2.湖の乙女。
前回よりは短いです。
あぁ!これは、湖の乙女!?確か、そんな名称だったはず。満月の夜に、”最果ての森”の湖に寄ると、何でも願いを叶えてくれるという。今日は満月の夜だったのね。まさか、こんなに綺麗な女性だとは思わなかったわ。レオン様はきっと彼女に会っていたのね。だから、無事に生き残る事が出来たのかしら?
『・・・久々に人間と会いました。それも、精神年齢は赤子ではないのですね。とても聡明なお方です。そして、魔法がとてもお上手な事。・・・汝の願い事をお聞きしましょう?』
・・・!?湖の乙女は私の心が読めるのかしら!?
『えぇ。・・・それに、貴方はまだ言葉を話せないのでしょう?』
・・・確かに、そうなんだけど・・・。願い事かぁ・・・。それは、レオン様が無事に生き残る事。決して憎悪を抱かないように成長してほしい。それが、私の願いになるのかなぁ?結婚は二の次。レオン様の幸せが第一!
湖の乙女はレオン様を見つめると、何か考え込んだ表情を浮かべる。彼女はしばらく無言のまま。そして静かに口を開く。
『・・・なるほど。彼はアルカディア王家の者なのですね。・・・ならば、王族の印を隠してしまいましょう。先程の者達がまた、悪事を働かない為にも。彼の身分を隠すのが一番幸せなのかもしれません。そして、その為にも貴方の傍にいるのが、きっと彼の幸せに繋がるのかもしれません。』
そう言って、湖の乙女はレオン様にそっと触れると、金髪が一瞬にして黒髪になった。左手の紋章も彼女の魔法により、見えなくなった。
おぉ、流石!見事な魔法だわ!この出来事がきっと、彼が生き残る事が出来た要因なのね!私が感心していると、彼女は一言私に言って、その姿を消した。
『・・・彼にかけた魔法は、彼自身が愛した者に口づけをする事で、解けるでしょう。それが、貴方であるように心から祈っております。』
まるで、白雪姫のような話ね!愛する人と口づけかぁ・・・。それが、私だったらいいのにな。
まずは、レオン様をこの”最果ての森”から脱出させる事が先決ね!そして、いずれ奴らに命令した貴族を見つけてやるわ。覚えてなさいな。
しかし、レオン様をおぶって、連れて帰るのは困難を極め、自邸に連れて戻る頃には、その魔力を使い果たしていた。
気が付けば、自室のベッドの上にレオン様と共に眠っていた。侍女達は私が目を覚ました事に気が付くと、両親に言伝を、そして、烈火の如く両親が私の元に寄り私を抱きしめる。あまりにも、駆け寄る足音が凄かったのか、レオン様も目を覚まし、そして、泣き出してしまった。
私はレオン様に声をかけようとする。
「リュート(レオン様、大丈夫ですか)!リュート(レオン様)!!」
両親は私の発言に驚いたようだ。私の両親はお互いに顔を見合わせる。そして、父は私に尋ねる。
「リュート?それが、彼の名前なのかい?」
違う!そう、言いたい所だが、やめた。リュート。しばらくはリュートの名の下で過ごしてもらおう。まぁ、レオン様とは言えないのだ。それが、一番いいのかもしれない。
侍女達はレオン様もといリュート様をなだめる。リュート様には環境の変化についていけなかったのかもしれない。それは、申し訳ない事をした。でも、これからは、私が傍にいますからね。安心して、生活してくださいませ。
次の話では、少し年月が経った話です。