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スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д゜ ;;) .:∴ドゴォォ  作者: ZAP
第5章 海の国のスコップ(ルクレツィアすこ)
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第34話 鉱夫、人魚少女ララを救う

 ざあざあという緩やかな波音が、スコップ号の甲板に立つアラン達の耳に届く。

 

「航海は順調のようだな」

 

 現在地は、海洋交易都市ラクティアの北東。

 大陸からかなり離れたそこは、大海原が広がっている。

 嵐が多く、沈没事故が多発する危険地帯だ。交易路でもないため船は滅多に通ることもない。人がほとんど立ち入ったことのない海域。その中央に――人魚たちの楽園『マーメイドオアシス』がある、とルクレツィアは語った。

 

「人魚か、そんなものが本当に実在するのか……」

 

 カチュアが感慨深げに言った。動物にも似た亜人はいることはいる。しかしカチュアにとって人魚とは伝説上の存在だ。歌に長けており、祝福を受けた人は海中でも苦もなく動けるという。さらに肉を食せば不死の身になるのだとか。

 眉唾ものの話である。

 

「でもまあ、いても、おかしくはないな」

 

 スコップで波動砲を発射する男が隣にいる。

 人魚ぐらい、よく考えたら、驚くべき話ではない。

 

「お父様によれば『マーメイドオアシス』の深海に遺跡が沈んでいるそうです」

「深海。相当な深くに沈んでいるのか……ふむ、どうしたものかな」

「アラン。貴様なら何とかなるだろう」

 

 24時間息を止めるぐらい、この男なら苦もなくやってのけそうだ。

 しかしアランは少し考えてから首を横に振った。

 

「いくつか方法は思いつくが、どれもかなり危険だ」

「聞きたくないがどんな方法だ」

「ひとつは海底に大穴を掘り、海水すべてを地獄のマグマに放り込むことだ」

「………………」

 

 やっぱり聞くんじゃなかった。

 

「だがそれでは全世界から海がなくなり、人魚も魚も絶滅する。俺としては不本意だ」

「さすがは鉱夫様です、お優しすこっぷです!」

「ふたつめは――遺跡付近の海域をすべて土で埋め立てて、その後で発掘する。だがこれも『マーメイドオアシス』を埋め立てることになる。もう一度掘って海にすればよいが、生態系は変化してしまうだろう」

「さす鉱(さすがです鉱夫様)アフターケアにも気をお使いなのですね!」

「みっつめは――」

「もういい言うな」

 

 カチュアが頭がガンガンに痛む。アリスみたいに船室内で眠りにつきたい。この鉱夫の発言に真面目に付き合うと頭がおかしくなって死ぬ(比喩ではない)のだ。リティシアも合わさると汚染力は100倍である。

 などと考えていたら――ガンガンガンガン!

 

『浅瀬が見えるぞ! 『マーメイドオアシス』に違いねえ、総員スコップ儀礼!』

 

 マストの上の見張り台からそんな声が響いてきた。一気に船内に緊張が走る。ダダダっ甲板に船員たちが駆けてきて、スコップをズゴンと甲板に突き刺していく。整然と並ぶスコップと船員たち。

 彼らは合図と共に、両手で三角形をつくる奇妙なポーズをした。

 

「………………」

 

 カチュアの頭痛はいや増すばかりである。

 

「……なんですか姫殿下、スコップ儀礼って」

「もちろん、人魚に敬意を払う儀礼ですこ。スコップを甲板に刺して敵意が無いことを示しつつ、スコップ型の敬礼(三角形をつくるポーズ)をすることで、友好をアピールする――海の上での、友好の挨拶ですわ」

「その挨拶はスコップ教徒にしか通じません。あと甲板がスコップで壊れてます」

「大丈夫です。私が人魚たちをスコップ教徒にしてみせます。甲板は埋めます」

 

 なにいってんだこの姫(カチュア心の悲鳴)。

 

「そんな挨拶はいらん……むっ」

 

 と、アランが甲板から目を凝らした。遥か遠くにぼんやりと見える浅瀬。

 だがアランの視力は望遠鏡以上だ。10キロ先の宝石も見逃さない。

 

「人魚がいる――いるが――ホークマン(鳥人)に襲われている!」

 

 浅瀬の岩礁の上に、小さな人魚らしき女の子がいた。

 5匹ほどの銛を持つ、醜い羽を持つホークマンに取り囲まれている。

 涙を流して、必死に助けを求めているが――周りに仲間はいないようだ。

 リティシアがアランを見てパッと笑顔になった。

 

「では鉱夫さま、拡散スコップ波動砲の出番ですね!」

「だめだ、人魚の岩礁が小さすぎる、穴を掘ると人魚が落ちてしまう」

「……穴を掘らなければいいのでは?」

「カチュア、正気ですか。穴を掘らずして何がスコップですか」

「………………」

 

 カチュアは史上最大のショックを受けた。姫に正気を疑われた……。

 

「では鉱夫さま、空を飛んでいきましょう!」

「だめだ、今の俺はアルティメットスコップ号の地形効果で掘削力スコッピングパワーが強すぎる。飛翔するとソニックブームで、この船が粉々になってしまうぞ」

「こんな船は粉々に砕いた方が世界のためだ……」

 

 カチュアのツッコミは晴天の大空に飲み込まれた。

 

「それでは『スコッパー・ライフル』の出番ですね!」

「だめだ、アレは今は弾切れだ。ここに土の地面さえあれば別だったが」

「アレの弾は土だったのか……」

「ただの土を掘削力スコッピングパワーで弾丸に変えている」

「じゃあ土をいつも持ち歩け!」

「その発想はなかった。さすがカチュアだ、今度からそうする」

 

 だが今は使えない。アランは考える。遠距離攻撃は使えない。かといって船で近づくには時間がかかりすぎる。ならばここは――スコップの出番だ! アランはダダっと甲板を駆けると、船首からビュオウ飛び降りた。

 途中でスコップを海面に叩きつけるように置く。

 するとスコップは、雪山のときに使った『スコップソリ』のように広がった。

 アランはその上にひょいっと飛び乗った。

 

「あれは――鉱夫さまの『ウォーター・スコップボード』!」

 

 リティシアが感動に打ち震えながら言った。

 

「その適当な名前、姫殿下が今考えましたよね?」

「いいえカチュア、天啓を受けた名前です。あれはまさに水上スコップです!」

「(なぜ私は姫殿下の部下をやっているのだろう……)」

 

 カチュアが己の人生に疑問を覚え始めたころ、爆音が水上から響いた。アランの『スコップボード』が掘削力スコッピングパワーを推進力として、一気にスコッピングエンジン(1000掘削力)を吹かして、ドシュオオオオオと人魚に向かう。

 波を、海を切り裂き、人魚に向かって一直線。

 だがホークマンは今にも人魚を連れ去りそうだ。

 どうする。スコップを投げるか。だが人魚に当たる可能性がある。

 

「~~~っ!?」

 

 そのとき人魚がアランを見た。泣いていた。子どもの人魚だった。その表情は絶望に染まりきっていた。ホークマンたちにさらわれかけ、仲間もいない。イヤだ。コワイ。コナイデタスケテ――瞳がそう、言っていた。

 窮地に陥り助けを求めるものは、何があっても助ける。

 それが鉱夫というものだ。

 水上で掘れるものは――そのとき、キラキラと煌く海面が視界に入った。

 

「――なんだ、ここにあるではないか」

 

 アランはスコップを海面に向けた。

 地面は個体で水は流体だが、個体と流体。たった1文字違いだ。そもそも物理的な実体がある点も同じだ。ならば掘れる。アランは己の掘削力スコッピングパワーを最大限に高め――一気に、爆発させた。

 

「Dig!」

 

 ズゴシャアアアアアアアアアアアアアア!

 スコップから波が放たれた。巨大津波である。スコップで掘られた海水が、一直線にホークマン達に向かい、すべてを濁流が飲み込んでゆく。『スコッピング・ツナミ』と名付けることにした。水属性だから人魚でも耐えられるだろう。

 そしてアランは確信する。

 

 スコップは――水上戦でも最強の武器だ。

 

「よし、人魚を迎えに行かねば」

 

 岩礁の上までたどり着くと。

 

『……キュウ』

 

 人魚の少女がいた。歳は人間でいえば14歳ぐらいか。貝殻のビキニはふっくらと膨らんだ胸を隠している。水色に流れた綺麗な髪は、きちんと育てば伝説に謳われるローレライのような美女になるだろうと予感させた。

 そんな人魚が、呆然とアランを眺めていた。

 

『キュウウウウウ~?』

 

 津波にぶっ飛ばされてはいないが、混乱の極みにあるようだった。

 妙だ――水属性の津波なのに、人魚のくせに、混乱するなんて。

 そのうちカチュアが小舟で近寄って声をかけてくる。

 

「どうしたアラン、人魚は無事なのか?」

「いや『スコッピング・ツナミ』で混乱したようだ……人魚でも波は怖いのか?」

 

 カチュアは気絶したままの人魚を見てため息を付いた。

 そして無駄だと知りつつも、心の中でツッコンだのだ。

 

 ――人魚だろうがなんだろうが、スコップで混乱しない奴がいるものか。

 

 

 △▼△

 

 

『キュイッ!? キュイ、キュイー!』

 

 スコップ号に運び込んで『スコッピング・ヒーリング』で治療すると、人魚はすぐに混乱から回復した。しかしカチュア達を見るや、涙目で縮こまり、キュイキュイと悲鳴を上げている。がくがくぶるぶる。恐怖で震えているようだ。

 甲板から海をちらりと見て『キュイ……』と力なく沈む。

 どうやら、飛び込んで逃げたいが、高すぎてコワイようだ。

 

「お父様は『人魚の薬』という秘宝で、人魚と会話ができたそうなのですが」

 

 ルクレツィアが申し訳なさそうに言う。今はその薬を持っていないのだ。

 

「困りましたわ。遺跡の場所を聞き出したいのですが」

「大丈夫だルクレツィア。俺のスコップがある」

「は?」

 

 アランは甲板をスコップでカンカンと小突いた。するとボコンと人魚を取り囲むようにして壁ができた。いくつもの文字が書かれた木造の壁だ。アランが壁をボコンと突くと、大きな穴が空いた。

 人魚少女はまたガクガクブルブルと震えだした。

 

『ヤダ、たべないで、たべないで、わたしおいしくナイヨっ!』

「大丈夫。そんなつもりはない、安心してくれ」

『……エ』

 

 ぴたりと人魚少女の動きが止まった。

 

『あなた、人魚、ことば、ワカル?』

「ああ。俺はアラン。きみの名前はなんだ」

 

 人魚少女はぴたりと動きを止めて、やがてぽつりと。

 

『…………ララ』

「ララ。ホークマンは俺が倒した、安心してくれ」

『う……ウン……それは、ミテた……とオモウ……』

 

 アランとララとの会話をルクレツィアが怪訝そうに見ていた。

 

「アラン……貴方いま、何をしたの?」

「言語の壁に穴を掘っただけだが?」

「『だけだが』じゃないわよ!」

「(ルクレツィアさんがいると私のツッコミが楽だな)」

 

 カチュアが常識人を見て安堵していたら、ララは不思議そうにアランに問う

 

『たべない? ワタシ、たべないノ?』

「大丈夫だ。鉱夫の好物は肉だ、魚ではない」

『エ、なにそれ……ふふ……ふふ、えへ』

 

 アランのスコップジョークがちょっと受けたらしい。

 人魚少女ララはくすくすと笑うと、ニコッと笑って、ぺこりと御礼。

 

『アラン、ありがとね。アラン、ホークマンたおす、スゴイよ!』

 

 ぴょんぴょんと魚ヒレで飛び跳ねながら礼を言うララ。

 どうやら打ち解けてくれようだ。甲板にほのぼのした空気が広がる。

 

「礼を言うことではない。スコップ使いなら誰でもできる」

『そうナノ!? すごい、スコップすごい!』

「そこの女騎士、カチュアにもできるぞ」

『スゴイ! カチュアもスゴイ! スコップすごい!』

「私はスコップしないぞ!?」

 

 などと話していると、ルクレツィアがしずしずと割り込んできた。

 雑談もよいのだがこの人魚少女にはいろいろ聞かねばならないのだ。

 

「それでララさん。仲間の人魚はおられるのですか?」

 

 その言葉でピタッとララが固まった。

 そしてすぐに真剣な口調で、訴える。

 

『アラン! たすけテ、タスケて! 仲間、たすけて!』

「む……やはり誰か敵がいるのか?」

『ツレテカれた! ウミのソコ! 『ヒュードラ』に!』

 

 海の底――ということは海底にある遺跡だろう。

 アランは涙目で訴えるララの頭をそっと撫でた。

 

「大丈夫だ、ララ」

『エッ……』

 

 アランはスコップを構えて水面を見つめた。

 海底遺跡には何やら化物がいるようだがなんの問題もない。

 

「覚えておくがよい、ララ。スコップは――」

 

 スチャリとスコップを構えてアランは宣言した。

 

 

「――水中戦においても、最強の武器なのだ」

 

 

 ぼおっと恋する乙女のようにアランを見つめるララ。

 それを見てカチュアは諦めのため息をついた。

 

 ――人魚と、果てしない大海原すら、スコップに汚染される運命なのか。

カタコト人魚少女ララちゃんと*スコップ*したい方は、ブックマーク・↓スクロール評価のうえ「ラララおサカナすこっぷ」と3回唱え……違うんですスコップ大提督。ぼくは海といえば美少女人魚の読者ニーズをくみとっただけで無罪です。あと関係ないけどみつめてナイトのアンは究極かわいいと思います、本当に関係ない話をして今のうちに逃げ(このへんでコンクリ海に沈められた


いつも評価・ブクマありがとうございます。なぜかランキングが再度上がりました、タイトル効果ですか。すごい嬉しいので今後もよろしくです。

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[良い点] ラララおサカナすこっぷ ラララおサカナすこっぷ ラララおサカナすこっぷ [気になる点] スコップないでスコップ! [一言] ララちゃんとってもスコップ可愛いでスコップ!
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