52.アリスの救出作戦2。
前回の続きです。
「レイス!!ちょっと、話があるのだけど!!」
私達はレイスの元に駆け寄る。レイスは作務衣を着ていて、植物の手入れ中であるのが見て取れる。
「いきなり、どうしたの。フローディア。」
「フェルメール草はどこかしら!?」
私は血走っていた目をしていたみたいで、ちょっとビビるレイス。そこまで、酷かったかしら?血走る私を差し置いて、リュート様は事情を説明する。話を聞き終えると、レイスは書物を確認する。
「・・・ふーん。アリスが”禁術の薬”で、倒れてしまったんだ?しかも、解毒薬にはフェルメール草が必要なんだ。それなら、俺にもその解毒薬の製造を手伝ってもいい?俺も薬草を用いた薬の製造にはとても興味があるんだ。」
「お前は薬草には長けているからな。お前がいたら、力強いよ。」
「うん。期待にはちゃんと応えるよ。」
レイスは笑顔で言った。
△△△△
解毒薬の製造には、私は参加させてもらえなかった。アリアもルークも同様である。・・・ルークは怪我しているものね。下手に作った解毒薬を汚しても仕方ない。アリアは今にも死んでしまいそうな表情を浮かべている。アリスがこのままでは死んでしまう。その事実を知ってから、体調が優れないように見える。
「・・・私が・・・光魔法を発動させる事が出来たなら、皆さんに迷惑をお掛けする事もなかったのに。」
ルークは必死になってアリアを慰める。自身も解毒薬の製造に携われなくて、悔しいだろうに凄いなと正直に思った。
「アリアさんのせいじゃないよ!!アリアさん、自分を責めないで?俺だって、魔法の能力はまだじっちゃんの域には到底敵わないから。」
「そりゃあ、そうでしょうね。簡単にダン様の力に匹敵したら、ルークも目標がなくなってしまうものね。」
「えぇ!?そこは、慰めてくれるところじゃないの?」
「でも、少しずつちゃんと魔法の力は着実に成長しているわよ。・・・2人とも。」
「フローディア様・・・。」
使う魔法はその人の精神の強さに比例する。今、不安でしょうがないアリアには、いくら光魔法が使えるといえども、アリスを救うほどの魔法なんて、使えやしないのだから。だったら、今はアリアの不安要素をなくしてあげるのが、先決だわね。
「・・・思っていたのだけど、アリアは何で、そんなにも自分に自信がないのかしら?」
「そりゃあ、学園に通っていて、いつも貴族達に嫌がらせを受けているからじゃないの?」
ルークが先に答える。・・・ちょっと、あなたには聞いていないのだけど。それに、自分に自信がないのは学園に通う前からだと思うのだけど。
「ルーク、あなたはちょっと黙ってなさい。それに、あなたの推測はどうでもいいわ。」
アリアは申し訳なさそうに答える。
「・・・それは・・・。」
「えー?俺は蚊帳の外かよ。」
ルークが文句を言うが、アリアはこちらを真っすぐに見て答える。
「それは、私が・・・魔法を使えると言われてからも、中々使えず、双子の妹のアリスですら、簡単に使いこなしてしまうのを・・・見てきたからです・・・。」
「要するに、嫉妬心からなのかしらね。でも、あなたはあなたでしょ?もしかして、”役立たずのアリア”とでも言われてきたのかしら?」
「うわぁ。ズバッと言っちゃったよ。フローディアさん。」
ビクッと肩を揺らすアリア。あら?図星なのね。というか、ゲームでもそういう情報があったわね。
「・・・それに、もし私が・・・魔法を使えたなら、あんな事にはならなかったのに・・・。」
ルークが疑問符を浮かべる。
「あんな事・・・?」
・・・マリーベール襲撃事件の事かしら?でも、あれはあなただけではどうにもならなかったと思うのよ。勿論、アリスがいても同じ事。私は疑問符を浮かべているルークを置いてけぼりにして、ある提案をする。
「・・・じゃあ・・・その”あんな事”について、今から調べに行きましょうか?」
おや、フローディア様は何を考えているのでしょうね。