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公園のキャンバス

作者: 藍川秀一

公園のキャンバス

藍川秀一


 この場所はいつも汚い。誰も清掃することがないせいか、ゴミというものが散乱している。お菓子の袋や、空のペットボトルなど、至る所に色々なものが転がっていた。元々公園だったのだが、少しずつ遊具が消えていき、今では空き地のような場所になっている。人が寄り付かず、緑がまるで存在しない場所は、廃れていくのが本当に早い。外で遊ぶ子供が減っていくとこう言った弊害も存在するのかもしれない。

 毎日の登下校、私はそんな場所を横目に通り過ぎ、日常というものを送っている。目には入っているが、何かしようという気にはなれない。体を汚したくはなかったし、誰も使っていない空き地を掃除する意味はどこにもない。ボランティア活動というものに勤しみ、生きがいのようなものを感じている人達はすごいと思う。バカにしているように聞こえるかもしれないが、私は本当に尊敬している。他人のために無償で行動を起こそうなど、考えたことすらない。良い意味でも、悪い意味でも、私は自分のためにしか行動できない人間だ。

 他人ために汗を流してまで行動を起こす理由に全く意味を感じない。他人のために頑張ったところで、自分自身の中に、一体何が残ると言うのだろう。精神的な幸福感を得られるだけで、何一つ自分の利益になっていないように私には思えてしまう。誰かのためだけに行動を起こすのは、自己犠牲でしかないと思えてしまうのは私だけだろうか? 

 そして今日も、公園の横道を抜けて行く。そこで私は一つ、面白いことを思いついた。近くのコンビニで、四十五リットルサイズのゴミ袋と軍手を買い、制服が汚れないように、トイレでジャージにも着替えておく。

 そして、公園に転がっている数々のゴミを拾い集め、次々とゴミ袋へと入れていく。ペットボトルは、公園に元々備え付けてある鉄のゴミ箱へと投げ入れる。

 夕方となり、やっとの思いで片付けが終わる。少し苦労したが、達成感のようなものは確かに存在していた。記念というわけではないが、綺麗になったこの場所を様々なアングルから写真に納めておく。

 私が本当にやりたいことは、これから先にことだった。

 かき集めたゴミは、袋四個分。これだけあれば、相当楽しむことができるだろう。私は縛っていた袋をほどき、周りに誰もいないことを確認してから、中身を盛大にばらまいた。白く、綺麗なキャンバスに色をつけるように、使われたことのないノートにめちゃくちゃな線を描くように、綺麗にしたこの場所を、私自身の手で汚した。

 綺麗なものを汚すことには覚悟がいる。それが自分で手をかけ、綺麗にしたものなら尚更だ。

 でもだからこそ、そこにしか存在しない美しさと、楽しさが存在していることを私は知っている。

 綺麗なものというのは、汚すために存在している。白いだけのキャンバスに意味などどこにもない。


〈了〉


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