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序章
「雪見だいふくってなんで雪見だいふくって言うのかな。」
雨の振る中庭を見ながら彼女は呟いた。
「それは…雪に見えるからじゃないです?」
考えるそぶりをしてから僕はなんの捻りもない答えを出した。
「ふうん…雪見たことないから分かんないや。」
狭い部屋の中で僅かな緊張が走る。もごもごと口を開いては閉じてを繰り返して、彼女に掛ける言葉を探すも、僕の拙い語彙では見合う言葉も見つからず、あえなく彼女と一緒に空を見上げることしかできなかった。なんとなく気まずさを感じてちらりと彼女の方を見ると、彼女は僕を見て嬉しそうにころころと笑っていた。