表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/63

秋咲の薔薇

 帰りの車の中で、サフィラスは落ち込んでいた。

 辺りは青と白の2色に染められていた。日が昇る直前の色だ。


(僕は、姉様のことを愛しているはずだ。それなのに、ルウチと……)


 頭を抱え、全てがなかったことになるよう願った。

 しかし夢ではないらしく、車はあっけなく城についた。


 門衛塔を抜け、大階段の前で車から降りる。

 早朝特有の、澄んだ空気に満ちている。

 見上げた王宮は、大きく高く、威圧に満ちていた。


 謁見の間を通り過ぎ、中庭に入る。

 ダリアやコスモスが美しく咲いていた。

 秋咲の薔薇の前で足を止める。真っ直ぐ自室に戻る気分になれなかった。

 庭の隅の、皆に忘れ去られたような場所だ。


 ここなら誰にも見つからないだろう。

 花壇の縁に腰をかける。暫し薔薇を見つめて呆けた。


(姉様を裏切ってしまった。僕はもう、姉様の側にいることは出来ない)


 涙が一粒こぼれた。


(ずっと姉様の隣に居たかった)

 この世で一番大切な場所を、自ら放棄してしまった。


 幼い自分はもういない。

 2度と訪れることのない幸福な刻を想って、サフィラスはひたすらに涙した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ