66.思い立ったら吉日。 Side アリス
また、視点がアリスに戻ります。
「さて、私はどうすればいいのだろう?」
ルーク君はズバッと言い切った。
「・・・うーん。よく分かんないけど、告白じゃない?」
「おおぅ・・・。いきなり、ハードル高い・・・。」
「でも、告白しない事には、何も始まらないでしょ?」
あっけらかんと言うので、そうなんだろうなと思った。でも、レイス君は慎重な考えだった。
「でも、今のままじゃ、振られるのは確実でしょ?フローディアの話を聞く限りでは。寧ろ、恨まれている域。」
「それでも、前に進めるでしょ。」
「ルークの言う通りだわ。好きの反対は“無関心”なんだから。嫌われていても、一歩進んでいるようなものよ。」
フローディアさんが言う。好きの反対は、“無関心”。確かに、その人に興味がなければ、振り向いてももらえない・・・。
「・・・でも、告白はハードルが高いよぅ・・・。」
私は、うなだれる。フローディアさんはため息をついた。そして、一言。
「“月が綺麗ですね”。」
・・・ん?今のはなんだろう?この言葉にリード皇子は反応する。・・・一体、何なのだろう?
「・・・フローディア様は、よくご存知なのですね?それなら、それとなく、気軽に言えますよね。」
月が綺麗・・・?確かに、月が綺麗だった日なら言えるけれど?しかし、どういった意図で、言っているのだろう?疑問符を浮かべる。
「何とも、ロマンチックじゃないかしら?」
「まぁ、それもそうですね。」
ん?ロマンチック?何処が?それに、意味があるというの?フローディアさんとリード皇子は納得しているけれど、意味を理解しないと言えないよ!!
フローディアさんは私の考えを読んだかのような言葉を言った。
「貴方が、深く意味を理解したら、言いにくくなるじゃない。大丈夫。ルディー先生には、意味は伝わるのだから。」
「え・・・?本当に、どういう事?」
リュート君は、遮るように言葉を放つ。寧ろ、応援はしてくれないみたい。
「・・・あの!そもそも、お二人は教師と生徒の関係なのですよ!!叶う訳ないじゃないですか!!」
「でも、だからって諦める理由にはならないでしょ?ねぇ、アリス?」
「・・・うん。それは、覚悟してる。」
「だから、私は、貴方とルディー先生が上手くいくように、全力で応援するわ。」
何故か、全力で、と強調された気がするけど、フローディアさんが応援してくれるんだもの。私も、頑張らないと!!告白はハードルが高いけど、一歩進まなくては!!何も始まらないわ。やっぱり、勇気出して、告白する。
「月が綺麗ですね・・・。よく分からないけど、それで伝わるなら、言ってみる。」
「ルディー先生の事だから、星が綺麗ですね、とか、明日の月は綺麗でしょうね、とか言い出しそうだわ。・・・前者ならまだ、チャンスはあるけど。」
「後者なら、ただの犯行予告ですね。最悪です。そうしたら、助けを求めてください。早急に対応します。」
一体、どういう事なの!?というか、頭がこんがらがってくる・・・。要するに、月が綺麗ですね➡星が綺麗ですね。と返されたら、チャンスがあるって事ね!
リュート君は、私が疑問に思っていた事を聞いてくれた。
「何故、明日の月は綺麗でしょうね、が犯行予告になるんです?」
フローディアさんが神妙な面持ちになって、答える。
「明日という事は『今日の月はそんなに綺麗ではない』という事よ。『でしょうね』は同意を求める言葉、もしくは確信をもった『予測』や『推測』になるでしょ。『今日の月はそんなに綺麗ではない』という事は、問いかけている相手が生きているから。つまり、簡単に言ってしまうと、『もしも私が今あなたを殺す事ができるのなら、明日の月は綺麗でしょうね』という隠語ね。」
「要するに、貴方を殺す、という意味があるのですね。怖いですよ!!」
・・・!?でも、今日の夜は雲がなさそうだし、月が綺麗だと思うの。頑張って、伝えてみよう。
次は、フローディア様視点・・・にはならないかな。