3.あれから5年が経ちました。
サブタイトル通りの展開。そして、話は加速していく。
レオン様がリュート様になってから、5年の月日が経った。リュート様はすくすくと成長なさっている。一時は両親はリュート様を手放そうとした事もあったのだが、私は泣き喚き、リュート様と近くにいられる事になった。リュート様も私と一緒に泣いてくださった。
あぁ、何でレオン様の幼少期のスチルがないと思ったのはこういう事なのね。まぁ、傍に私がいるっていうのは予想外なのかもしれないけれど。ちなみに、黒髪の黒目ですよ。前回は目を開いていなかったものね。
リュート様は私付きの専属の執事見習いとなった。彼もまた天才であった。勉学は勿論の事、魔法も3歳でその実力を発揮なされた。剣術もすぐに、覚えてしまわれた。あぁ、彼の成長が見られるなんて、私はなんて幸せ者なのかしら。
つい、顔が緩むと、リュート様に注意される。
「何、にやついてんの?」
「あら。そうかしら?・・・きっと、リュート様の成長が素晴らしいものだったかしら?リュート様を見つめていると、嬉しい気持ちになるわ。」
そう、笑顔で答えると、リュート様は顔を少し赤らめた気がした。そして、私の頭に手を乗せる。
「あのな。本来は俺・・・自分はフランソワーズ公爵に雇われた身。様をつけるのはやめろと言っている。第一、フローディア様が、砕けた口調で接しろと命令されたから、不躾ながらもそう、接している。だから、リュート、でいい。」
「あら?俺様リュートも好きよ?だから、無理して、自分や僕なんて言わなくても結構よ。私は将来、リュート様のお嫁さんになるの!」
小さい頃からそう言い続けた結果、リュート様は慣れてしまった様子。ちょっとくらいは照れてもいいのに。
「はいはい。またいつものね。」
「えー?私は本気よ?」
「俺はフローディア様の執事になる男。そんな事は許されない。」
「むー。」
「頬を膨らましても、それだけは聞けません。」
・・・っち。ダメか。押してもダメなら引いてみろ。しかし、本気で引かれそうなので、遠慮しておく。今は友好を築くのが先決。そして、私・フローディア・フランソワーズの悪役令嬢になるきっかけが近寄っている。
それは、愛する母親の死。5歳の時に母親は亡くなる。それをきっかけに、父親は私にさらに甘やかしてくる。そして、甘やかされた結果、高慢ちきな公爵令嬢になってしまうのだ。けれども、レオン様と友好を築けているもの。この乙女ゲームの世界観をすでにぶっ壊しているから、大丈夫だと思っていた。しかし、その時は来てしまった。私の母親は亡くなってしまった。
私は母の亡骸を見て、思わずリュート様の胸を借りて泣いてしまった。リュート様は黙って私の頭を撫でていた。彼もまた、ひどい顔をしていた。きっと、彼も実の母親のように思ってくれていたのね。
「リュートォ、母様が亡くなってしまったわ。・・・もしかしたら、助かるかもしれないと思ったのに!私、母様に何かできる事はなかったのかしら?」
「・・・リディア様はきっと、幸せ者だったのですね。こんなにもリディア様を愛してくれた娘様がいらっしゃるのですから。・・・今は思う存分、泣いてください。家族のために泣く、貴方の涙はこんなにも美しいのですから。」
リディア、それは私の母の名。こんな時でもリュート様はお優しい。私、リュート様がいれば悪役令嬢にはならないわ。
自分でもちょっと急展開かなと思いました。