プロローグ
勝頼は16歳という設定です。
思い返せば、あの時だった。
「重政、儂の剣の腕も遂にここまで来た。本気でかかって参れ。」
「それは、若様。なんと心強いことか。では、この重政、手加減は致しませぬぞ。」
「よかろう。それこそ武士というものよ。」
「では、参りますぞ。」
ズザッという砂を蹴る音とともに、一筋の点かのような長い棒切れが迫ってくる。
「ちょっt、ちょっ」
その刹那。
今更止めても遅い。一刀両断とはまさにこのこと。真剣でないだけましである。俺は見くびりすぎていたのかもしれない。やはりこの爺は強い。
俺は一瞬にしてなぎ倒され、地面に思いっきり頭を打って気を失ってしまった。
…どれくらい、気を失っていたのだろうか。目を覚ました時には変な違和感があった。
あれ、俺確か自転車を走らせていて、トラックと鉢合わせるようなかたちで…
もちろん、分かっているだろうが、この時代に自転車、トラックなんてものはありゃしない。
起き上がろうとすると激しい頭痛と共に、それまでの記憶が一気に脳裏に浮かびあがってきた。
さっきまで重政と剣術の稽古をしていて倒され気絶したこと、それと同時に自転車で走行中にトラックに跳ねられ吹き飛ばされたことが。
激しい頭痛がだんだんと収まるとともに、一つの言葉が思い起こされる。
「あれ、もしかして転生しちゃった?」