナシラ。
スコープの十文字をホセカちゃんの頭にピタリと合わせ…
その時。
「ナシラ・ドゥケ!音波ライフル銃を置いて!」
目の前にムーンライトセレナーダーがいる。必殺技"雷キネシス"のポーズ←
慌てて照準に目を戻すが、スコープ一杯にエアリが幼女に覆い被さっているw
「今すぐ引き金から手を離すのょナシラ!」
舞台袖まで逃げ果せるエアリ達と入れ替わりに万世橋の警官隊が突入して来る。
ロケットランチャー、音波銃、光線銃、熱線銃をナシラのいるPA卓へ向ける!
「ナシラ。居場所はわかってる。音波ライフルを寄越して。終わったの。何もかも」
「ムーンライトセレナーダー。2年ょ。全て2年越しの計画だったのに!」
「次の計画には20年かけられるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後は…モリンが僕を見詰めるw
「テリィたんは、スーパーヒロインと共にヲタクになった。会社では世界初の宇宙発電所長になったけど、秋葉原でこそ、自分本来の道を見つけたと思ってる。そして…ソレを亡くすコトを何より恐れてるワケ」
「やれやれ。カウンセリングって、受ければ気分が晴れるモノだと思ってたょ」
「スーパーヒロインとホントに話をしたいのなら、先ず真実を受け入れて認めるコトょ。テリィたんが恐れるのは、自分が秋葉原にいない間にヲタッキーズがヘマをするコトではなく、ヘマをしないコト。テリィたんは、秋葉原にいてもいなくても同じ。ソレがテリィたんの不安」
「確かに、音波銃とIDさえあれば、ヲタク1人が消えても代わりはいくらでもいるからね。"神は天に在りて世はコトもナシ"だ。まるでNERVさ」
「ヲタクに限らない。人間は、誰でもそーなのです。テリィたんだけじゃない。姿を消す前に何が出来たか?そのコトが意味を持つ。重要なのは、落ち込む前に何をすべきかです。貴女は、ムーンライトセレナーダーを、そして、ヲタッキーズを鍛えあげた。そして、難題解決のために超天才を抜擢し、見事な結果も出してる。テリィたんは、失うコトを恐れるのではなく、今の成果を認めて楽しむべきなの。ヲタクの目を輝かせるのはテリィたんょ!」
僕がうなずけば、何となく全てが終わりそうだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ペントハウス専用のエレベーターのドアが開く。
ジョギングウェアのママで、幼女が駆けて逝く。
「ホセカ!ホセカ、大丈夫なの?」
「うん。ママのコト、信じてたょ!」
「ホント?」
幼女は、メイド服のスーパーヒロインを指差す。
「ヲタッキーズが守ってくれたから!」
エロボは、エアリと向き合う。
「コレでまた、アンタとは明日から敵同士だね。でも、アンタには借りがアル。必要なら、いつでもエロボ・ンティの名前を出して。私をアンタの力にならせて」
「…とりあえず、明日会おう?敵同士だか何だか知らないけど。ホセカ、元気でね!」
エアリは、ホセカちゃんの頭を抱く。
「ありがとう、ヲタッキーズのお姉ちゃん!」
続いてエロボがホセカちゃんを抱き締める。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部に爆笑が渦巻く。
「迷宮?ソンなモノに私の命を預けたの?」
「でもね!リスクは、ほぼ100%なかったコトを確信スルに足る条件が…」
「待って、ルイナ!"ほぼ"って?」
アプリで割り込むルイナに食ってかかるエアリにまた爆笑。
「ねえねえ。2人共、黙ってたの?ミユリ姉様!マリレ!」
「だってね。姉様が1番のリスクは、エアリを1人にしたコトだって…」
「2億円を持たせてねw」
最後は、その場の全員が異口同音となり、またまた大爆笑w
「しかし、毎度ながらルイナのデータ解析は完璧。終点が"たんぱビル地下のPA卓"とピタリと当てたわ」
「あのプロセスは芸術的だった。学会誌に投稿すべきょ。楽勝で博士号が取れる…あ、もう7つも持ってるかw」
「映画化を期待してるわ!」
また爆笑…僕がセラピーから戻ったのは、このタイミングw
「テリィたん!こら!何度もメールしたんだぞ!」
「あ。電源入れ忘れてた。で、何かあったの?」
「別に。いつも通りの秋葉原でした。社長用に報告書をあげときましたから」
やっぱり何やらおかしい。極めつけは…
「さ、ランチの時間ょ!ダカレー食べる人?おごるわ!」
「ええっ?エアリ、太っ腹!記録しとかなくちゃね!」
「ルイナ!コレって"例外的事象"って奴かしら?」
生真面目なルイナは、心底驚いているw
「実は私、理論上、真のランダムってアリ得ないと思っていたの…でも、秋葉原にはアルのね?」
「おーい。首相官邸最年少アドバイザーの超天才がお困り遊ばしてるぞ!国家の1大事だ!」
「ルイナの護衛部隊は全員出撃!戦闘ヘリを飛ばせ!」
再び爆笑しながら、マチガイダサンドウィッチズに繰り出して逝くみんな。
僕は、何となく気後れしてたら、ミユリさんが振り返り、僕の背中を押す。
「今回は…テリィ様の苦手な地下の箱でしたから」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"迷路"をテーマに、元ギャングで異次元ヒップホップの大立者、その誘拐されてしまう娘、娘のボディガード、高度な論理迷路を構築スル誘拐犯、ジャドー改め南秋葉原条約機構の心理作戦部長、ヲタッキーズに超天才、敏腕警部などが登場しました。
さらに、宇宙勤務後のセラピーで明らかになる主人公の心象などもサイドストーリー的に描いてみました。
なお、秘密防衛組織ジャドーを南秋葉原条約機構SATOへ発展的改称しました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、6波コロナまんぼうが明け昭和通りに新しいマックが開店した秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。