1.物語の始まり
若干、説明回。
こんにちは。フローディア・フランソワーズです。今宵は、第四王子様ことレオン・アルカディア様が誘拐される日でございます。私は前回に引き続き、0歳5カ月の赤子ですが眠ってはいられません。今日は大切なレオン様の誘拐イベントが起きてしまうのです。
あ、前回言うのを忘れましたが、私は公爵令嬢です。これも定番ですね。そして、この世界には魔法があります。6元素と呼ばれ、炎・水・風・土・光・闇の六つ。一番レアなのは、光魔法。続いて、炎・水・風・土となる。闇魔法は後天性の魔法であるため、説明は省きます。私は風魔法に特化しています。レオン様は水魔法に特化していらっしゃったはず。ヒロイン(デフォルト名はアリア・リリス)は光魔法に特化しており、それ故攻略対象に興味を持たれる。
レオン様の誘拐イベントは深夜に行われるはずです。眠ってはいられますか!!レオン様は現在0歳と6カ月。当然、赤ちゃんです。
早速ですが、夜遅くになりました。家をとてとてと歩いていても、レオン様の誘拐イベントには間に合いません。現場に向かいましょう。そして、お得意の風魔法を展開します。これは、両親にも侍女達にも見せておりません。
まさか、誰が0歳と5カ月の赤子が魔法を使えると思いますか?勿論、私しかおりません。まさか、天才的な才能に恵まれているとは思いませんでした。最初は有頂天になり、魔法を使いまくった結果、倒れるまで使い、1週間程寝込んでしまったらしいです。勿論、事実は知らせていないし、第一に言葉を話せない。
誰にも見られないように、適度な風魔法を使い、犯行現場・・・は王城ですが、レオン様が連れていかれるのは”最果ての森”の奥地。そこにレオン様は捨てられる。殺されないだけマシだが、それ故に憎悪を生む。赤子がどれだけの苦労して生きていくのか、誘拐犯はまさか、生き残るとは微塵も思っていなかったらしい。そこに、私が颯爽と助けに入る!なんて、完璧な計画!
しかし、誘拐犯と一線をやらかすのはやめましょう。私まで”最果ての森”から戻ってこれなくなる。
私は”最果ての森”の奥地にある湖付近に寄ると、そこで一休みします。そうすること1時間。誘拐犯の男二人とその元で抱えられ、眠っているレオン様。
・・・おぉ、流石私の前世の記憶。レオン様の誘拐される場所までちゃんと覚えていた!これで、私は晴れてレオン様とー・・・!
がさり。つい、思いが高ぶるあまり、近くの木の枝を踏んでしまった模様。
「・・・おい。今の音は何だ?」
「誰か、近くにいるのか?」
ヤバい。誘拐犯にバレる!!何とかして、この場をしのがなくては!!私は風魔法を展開し、誤魔化しに入る。
びゅう~~。
辺り一面を風が木々を揺らす。それに、誘拐犯はつられる。
「・・・なんだ。風の音か。」
「・・・だな。これで、貴族様からの給金が得られないなんて事になったら、洒落にならん。」
・・・何ですと?これは、どこかの貴族が仕組んだ事なの?そこはゲームでは多くは語られなかったのよね。あくまで、メインは恋愛だから。しばらくして、誘拐犯はその場からレオン様を置いて離れる。私はしばらく様子を見て誘拐犯が完全にその場から離れた事を確認してから、レオン様の元にとてとてと歩いていく。
レオン様の近くに寄ると、レオン様は何事もなかったように眠っている。・・・良かった。レオン様は無事みたい。もし、レオン様に傷一つでもついていたら、あの誘拐犯達を殺してしまいそうよ!!なめないで。私の記憶力は凄まじいんだから!!
しかし、レオン様は王族のお方。その印は、生まれてすぐに、王族の儀式が行われ左手にはアルカディア王家の紋章が映し出され、王族のお方は金髪碧眼の特徴を持つ。今も金髪の髪が月の光に照らし出している。レオン様(未来予想図)もそうだった。野性的な風貌に金髪碧眼。しかし、学院に潜り込むために、地味な黒髪で眼鏡をかけており、風貌もまるでモブみたいな真面目委員長的な雰囲気を醸し出していた。
あれは一体・・・?
そう、考え込んでいると何処からか声が聞こえる。
『・・・迷える子羊よ。汝の願い事は如何に?』
私は声のする方を振り返ってみると、湖の水面の上に、腰まである水色のサラサラの髪に、綺麗な水色の瞳を持つ女性が立っていた。思わず、彼女に目を奪われていた。