7.62ミリ特殊弾改2
核弾頭を装備した弾についての説明です
「気を付け」
「敬礼」
「直れ」
「よし、これから64式小銃改3の最大の特徴である、特殊弾改2について説明する。なお以前も述べたように、一切のメモはこの教場外に出してはならない。
また特殊弾について一切の口外はしてはならない。事情はいうまでもないな?」
「では、このフィルムからみて欲しい」
暗くなった教場の中で映写機が回り始める。
モトネタはアメリカ陸軍の訓練フィルムのようである。
オープニングは、アメリカのネバダ州のテストレンジらしく、複数の陸上兵器が展示されている。
巨大なアトミックキャノン。
有名なドイツの列車砲を参考にしたと言われている、280ミリのでっかい弾に、W9核弾頭を仕込んだものを撃てるやつ。
その横には、オネストジョンとその改造型でW7核弾頭装着可能。
さらにリトルジョン、こいつはオネストジョンから派生して開発された短射程のロケット弾でW45核弾頭を搭載できる。
そしてディビークロケット。
W54核弾頭を装備可能な無反動砲。
どうやら、アメリカ陸軍が戦術的に利用できる核兵器の展示のようである。それがさらに技術の進歩で小型化が進んでいる様子を示しているようである。
そして、リトルジョンの発射台の横の作業台に置かれた、一丁のM14小銃も見える。
訓練フィルムの中で、説明役の教官は技術の進歩から、とうとうこのライフルにまで核兵器が使えるようになったと説明。
核物質としてカリホルニュウムが使用されている、とかで詳細は省略されている。
教官は特殊な弾薬ケースから、数発、弾薬を取り出し、M14の弾倉に装填。
そのあと、安全装置を再度確認してから、用意されている掩堆壕に通信機材を持った連絡員と共に入り、特殊ゴーグルを用意して指示を待っ。
「射撃用意」がかかり、壕から身をのりだし、特殊ゴーグルを装着してから射撃姿勢を取る。
目標は約800ヤード先のコンクリート造りのバンカーである。
識別や記録のために、白黒のストライプが入っている。
構えたM14ライフルには狙撃用スコープが装着されている。
「撃て」の号令がかかり、教官は三発連射する。この弾はどうやら表示剤を仕込んであるらしく、標的付近に三発の発光が見える。
ナレーションによると、零点規正をするための三発らしい。
そして素早くクリック修正した後に、次弾発射、すぐ掩堆壕の影に入る。
意外に近い距離に、閃光が上がり、火球が拡がり、特有のキノコ雲が小さいものながら上がる。
フィルムは一旦ここで終わり、数時間たった後に防護服をきた兵士達が、目標にしていたバンカー付近にいる風景を写している。
バンカーがあったはずの場所は、数10メートルの穴に変わっている。
ここでフィルムは終了して、カーテンが開けられた。
「これが今回、極秘に我が自衛隊が導入する特殊弾改2、アメリカ流に表現するとW54Jとなる。
なお、フィルムの中で出ていたデイビークロケット無反動砲も限定的にだが、普通科に配備予定である。
ただしこちらについては、敵に対して秘匿しにくいために、通常弾頭である粘着榴弾、対戦車榴弾のみ導入予定である。
(筆者注・この時導入されたデイビークロケットは後に東京に巨大な芋虫が南海から渡ってきた時に、東京タワー周辺で使用されている)
それでは、特殊弾改2についての概要を述べる。」
と、ここで教官は掛図をめくるよう助教に指示する。
図に示されているのは、普通の7.62ミリNATO弾、である。
但し弾頭に紅白に塗ってあるのが異様である。
「諸君も知っている通り、普通弾は無塗装、曳光弾はオレンジ、が塗ってあるのに対して、識別のために紅白の塗装がしてあるのが、特殊弾改2の識別点である。
また同時に使う、表示剤を詰めた表示弾は白青である。
これらは、1セットで特殊なケースに入れて交付される。
なお、小銃本体はスコープ付きである以外は特に変わるところはない。
緊急時においては、この弾が撃てる銃ならなんでも良い。
内部構造は、俺も知らん。これは、製造もアメリカであり、貸与されているだけであるからだ。
保管期限が来る前にアメリカ軍に返納して、再度オーバーホールしてからまた貸与となっているそうだ。
何か質問は?」
「はい!」
「何だ?」
「この弾頭の使用される戦術的状況についてですが、射程などから見て、少なくとも航空部隊や海上部隊が攻撃できないような状況で、最後の切り札的に使われるように思われるのですが?」
「よく見たな。貴様の言う通りだ。
以前の戦訓を分析すると、仮にかっての戦艦大和で、主砲斉発しても無理だったろうと言う結論が出ている。
また、航空自衛隊がFー86Fー40を使い、LABSでMk7核爆弾をぶつけていてもも、直撃しなければ、効果がなかった可能性も研究結果として出ている。
つまり、敵である怪物が気づかないようなところから、小さくても良いから、核弾頭を直撃させる必要があるとなったんだ。
こうやって教えてる俺も正直恐ろしい。
三発目の核兵器を今度は日本人の手で日本本土で使う。
これが怖くないはずはないだろう。
この兵器の使いどころは非常に難しいものになるはずだ。
それもありこの兵器の存在が秘匿されているのだ。
それではこの弾頭含めた運用の詳細について説明していく。」
防衛庁のあった桧町の一室で、取扱についての説明は続いていくのであった。
怖そうな弾です