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スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜ ;;) .:∴ドゴォォ  作者: ZAP
第8章 スコップの国のスコップ(???すこ)
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第65話 王女、願いを叶える(後編)

「アリスヴェクナルが出るまでもない――いでよ砂漠の赤龍『イタンガスト』」

 

 ズドーン。

 上空から銅像が落ちてきた。銅像である。炎の国でリティシアが宗教創始したときに部族の村に建造したやつだ。アランが波動砲で赤龍イタンガストをつらぬく姿。龍は本物の赤龍のキバから作っていたはずだから、召喚としては合っている。

 ゼルベルグは数秒の間、その銅像を眺めてから。

 

「…………………………………………今のは、余興の本番だ」

 

 この悪魔、わりと理不尽耐性が高い。

 またゼルベルグがシュンっと手を降って銅像が消えた。

 

「いでよ天空の帝王『パズズ』!」

 

 しーん。

 何も起きない。

 パズズは空中都市ごとアランが完全に消滅させたからだ。

 たらーりと、さすがに、ゼルベルグの頬から脂汗が落ちはじめる。

 ついに事態を理解し始めたらしい。

 

「ど……どういう、ことだっ!?」

「だからオーブを守る四魔公とやらは、俺がもう倒したぞ」

「ばかな、世迷言をっ! いでよ大海の魔公『ハイドラ』よ!」

 

 しーん。

 今度も何も起きない――かと思ったらヒュンッと少女が飛んできた。腰まで届くウェーブがかった髪。はだけたパジャマ。大きな枕を太ももで挟んで『んんっ……アラン……アラン……いつ……来るのよ……ふぁっ』と悩ましい声を発している。

 ベッドに転がり、もぞもぞ動くルクレツィア。

 なんだか、忙しい様子であった。

 

「――――――えっ?」

 

 ぱちぱちとまばたきをするルクレツィア。

 アランはなぜ彼女が呼ばれたのか考えた。

 たぶんハイドラの触手の刺し身を宴会のときに一番ヤケ食いしていたからだ。

 そんなことはどうでもよくて、問題はルクレツィアが、すごい格好なことだ。

 かなり、えっちである。

 

「きゃああああああああああアランなんでなんでなんでーーっっ!?」

 

 真っ赤な顔で泣き叫ぶ。

 ゼルベルグがぱちんと指を鳴らしてルクレツィアは消えた。

 ゼルベルグの顔にもはや笑みはない。滝のように脂汗が流れ落ちている。

 

「どういうことだっ!!!???」

 

 ああ、悪魔でもスコップは理解できないんだなとカチュアは安心した。

 なおゼオルはまだ正気を取り戻していない。

 

「だからオーブは取り戻した。四魔公も全員倒した」

「ばかなっ……!」

「リティシア、見せてやれ」

 

 もはや隠す理由もない。オーブはリティシアが持っている。リティシアは赤いスコップを見せつけた。スコップの柄にきらりと光る7つの宝玉が、太陽の光をきらりと反射して輝いた。オーブはいまリティシアの手の中にあるのだ。

 

「……いや、そんなサイズだったか?」

 

 たしかオーブは手のひら大だったはずだが。

 いまはせいぜい指輪にはまるダイヤモンド程度の大きさだ。

 リティシアはにこりと笑って、アランに応えた。

 

「鉱夫さまのスコップに嵌められるよう加工したんです」

「(国宝を加工したのか……)」

 

 ゼルベルグが驚愕に表情をゆがめた。

 

「っっっっっっ!?」

「まあ、貴様の悪行もこれまでというわけだ――カチュア、ゼオルはまだか?」

「まだだ」

 

 いいかげん時間を稼ぐのも限界な気がするが。

 まあいざとなったら普通に縛ればよいか――と思っていたら。

 くく、くくくっと、ゼルベルグが不敵に笑いだしたのである。

 

「む?」

「すこ?」

「オーブをすべて――7つすべて、集めたのですね」

 

 笑い声はやがて高笑いとなり、天にも轟くほどの声となった。

 

「ははははははは! さすがは姫殿下です、僕の期待どおり、いやそれ以上です!」

「すこ? ゼルベルグ、ついに頭がおかしくなりましたか?」

「(姫殿下にだけは絶対に言われたくないセリフだなあ)」

 

 ゼルベルグはもはやアランを見ていない。

 ただリティシアを見つめ続けている。

 

「姫殿下。僕がなぜ貴方を逃し各国にオーブを散らしたか――ご存知ですか?」

「しゃべるです(知りません)」

「シャベル!? い、いやとにかく、僕はわざと貴方にオーブを集めさせたのです」

「しゃべるです(嘘です、私は自分の意思で旅に出ました)」

「…………」

 

 理不尽耐性の高いゼルベルグも流石に無言である。

 だがブンブンと首をふると、気を取り直した風に。

 

「オーブの力。それは魔物を防ぐだけではなく、もっと凄まじいものです」

「……すこべるです」

「すこべる!?」

 

 カチュアが『どういう意味だ』とつぶやくと、アランが解説する。

 

「たぶん『スコップとシャベルが半々』で『意味不明だ』という意味だろう」

「そうか……人類には不要な単語がまた増えてしまったな……」

「ところでゼオルはまだ目を覚まさないか?」

「姫殿下のスコップ会話をやめさせたら、覚めるんじゃないか?」

 

 その間にもゼルベルグの話は続く。

 

「お、オーブの力は『願いを叶える』こと。魔物を防ぐ結界を張るというのは、古のロスティール王がそう願ったからというだけ。しかし――これほど強大なオーブの力を、そんなくだらない願いに使うべきではありません」

「……アラン、そうなのか?」

「魔術師達がそういう風に加工したのだろうな」

 

 宝石そのものは、ただの魔力のカタマリに過ぎない。魔物を防ぐ力を後付けしたのだと思ったが、オーブの力が充分なら、もっと強大な願いにも使えるはずだ。アランが解説する間にゼルベルグは更に続ける。

 

「各国にオーブを散らせたのは、その力をロスティールから引き離すことで、状態をクリアにし、新たな願いを受け入れ可能な状態にするため――そしていま僕の手元に、7つのオーブが集まっているのです! 姫殿下、あなたの旅によって!」

 

 ゼルベルグは高笑いを続けた。

 

「はははは! 姫殿下、貴方は僕の手のひらで踊っていたに過ぎないのですっ!」

「(踊るというか、手のひらを掘っていたというか)」

「オーブに……そんなすこが?」

 

 リティシアは不思議そうにオーブの嵌められたスコップを見つめている。

 その直後だった。

 ビカアアアアアアアアアアアア!

 リティシアの握る赤いスコップのオーブから七色の光線が放たれた。

 

「きゃっ……!?」

「始まりましたね。オーブが反応しているのです、僕の願いに」

 

 ゼルベルグが複雑な手振りをすると、オーブの輝きが更に強烈になる。

 圧力すら感じる光量が、リティシアの赤いスコップから放たれている。

 

「オーブは最も心強きものの願いに反応する――そう、つまりこの僕の!」

「……心強きものの、願い?」

「そう! つまりこの大悪魔たるゼルベルグの――!」

 

 カチュアの背筋に、ぞくりと、いやな予感が走った。

 最も心強きもの?

 いや、待った。それだと。

 かなりまずいことが起きるじゃないか?

 ゴオオオオオウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ。

 オーブから放たれる七色の波動がリティシアを包み込みはじめている。

 ゼルベルグを、ではない。

 

「――あれ?」

 

 ゼルベルグが間の抜けた声を発した。

 何が起きているのか理解できない様子だった。

 理解しているのは、たぶんアランとカチュアだけだ。

 

「アラン!」

「わかっている」

 

 カチュアが警告を発するまでもなく、アランは動いた。スコップをすちゃりと構えて、リティシアの持つ赤いスコップを狙い、突く。ガギイイイイイイイィィィィィン! 強烈な金属音とともにリティシアのスコップが叩き落とされ――なかった。

 リティシアはアランの一撃をものともせず、スコップを握っていた。

 

「っ!?」

 

 カチュアが驚愕する。アランのスコップすら通用しない!?

 リティシアは何かに魅入られたように、スコップを見つめ続けている。

 

「リティシアッ!!」

 

 アランの叫びに、リティシアがびくんっと反応した。

 

「――――――――す」

 

 一瞬だけ、リティシアは正気を取り戻したように見えた。

 潤んだ瞳で、何かを言いたげ。だがそれも一瞬のこと。

 ぎゅっと。

 リティシアは赤いスコップを胸に抱いた。

 

「――――――」

 

 続きの言葉は、カチュアには聞こえなかった。

 スコップに嵌ったオーブの光がリティシアの表情を、そして全身を覆い尽くし、やがて体どころか周囲の空間そのものを光で塗りつぶされてゆく。ただの光ではない。カチュアは押しつぶされそうなほどの圧迫感を覚えた。

 世界が染まってゆく――あれは何の模様だ――。

 そのとき、光から音が聞こえてきた。まるで賛美歌のようだ。

 リティシアのようでいてそうではない、謎の声が光から聞こえてくる。


 SCOOP――AーLAN――SCOOP――AーLAN!!


「やっぱりスコップなのか!!!」


 ツッコミを入れて、カチュアはなんとか意識を取り戻した。

 だが状況は変わらない。とんでもないことが起きようとしている。具体的に何が起きるかはさっぱりわからないが、とにかくスコップなことに違いない。がつんと『聖騎士の剣』を地面に突き立て、カチュアは叫ぶ。


「アラーン! なんとかしろーっ!」

 

 期待を込めて叫び、アランの背中が見る。

 リティシアの光にまったく動じず、スコップをスチャリと頭上に構えていた。

 

「これは――《世界改変》かーーだがーー『Fill(埋まれ!)』」

 

 一声発すると、ドゴオウウウウ!

 アランとリティシア、そしてカチュアの周囲の地面から、茶色の巨大なカベが天を突くように生える。リティシアの発する光が、その壁に閉じ込められたように見えた。だがそれでも、リティシアから発する白い光そして音は止まらない。

 アランはスコップを構えたままカチュアに向かって振り返った。

 おそろしく真剣な表情だ。


「カチュア。足りんようだ。手を貸せ」

「な」

「今のリティシアは――俺でも見たことがないレベルの」

 

 カチュアはごくりと息を飲んだ。アランがおごそかに宣言した。

 


「シャベルだ」

 


 数秒の間があった。光すら止まって見えた。

 やがてカチュアは全力全開でツッコミを入れた。

 

「こんな時ぐらいまともに解説しろーーーーーー!!!!!」

 

 緊張の糸が途切れ、がくんとカチュアは頭を垂れた。

 目を覚ましたら、多分すべてが『すこべる』になっているだろうと思った。

スコップ無双・第1幕『7つのオーブ編』次の次か、その次ぐらいでクライマックスです。

ということは第2幕があるのか。すこべるです。意味がわからない!(自業自得)


↓スクロールの評価をいただけると作者がすごくすごくすこわせです。すが多い。

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