15.リード様の事情。
またもや、出だしが困った話です。
「・・・私、少しばかり情報を収集しておりまして、そこで、リード様の事を知りましたの。リード様は魔法を有する方だと知り、もしかしたら将来、アルカディア王立魔法学園に通われるのかと思いました。アズウェル皇国には魔法を有する者は少なく、貴方様に魔法を教えてくれる者はごく僅かだと。我がアルカディア王国とアズウェル皇国との魔法に対する考え方も大変違っており、魔法を使うのも一苦労なさっている事でしょう。・・・そして、そこを狙われたのではないのですか?魔法を貴方に指導している者が誘拐グループとつるんでいた・・・とか?」
私は口角を少し広げる。まるで、悪役令嬢の笑みで。
・・・そう。リード様はそこを狙われた。リード様は決して天才などではない。・・・今はね。魔法に関しては、これまたジル様と同じく劣等生の烙印を押されてしまう。でも、それは仕方のない事。本当にアルカディア王国とアズウェル皇国との魔法の知識量に大きく差がある為に起こる事。リード様もジル様同様に炎魔法を使われるのだが、炎属性の魔法を使う者はアルカディア王国でも少ない。それが、アズウェル皇国ともなるとごく僅か。
自国では、天才と祭り上げられ、他国では劣等生と呼ばれ、苦悩する日々。そして、過去のトラウマである”誘拐事件”。それは、リード様にとって最大の屈辱であり、自身が決して天才などではないのだと実感してしまう出来事。その事件も信頼していた魔法の先生からの仕業であった。その事に酷く落ち込まれる。追い打ちをかけるように、誘拐されて、連れてこられたアルカディア王国でも、フローディアに酷くいじめられる。やがて、リード様は他人を信用しなくなる。けれども、リード様は国の命でアルカディア王立魔法学園に通われる。他人を信用していないリード様はヒロインと馴れ合おうとはしない。けれど、健気にヒロインはリード様に接する。そして、リード様はヒロインに恋に落ちながらも、魔法の才能を開花させていくー・・・。
ハッピーエンドでフローディアの悪事を暴き、身分を剥奪する。そして、ヒロインを自国に連れて帰る。バッドエンドで、ヒロインを傷つけられた事で、魔法が暴発し、フローディアを殺めてしまう。そして、リード様は心を病んでしまう。
やっぱり、バッドオンリーです。やだなぁ。ここは何とかして魔法の才能を開花させてもらいたい所。その為には、やっぱり・・・。
リード様は目を見開いた様子。私はリード様からの反応からやっぱり、そうなのねと確信するとある提案をする。
「・・・リード様は確か、炎属性の魔法を使用されるとか。どうですか?ここは、同じく炎属性の魔法を使用するジル様に教えてもらっては?同じ王子同士という事で、気兼ねなく教わる事が出来ますよ?ここは魔法の国、アルカディア王国なんですから、遠慮はなさらず・・・ね?ジル様もそう思いますでしょう?」
「え?」
突然、話題を振られたジル様は一瞬反応が遅れるが、すぐに対応する。
「・・・そうですね。私で良ければ、魔法をお教えいたします。私達、意外と気が合うのかもしれませんね。」
一瞬、ジル様に『何を言い出すのですか。』と視線が来た気もするが、気にしない。リード様はそれに気付かないまま、ジル様の提案に乗ってくださった。まぁ、発案者は私だが。
「そのお心遣いありがたく頂戴します。どうぞ私に魔法のご指導のほど、よろしくお願いします。」
リード様は今まで見た事ないほどの笑顔に、ジル様タジタジ。かくいう私も思わずその眩しさに目を閉じてしまった。まるで、太陽みたいな笑顔でした。
今回は説明回+幸先が困る話でしたね。