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第45話 鉱夫、クロノノをビキニ弟子にする

 ゴウンゴウンゴウンスコンスコンスコップ。

 悪魔に占拠された王都『真なる鉄の都』は、地下300メートルにある。そこに向けてアラン達は地中戦艦スコップ号で侵攻中だった。巨大な帆船ほどもある戦艦だ。スコップ波動エンジンを全開にすれば、事象の地平線を超えた次元スコップすら可能である。

 この地中戦艦はアランの秘密兵器だ。

 数百年にわたる地獄探索、悪魔との激闘のために建造した、動く拠点だ。50LDKの部屋にトイレと風呂とスコッチン(スコップキッチン。スコッチが豊富)を完備し居住性もばっちり。スコックピットの中央にはスコントローラー。武器は簡易スコップ波動砲が30門――。

 

「……おい」

 

 そのへんまで説明したところで、カチュアが頭が痛そうな声をあげた。アランはザクザクザクと、スコップで超高速でスコスコしている。スコップ波動エンジンの燃料は、人力だ。アランがスコップタービンを回すことでスコップ波動を生み出す。


「うおおおおい!?」


 そのへんでカチュアは吐き気を覚えた。原因はツッコミ過多。

 

「なんだ、なんだこの……冗談みたいな船は? というか船なのかこれは?」

 

 カチュアの常識では船は水の上のものである。

 これは地の底を潜っている。

 

「馬車は、空は飛べても地底には潜れない。だから用意した」

「馬車は空もふつうは飛べないんだ!」

 

 などと話しても目の前の鋼鉄のコックピットは変わらない。

 やはりこの男と普通の話をするのは、無理のようだ。

 

「もういい……で、闇の国をこの船で制圧するわけだな?」

 

 悪魔が何十万匹いてもこんな無茶な戦艦なら二秒で全滅させられるだろう。

 だがアランは首を横に振った。

 

「クロノノによれば悪魔に刃向かうレジスタンス組織がある。そこと協力する」

 

 クロノノが所属していた、小さいが志ある組織だ。

 彼女を脱走させて外にメッセージを伝えさせたのも組織の力らしい。

 

「そんなモノを相手にする必要があるのか?」

「自分の力で成し遂げた事実が大事なのだ。カチュア、魔法王との戦いを思い出せ」

「む」

 

 確かにあの時アランの助力なしで敵を倒したことである意味自信はついた。今の自分はアランと出会う前より確実に強くなっている。特に精神的に。アランに頼りきりではおそらく成長はなかっただろう。

 

「闇の国がふたたび復興するには、俺の力に頼りきりではいかん」

 

 エルフの里を復興させようとするフィオは、自分の力でがんばっていた。

 アランはその手助けをするだけなのだ。

 

「なるほど……私は納得できたぞ、アラン」

 

 この男、発言の90%はスコップだが10%はまともなことを言う。

 なおリティシア姫は発言の300%がスコップだ。通常の3倍スコップだ。

 

「ところでアラン、そのクロノノはどうした?」

「裸のままではまずいからな。リティシアが着替えさせている」

 

 ぞくり。

 カチュアの背筋に異様な悪寒が走る。

 ブルブルと首を振って、悪寒を振り払う。いや。さすがに。いくら最近スコップ暴走気味な姫殿下でも、本人は清楚で可憐なドレス姿なわけだし。『騎士鎧からスコップ作業着に着替えろ』などという命令は受けたりしてないし。まだ。

 大丈夫だ。

 あれでも最低限の常識は、守ってくれるはずだ。

 13歳の少女に変な服を着せたりしないはずだ。

 自分に言い聞かせながらカチュアが振り返ると、ドアのそばにピンク色のマイクロビキニをまとい羞恥の表情の少女。浅黒い肌もうっすらピンクに染まっている。太ももをぴっちりと閉じて『はう、はうぅぅ』と恥ずかしげに体をよじる少女は、見間違えようもなくクロノノだ。

 

「お待たせしました、とってもすこなクロノノちゃんです、鉱夫さまっ!」

 

 隣でリティシアが笑顔で一言。

 そのへんでようやくカチュアは叫ぶ。

 

「何を着せてるんですか姫殿下ーーーーーーーっ!?」

「ひ……ひあうう……」

 

 クロノノは身をよじっている。

 ビキニ少女である。わずかに隠された秘部は、裸より犯罪的だ。クロノノの小さい胸をわずかに覆う部分以外はヒモなのである。腰のまわりできゅっとリボン結びされた水着が、まるで『いつでもほどいてね』と無邪気に誘っている。

 アランも面食らった様子でスコップエンジンを止めていた。

 なんだ、この――なんだ?

 

「安心なさいカチュア。これは国対国、王族同士のスコップ外交なのです」

「姫殿下は全国の外交官に土下座して謝るべきです」

「それに、すこ服はクロノノちゃん自身が望みました」

「……は?」

 

 と、クロノノがアランのそばに、トトっと近寄ってきた。

 うるんだ瞳。幼い体を羞恥に震わせながら、アランを見上げる。

 そして。

 

「わたくしは……す、『すこ』……でしょうか……?」

 

 強烈な頭痛がアランを襲った。

 

「なにがどうしてそうなった」

「ろ、ロスティールへの条件が『アラン様にすこ身を捧げること』だから……ですが」

「なんだすこ身って」

 

 リティシアがかしこまった口調で更に解説する。ロスティールと闇の国には、昔から交流がほとんど存在しなかった。リティシアとクロノノの交流は、その先駆けとなるはずだ。姉妹国となるために、リティシアと一緒にクロノノもアランに『スコップ』してほしい――。

 

「ここでいう『スコップ』とは、鉱夫さまとの最初の『スコップ』のお約束ですこ」

 

 ぽっと頬を染めて解説しつつ、マイクロビキニのクロノノを押し出すリティシア。

 アランは考える。リティシアと約束した『スコップ』とは『後継者をつくる』という意味だ。だが、募集を主催するなら、リティシアだけで十分なはずだ。それに水着を着せる意味が、まったくわからない。

 

「鉱夫さま、水着のクロノノちゃんは、とってもすこで魅力的だと思いますこ?」

「すこはともかく、確かに魅力的だとは言ったが……」

 

 ――まさか。

 

「まさか……クロノノに、スコップを教えろと?」

 

 リティシアがこくりと頷く。リティシアに依頼したアランの後継者。それがこの子というのか。少女だぞ。しかも他国の王族だ。いや、だからこそなのか。敵国の王族を人質に連れ帰るというのは、たしかに外交戦略として聞いたことがある。

 アランの鉱山の地上部分はロスティール領土内だ。

 そこで他国の姫を働かせたら、確かに国としての上下関係はつく。

 

「だがその(きわどい)水着になんの意味があるのだ」

「あ……あ、のっ」

 

 と、クロノノが進み出て、露出した肌を隠す手をそっとどけた。

 

「わ……わたくしの体を……お見せすれば……」

 

 そして羞恥に頬を染めつつも、決意の表情で。

 

「『スコップ』できるかどうか……アラン様に、見定めて頂ける……と」

「む」

 

 体を見る――つまり、スコップ筋を見ろと。

 確かに鉱夫は肉体労働だ。筋肉は重要だ。その中でもスコップ筋――スコップを扱うための筋肉の付き方は重要だ。弟子の育成には体をじっくり見る必要がある。その意味で裸に近いマイクロビキニは理に叶っている。

 なるほど、決していやらしい意味ではなかったわけか――アランは納得した。

 そうだ。決していやらしい意味ではないのだ(強調)。

 

「だが俺(の指導)は厳しいぞ。クロノノはそれでいいのか?」

 

 クロノノは華奢な体を震わせた。

 それでも、決意の表情は崩さず、こくりとうなずく。

 おへそのあたり――拷問の傷が残るあたりを撫でながら。

 

「こんな肌で……子どものわたくしを、ひ、必要としていただけるなら……」

 

 ぎゅっと拳をあごのまえで握って、クロノノは続けた。

 

「わたくしは……喜んで、アラン様の『スコップ』にこの身を捧げますっ!」

 

 クロノノは緊張の表情で、ちょっと好奇心の光を瞳に浮かべて。

 

「か、覚悟はあります! 未熟なわたくしですが、お願いできればと……っ!」

「……そうか」

 

 そこまで決意をされてはアランとしては引き受けるしかない。


「ではこのスコップを渡そうではないか」

「……え?」

「なんだ? 俺についてくるからにはスコップは必需品だろう」

 

 クロノノはしばらくスコップをじーっと見て、こくりとうなずいた。

 

「よ、よくわかりませんけれど……でもスコップを使うんですね!?」

「うむ、よく体に慣らしておくのだ」

「慣らす……お、おっきい、ですけどっ……がんばります!」

 

 二人の様子をリティシアがにこにこと見守っていた。

 じっと黙って見つめていたカチュアだけが――。

 

「(………………何か、いろいろおかしいな)」

 

 深刻なスコップ誤解が進行していることに、薄々感づいていた。

 だがカチュアは特に指摘するつもりもなく黙って耳栓をつけた。

 

 常識的な指摘を、この鉱夫と王女が聞くわけがない。

 

「ではクロノノ、そろそろレジスタンスの場所に案内してくれ」

「はい! みんな、無事でいてください……っ!」

 

 自分を逃したあとに捕まっていたりしないか。

 心配そうに表情をゆがめるクロノノ。その頭をアランはぽんと撫でた。

 

「大丈夫だクロノノ。地中に関していえば」

 

 アランはスコップをすちゃりと構えて宣言した。

 

「スコップは無敵だ」

「さス(さすスコ無(さすが鉱夫様のスコップは無敵の武器ですこ!!))」

 

 省略が悪化している。

 あと貴様のスコップが無敵じゃない場所なんて、ないだろう。

 カチュアのそんなツッコミはスコップドリルの音にかき消される。

 

 ――目指すは地底。悪魔の支配する、地獄の入り口だ。

 

 

 △▼△

 

 

 広いホールのような空間に男女の苦痛の声が響き渡っている。

 煮えたぎるマグマの壁に囲まれた、刑務所のごとき牢獄の広間だ。

 その中央にあるトゲだらけの拷問台に、赤い髪の女が鎖で繋がれていた。

 

「……ク……ロ」

 

 レジスタンスの長、オデッサだ。年は15。その全身は血だらけだ。無数のムチの跡。爪は無残にも割られている。拷問だった。逃げた少女クロノノの行方を吐かせるために、オデッサは悪魔の拷問にかけられていた。

 ごふぅと、喉の奥から血の塊がのぼってくる。

 

 ――クロノノは、光を見られただろうか。

 

 考えることはそれだけだ。

 この国にはもはや、絶望しかない。

 あの小さな姫君にせめて外の光を見てほしい。その一心だけで逃した。『悪魔の毒』を受けないうちに逃げてほしくて――実際には逃亡中に埋め込まれていたが、オデッサはそれを知らない――彼女に希望をたくして、逃した。

 他国に世界の危機を伝えてほしいというのは方便だ。

 恐るべき悪魔達に、人間の国家ごときでは対抗できるものか。

 この地底には既に30万を超える上位悪魔が既に生まれている。

 レジスタンスのアジトが襲撃であっけなく全滅した時、オデッサは悟った。

 抵抗は無駄だ。

 人類はもう、終わりだ。


「は……ぐ……うっ」

 

 オデッサの心は、既に折れかけていた。

 ただ、かろうじてクロノノの名を呼ぶだけで意識を保っていた。

 

「……ノ……ノ」

『ジカンダ。オキロ』

 

 悪魔に引っ張られた。永久に続く苦痛の時間がはじまる。頭をツンと爪で突かれた。とたんに凄まじい熱を思考に感じた。脳の中身、そのものをいじられるような。ぽろぽろと涙がこぼれ出る。痛みではない。無力への嘆きの涙だ。

 悪魔の声とオデッサの脳内の声が重なる。

『革命は失敗シタ』なぜ。『オデッサの力が足りなかッタ』

『圧倒的に、なにもかもが足りなかッタ』力が。『ホシイ』

『力が』欲しい『人間にはない力が』欲しい――。

 

『渇望がツヨイ。コレはヨイ『苗床』とナルナ』

 

 悪魔が笑っていることにオデッサは気付いていない。

 力への渇望は、強い悪魔を生み出す苗床としての必要条件だ。

 そのための洗脳だった。

 消えゆく意識。最後にオデッサはその名を呼ぶ。

 

「クロ……ノ、ノ」

 

 どうか、あなただけでも、光を。

 そのとき、なぜか視界がぼやけた。そしてクロノノの姿が浮かんだ。

 これは……夢だろう。笑顔だ。ああ、無事に逃げられたのだ……よかった……姿がはっきりと見える……エッチなピンク色のマイクロビキニを着て、太ももにスコップをはさんで恥ずかしげなクロノノ……。

 

 ――いや待て!

 

「なんだ水着にスコップって!?」

 

 オデッサが我に返り、叫んだ瞬間だ。ドゴシュオオオオウウ! 目の前の悪魔が蒸発した。その後ろから現れたのは見知らぬ男と、マイクロビキニをまとい肌を極度に露出させ、羞恥の表情を浮かべる少女。クロノノだ。


「オデッサさん! オデッサさん! しっかりしてくださいっ!」


 そんなクロノノがオデッサを見るや、タタっと駆け寄ってきた。

 

「は……く、クロノノ、なのか!? なんだその水着は!?」

「はうっ!? い、いろいろありまして……っ!」

 

 何がいろいろあったら地獄から逃げた直後にビキニで帰ってくる!?

 オデッサはツッコミを入れようとして――そんな場合ではないと気付く。

 

「クロノノ、なぜ帰ってきた! 逃げるんだ、今すぐに!」

 

 拷問役の悪魔の一体は不意打ちで倒したようだが、あんなものは非戦闘用だ。

 

『テキシュウ! テレポートケイカイ、テキシュウ!』

 

 ゴウウウウンゴウウウウン! 不気味で巨大な鐘が鳴る。牢獄の前は広間になっているが、その広間にとてつもない数の悪魔が集まってきた。100体以上だ。恐ろしい咆哮をあげながら、オデッサの牢獄に一直線に向かっている。

 ダメだ。もう見つかった!

 

「あ、アランさま、て、敵が来ちゃったようです!」

「よし、別働隊のカチュアのためにも引き付ける。俺が教えたとおりにやれ」

「は、はいっ!」

 

 ビキニ姿のまま、小さなスコップをすちゃりと頭上に構えるクロノノ。

 

「貴様!? クロノノに何をさせている!?」

「スコップだ」

 

 直後、シュオオオッ! クロノノのスコップから青白いエネルギー砲が発射され、牢の近くにいた悪魔3体が蒸発した。クロノノが『や、やりましたアランさま!』とはしゃぎながらスコップを抱いてキューティなポーズ。

 

「(は、恥ずかしいですけど……耐えなきゃ!)」

 

 なぜクロノノにスコップでの戦いを教えるのか?

 途中でリティシアにそのことを相談した。そして理解した。つまりアラン様は――。

 

「(えっちなビキニを着て、スコップで戦う女の子が……好きなんですっ!)」

 

 わずかな時間を見つけて拡大するリティシアのスコップ汚染。

 

「――は?」

 

 オデッサは極度の混乱で白目を剥いていた。

 

「うむ。俺の支援があるとはいえ、カチュアに次ぐ素質があるぞクロノノ」

「ほんとですかっ!?」

「スコップ筋もよい感じだ。特に太ももは、かなりの成長の余地がある」

「あ……は、ひゃうっ……」

 

 視線を感じて恥ずかしげに身をよじるクロノノ。凍ったままのオデッサ。

 が、迫る悪魔の大群を見て、オデッサはアランに怒鳴る。

 

「おい貴様! 逃げるんだ! たった数体倒したところで――」

「ではクロノノ、次に俺が見本を見せよう」

 

 次の瞬間。アランの掘削力スコッピングパワーが爆発的に跳ね上がった。

 

「Dig!」

 

 ドゴゴゴゴシュオオオオオオウウ! 拡散波動砲、発射。幾状もの青白い奔流が悪魔全員をまるごと飲み込み消滅させた。クロノノが『ふわああああ……っ!』と感動の声をあげた。すごい、アラン様のスコップすごい!

 

「よし。解錠するぞ、クロノノ」

 

 アランはグッとスコップポーズ(注:かっこいいスコップのポーズ)をした。ガギィイン! オデッサの手錠と足かせと牢屋の鉄格子の鍵が同時にブチ壊れた。いかなる鍵にも穴はあり、そして穴を司るのはスコップの本分。自由自在に操れるという単純な理屈だ。

 アランは呆然としたままのオデッサに、手を伸ばす。

 

「レジスタンスの長、オデッサだな。俺はアラン。助けに来た」

 

 スコップを持つ謎の男アラン。それに従うビキニ少女スコップ・クロノノ。

 オデッサはそんな二人を見つめたまま動けない。

 ただひたすらに疑問が浮かんでいる。

 

 

 ――いったい、なにがどうして、こうなった。

ろり褐色マイクロ少女ちゃんのリボンをほどきたい方はブクマ評価のうえ『ろりすころりすこ』と3回唱え……違うんですスコップ拷問官。ぼくは闇の国の一服の清涼剤として赤髪レジスタンス少女を提供した無罪作者です。決して褐色ロリ娘(13)に何としてでもマイクロビキニを着せるためスコップ筋を発明したわけでは(このへんでスコップの処女に入れられた

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[良い点] ろりすころりすこ ろりすころりすこ ろりすころりすこ [気になる点] スコップないでスコップ! [一言] マイクロビキニ褐色少女・クロノノとってもスコップ可愛いでスコップ…!
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