同志艦長、不明物体を探知しました!
「物」の回収にソ連の新鋭原子力潜水艦が投入されています。
西側からノベンバー級と言われているソ連海軍の627型潜水艦は、特殊任務を帯びて日本の領海すれすれまでやってきている。
先ほど政治委員と封印されていた命令書を見て頭が痛くなった。
日本の領海すれすれに行く、それも良い。いいだろう。
7番艦であるわが艦は、627型でも「当たり」の艦らしく、搭載している原子炉も故障は少ないから、よほどヘマしなければ大丈夫だろう。
それまでの潜水艦のようにシュノーケルを出していないから、シュノーケル航行中に探知される恐れはない。
先のキューバでのアメリカとの対立時だって、この艦なら間違いなく、アメリカの封鎖を降りきれたはずである。
「同志艦長、難しい作戦ですな」
政治委員の中ではまともな彼は、潜水艦の経験が長いから今回の特殊任務の危険性に気づいているのだ。
本艦の最大の武器は「海に隠れる」ことだ。
しかし司令部は浮上しての「物」の回収を命令してきた。
今の潜水艦はそもそも浮上している状態こそ不安定なのだ。
一定時間浮上して工作員の飛行機を待ち、「物」を回収するのはどれくらい危険なのかわかっているのだろうか?
ましてこの海域はアメリカ軍の横須賀基地にも近い。
以前乗っていた艦が、アメリカ空母機動部隊に追尾されたときは大変だったのだ。
大型哨戒機や空母の搭載する哨戒機、さらには古い駆逐艦を改造した対潜艦艇に追われたのだ。
「同志政治委員、ギリギリまで潜航して様子を見よう。万が一があるからな」
「天候も快晴ですからそうしましょう」
夜明け近い太平洋上、不安な時間はとっとと過ぎて欲しいもんである。
とその時、ソナ−からの 報告である。
「今までにない音響特性の物体を探知しました」 とのこと。
まずは、ソナ―室にいかないと。
ソ連の原子力潜水艦の近くに「不明物体」、どうなりますやら