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64式小銃改3型始末  作者: 通りすがりの野良猫
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尾行されているとも知らず

尾行されてることも知らず、快調に飛行していたLM機です。

薄明るくなった太平洋上でLM機は、目標にしている数隻の漁船を発見する。

ライトが三回明滅する。合言葉である。

こちらは翼を振り答える。

予定時間より早いが、もう残り燃料も少ない。

また今は凪いでいる海面もいつどうなるやらわからない。

こうなれば、とりあえず、着水を試みるだけである。

物はとりあえず先に漁船に物をわたすのが先決だ。

低空でゆっくり飛びながら通信筒を落とす要領で落下させる。

練習したわけでもないが、風もなく安定した海上で漁船付近に落下して、すぐタモ網ですくいあげてくれる。

後は俺をすくいあげてくれたら終わり、だった。

俺が脚下げレバーを操作して、脚をおろし、フラップはフルダウン、トリムをとって姿勢を保ち、プロペラピッチも小さく、グランドファインに近くして、スロットルもゆっくり絞り、ストールワーニングが時折作動するくらいまで、速度を殺し、比較的凪いだ海にそろそろって感じで降りた。

思ったより衝撃もない。俺のツキもまんざらではないようだ。

話に聞いていた洋上での着水はかなり危険なはずだが、あちこちの神様、仏様は俺のような唯物論者のようなバチ当たりにも今日だけは、微笑んでくれたようだ。


LM機も燃料をほぼ使いきった状態で、浮力があるせいか、近くまで漁船がおろしたゴムボートがこぎ寄せるまで静かに浮いていてくれたから、救命胴衣を膨らませた、俺もほとんど濡れることもなく、漁船に収容された。

後は、遠路はるばる来た「同志」に「物」を渡して、代わりに「お土産」を入れたドラム缶を回収するだけである。

仕事を無事終えた俺に、船長がピースを投げてよこし、俺もそれに火を付けて味わいかけたその時、騒音で空を見上げた俺の視界の片隅にいるはずの無い物を見た。


「海自!がなんでいる?」

以前雑誌でみたことのあるP2V。

最新の、胴体下面はシープレーングレー、上部はインシグニアホワイトに塗り分けた奴だ。

そして胴体には縁なしの日の丸。


そいつが、俺たちを載せた漁船の後方から緩降下したと思うと、300フィート付近の高度から両翼下面のラックからドカン!という音と共にロケット弾を船の前方に打ち込みやがった。

「威嚇射撃だ」

船長は、吸いかけのピースを投げ捨て、「応戦しろ!」とのたまった。


驚く俺の目の前で、漁網の下から、軽機関銃のようなものが引っ張り出され、打ち出した。


比較的遅い哨戒機とは言え、角速度は大きくかつ、撃った奴は十分な見越しを取れなかったようだ。

こちらからの射撃を見たせいか、P2Vは加速すると共に高度を取った。他にもより口径の大きな対空火器を心配したんだろう。


航過した哨戒機は遠くで旋回してこちらを監視する様相である。

絶対絶命とはこのことだ。

次は威嚇ではなく当ててくるに相違無いからだ。俺は、改めて内心で「神様、仏様お助けを」と祈った。


その時、俺が乗っていた漁船が、宙に浮いた。

船縁にいた俺は振り落とされて、また海に投げ出されたが、その時見たものは、大きな筒状の物を抱えた巨大な生き物であった。


俺は仰天した。

筒に見えたのは、俺たちと会合予定だった潜水艦!だったからだ。

潜水艦の艦体にはどんな力がかかったかわからないが、掴まれている箇所は、まるでマッチ箱を大人が握り潰すような気安さで潰されている。


怪物はまるで、ジュラ紀から白亜紀にいたとか言う恐竜のでっかいのみたいであった。


怪物は潜水艦をまるで、壊れたオモチャのように投げ捨てると、こともあろうに、俺たちの乗っていた漁船を掴み、口にした。


「ボリボリ」と言う音がした、ような気がする。また人が押し潰されるときの断末魔の絶叫も聞こえたかも知れない。

とにかく、俺が苦労して運んだ「物」は怪物により太平洋の藻屑にされたようである。


また一方で投げ捨てられた潜水艦から数人が出た、と思うや否や、多量の空気を噴出しながら沈んでいく。


俺や他にもいた生き残りは怪物が俺たちに向かってくるのを覚悟したが、なぜかその怪物はこれ以上の攻撃をせず静かに離脱、潜って行った。


漁船の残骸や、その他に掴まっていた生き残りは、しばらくして上空に現れた米軍のS2F?かなんかが投下してくれたライフラフトにしがみつき、仲間の漁船の救助されるまでを堪え忍んだ。


その後、出動してきた第3管区の海上保安庁の巡視船「ほだか」「しきね」 に収容されることになった。



大戸島近海で現れたのは、後の海上保安庁の調査で、あの有名な怪物であると判明した。

前回東京に上陸した奴が撃退された時、「これが最後の一匹と思えない」と現場に立ち会っていた古生物学専門の動物博士 が言っていた通りになったのである。


なお、この時の個体は、後に南洋のインファント島付近で巨大なエビと戦っていた個体と同一であるとされている。

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