第四話 親子の再会
「久しぶりじゃな、勝頼。元気にしておったか。」
俺が座る前にいきなり話し掛けてきた。
「はっ、日々鍛錬を怠ることなく勉学に励んでいる所存です。父上におかれましてもお体の…」
「あーよいよい。儂はそのような堅苦しい挨拶は嫌いじゃ。父子の仲であろう。もっと気楽にせい。」
目の前に武田信玄が座っていて気を許せる奴なんている訳ないだろ。俺は内心ツッコミを入れる。
そりゃあ、この記憶を得る前は立派な父親という憧れの存在だったが、今となっては歴史の教科書に載ってる畏怖すべき存在である。ただの怖いおっさん。
「どうじゃ、高遠の地は慣れたか?」
そういえば、どうして今自分が高遠を治めているかという説明を忘れていた。
元はと言えば、俺の母親が諏訪氏という家の出身である。
武田と諏訪は一時同盟関係にあったが、それが悪化。
最終的に諏訪氏は滅びたが、それを父上が復興。
その当主として俺が据えられ、高遠の地を治めることになった。
だから、今の俺の名前は諏訪勝頼だし、どう転んだら次期武田家当主になるか見当もつかない。
「いえ、恥ずかしながらあの寒さに慣れませぬ。」
「ほう。甲斐の地より寒いか。」
「風が向こうの方が強うございまする。」
「・・・・・・・・・」
沈黙。
思ったけど、こんな感じの会話って戦国の世も令和の時代も変わんないよな。
なんか初対面の社会人同士みたいな会話。タメ口なんて聞いたらどうなるんだろ。
一時間後にはあの世行きかもな。
んなことよりも、早く呼び出した訳が知りたい。
まじで、校内放送でワケも分からず先生に職員室に呼び出された時の気分だ。
「どうして、いきなり呼びつけたか じゃろ?」
「えっ」
思わず声に出てしまったかと思って焦った。
知ってか知らずか、先ほどまでの固い表情を少し崩して
「なぁに、そなたに初陣を果たして貰おうと思っただけじゃ。」
「う、初陣?」
「ああ、そうじゃ。上野国箕輪城、長野氏の城じゃ。
敵を殲滅し、首級を持って参れ。」