表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クルスの調べ - Side Story -  作者: 緋霧
その時3班は - レオン -
6/24

Side-1

本編閑話「その時3班は」をレオン視点から描いた物語です。


全8話。

 俺はシスタスの武術学校を卒業した後、デッドラインの討伐隊を経て騎士見習いとなった。


 騎士見習いは、2年程度ベリシアの各地で騎士の補助などをして経験を積み、その後入団テストを受けて騎士へと登用される。

 この入団テストで落とされることは滅多にないので、2年の騎士見習い期間を無事に過ごせれば騎士になれる見込みは高い。


 俺はたまたまデッドラインの駐屯地へ派遣され、ここで騎士の補助をすること1年。

 前回くらいから、一つ下の後輩たちが討伐隊へ参加してくるようになった。

 と言っても、実はあまり討伐隊のメンバーと顔を合わせることはない。

 騎士見習いの主な役目は駐屯地付近の見回りや、治癒術師長が1人でやっている診療所の手伝いで、討伐隊に欠員が出た時にのみその補充要員として討伐に参加する。

 怪我をして診療所に来たりとか亡くなったとかない限り、どの班に誰がいるのか知る機会はない。

 だから、あの日までパーシヴァルがこの討伐隊に参加していることも俺は知らなかった。






 武術学校では研究室という名の道場に所属している人が多い。

 これは強制的なものではなく、ただ同じ流派だったり気の合う仲間だったりが、互いに武術を研鑽し合うために授業終了後に集まって活動をするものだ。

 俺とパーシヴァルは同じ研究室で6年を共に過ごした。

 パーシヴァルは両親とまだ小さい弟や妹が何人かいて、家計を支えるために騎士を目指していた。

 研究室に入ってきた時から俺が卒業するまでその志は変わらず、いつでも真面目に授業にも研究にも取り組んでいた。

 一言で言えば堅いやつではあったが、先輩の俺から見ても尊敬に値するような、模範的な生徒だった。


 あの日、3班が討伐から戻ってきた時分に駐屯地が慌ただしくなった。

 そういう時は大体とんでもない怪我をしたか、任務中に死亡したかのどちらかであることが多い。

 今後の動きを把握するためにもその様子を見に行って、俺は目を疑った。


 パーシヴァルが葬儀場へと運ばれて行っていたのだ。


 葬儀の準備も騎士見習いの役目の一つだが、俺はショックで手につかなかった。

 今この駐屯地にいる騎士見習いでパーシヴァルと直接面識があるのは俺だけだ。

 他の騎士見習いはそんな俺を気遣って故人の側にいてやれ、と俺にパーシヴァルと別れるための時間をくれた。

 この討伐隊にパーシヴァルが参加していて、しかも志半ばで任務中に死亡したなんて、急すぎて受け入れられなかった。


 だが、パーシヴァルの代わりに騎士見習いの誰かが補助要員として入ることは決定事項ではあるので、俺はすぐにヴィクトール隊長の元に行き、3班への配属を志願した。

 ヴィクトール隊長は何も聞かずにそれを承諾してくれた。

 そしてその日の夜に3班のメンバーにガヴェイン班長から紹介されることとなる。


 この3班が少し特殊であることは知っていた。

 前3班の治癒術師が、瀕死の重傷を負ったメンバーを治癒するためにリミッターを外して死亡したのだ。


 治癒術師の欠員というのは今までにも類を見ないことだった。

 治癒術師自体が希少であるのに、このような任務に志願する者も少ないので、代わりの人員の確保に労を要しているようだった。

 しかしながら討伐隊において重要である治癒術師をいつまでも欠いている場合ではないと、ひとまずカルナの騎士団から治癒術が使える冒険者を派遣するとの知らせが届いた。

 この冒険者は次の討伐隊の隊長を務めるヴィクトールさんの知り合いらしい、とだけ聞いていた。


 その冒険者がカルナから駐屯地に来るまでの数日、治癒術師長であるリベリオさんが3班の治癒術師として緊急で入っていた。

 そうなると駐屯地に在中している治癒術師は1人もいなくなる。

 リベリオさんは3班に入りつつも任務外で駐屯地の治癒術師としての役目も兼任していた。

 そこまでの重傷者もいなかったとは思うが、その負担はそれなりだったことであろう。


 実は亡くなった治癒術師とリベリオさんは恋仲だったと聞いた。

 悲しむ様子も我々には見せなかったし、3班の任務もいつものような憎まれ口を叩きながらこなしていたが、恋人が命を懸けて助けたメンバーと共に任務に就かなければならなかったなんて、その心中は複雑だったに違いない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ