第18話 鉱夫、ピラミッドの謎を解く
太陽の照りつける砂漠にスコップで大理石の道を敷きながら馬車で進む。
「既に何かがおかしい!」
「何がだ?」
「何もかも!」
アランがカチュアと喋りながら道をつくっていると、ユリアがそばに寄ってきた。
ピラミッドの伝説の話だ。あれは、いにしえのドラゴンの墓標であるという。
「300年以上前、この砂漠は草原でした。そこに灼熱の岩が降り注ぎ、すべてを焼き尽くしたのです。彼方より飛来したドラゴンの炎。太陽を隠すかのような翼を持つ神竜だったと伝わっています」
「ふむ……そのドラゴンが、ピラミッドに眠っていると?」
「はい。ラハル族の祖である『タージ・ラハル』が、自らの命を犠牲に、ピラミッドにドラゴンを封印しました。ラハル族はその墓を守る部族です。万一再びドラゴンが目覚めた時には、ふたたび役目を果たすのです」
アランがうなずいた。
つまりピラミッドを壊すわけにはいかないということだ。
少し考えてから、御者をしているカチュアに声をかける。
「カチュア、今回は安全工事はなしだ、普通に攻略するぞ」
「そうか、それはよい……いや待て私はだまされないぞ!」
アランの言う『普通』がカチュアと同じ意味で普通なわけがない。
まちがいなく、スコップ的な意味の『普通』だろう。
「いや本当の本当に普通だ。今回は『誰でもできる遺跡探索』を目指す」
「新手のスコップジョークだろ、私はだまされないぞ」
「リフテンを攻略している時に気付いたのだが、スコップの素人には採掘兵を出したり、ダンジョン全域に結界を張ったりすることはできないらしい」
「もっと早く気付け」
「そこで俺は考えた。オーブはまだ5つも残っている。俺が別行動を取り、カチュア達にダンジョン攻略を任せるケースも今後、考えられる。だからカチュアにもできるダンジョン攻略法を教えておきたいのだ」
カチュアは少しの間ピクンと反応すると。
「……そ、そういうわけか……ふむ」
意外にまともな考えだったので、目を白黒させるカチュア。
そういうことなら、カチュアとてやぶさかではない。古代の遺跡を探索して伝説の聖杯を発見する――そんな聖騎士物語にカチュアは子どものころから憧れていた。
「わかった。頼む」
カチュアがうなずいたのでアランは馬車の中に戻った。
するとリティシアが床に巻物を広げて、何か文字を書いていた。
その横ではアリスが絵を描いているようだ。
『うう、わ、わらわは絵なんかお父様にしか書いたことはっ!』
「リティシアよりは上手ですから大丈夫です! がんばってください!」
「……何をしているんだ?」
「あ、鉱夫さま! えへへ、あの、あのですね、実はですねっ」
リティシアが振り向くと、恥ずかしそうに乙女の笑顔で。
「アリスちゃんとスコップ教の教典を執筆しているんですっ!」
「……………………………………そうか」
もう諦めよう。放っておくしかない。ため息をつく。
するとリティシアは急に表情を変えた。
「あの……」
スコップをきゅっと不安そうに抱いて。
「す、すみません……あの、鉱夫さま、ひょっとしてご不満でしたか……」
「不満というかすごくスコップというか」
「スコップ……ですか……」
深く落ち込んだ様子のリティシア。
ひょっとしたら、今強く言えば宗教活動をやめるかもしれない。だが、彼女の落ち込んだ姿を見るとそれはためらわれた。リティシアにとってスコップはとても大事なものなのだ。それを否定されたら、彼女は絶望に沈んでしまうかもしれない。
そして何より――スコップを褒め称えられることが、アランは嫌いではない。
「わたし……」
ちょっと、ロスティールというか大陸の未来が末恐ろしくはあるが。
致命的な暴走にさえ気をつければ、ある程度放っておいてもいいはずだ。
そう考えて、アランはリティシアの頭を、なでなでと撫でた。
「……えっ」
「悲しまなくていい。俺は別に嫌ではない」
パアッと、リティシアが輝くプリンセス笑顔になった。
「ほ……ほんとですかっ!?」
うるるるるっ。嬉しさのあまり涙ぐむリティシア。
子どものように喜ぶ様は、見ていて微笑ましくもある。
「だが、そうだな……あえて言えば、スコップの言語活用だけはなんとかならないのか? 俺でもかなり意味が理解しがたいぞ」
「そ……そうでしたか……すみません、すみません、意味不明なスコップ姫ですみません……」
リティシアはしょぼんとうなだれて何度も謝った。
スコップを更にぎゅっと抱きしめる――と。
意を決したように、アランに上目遣いを向ける。
「あの……意味不明ということは、り、リティシアはひょっとして、スコップの理解が足りないのでしょうか……?」
「足りないというか、むしろ理解が突き抜けすぎているというか」
「で……で、で、でしたら……」
スコップで口元を恥ずかしげに隠す。
ドレスの胸をぎゅっと自ら抱くようにして、たわわ圧迫。
「その、あのですね……」
「……?」
「れ、レッドオーブが見つかった後で、よいですので……あの……」
ぽうっと頬を赤く染めてリティシア続ける。
緊張に言葉を震わせながら、それでもどうしてもといった様子で。
「もう一度……リティシアに『スコップ』を、お教え、くださいますか……?」
数秒の沈黙があった。
結局この王女はスコップだ。でも、王女をそんな風にしたのは自分だ。だったら最後まで徹底的に付き合うのが礼儀というものかもしれない。それになんだかんだで――スコップを大事に想ってくれるのは、嬉しいものだ。
「わかった。サバロニアを出たらみっちり教えこもう」
「み、みっちり……! はうっ……!」
リティシアは身体をびくびくと震わせ、歓喜に打ち震えた。
すぐにぺこぺことアランに頭を下げる。涙がぽろぽろこぼれる。
「ありがとうございます……リティシアはスコップ幸せものです……っ!」
『……ますますスコップ病がひどくなりそうじゃ……』
「いや今度は俺もきちんとスコップを教えるぞ」
『それが信用ならんのじゃ』
はーっと深く深くため息をつくアストラルアリスであった。
そのとき、カチュアの呼び声がした。
「アラン、ピラミッドが見えてきたぞ」
「わかった。カチュア、遺跡探索をはじめるぞ」
「ああ。誰でもできる遺跡探索だな」
「そうだ」
アランはスチャリとスコップを構えた。
「スコップがあれば――遺跡探索は誰でもできるのだ」
カチュアの背筋に冷たい汗が伝った。
――やはり、猛烈に嫌な予感しかしない。
△▼△
いきなり関門が訪れた。
ピラミッドには入口がそもそもない。四辺のすべてが壁であった。
「『我らが祖の名を呼べ、されば道は開かん』と伝承には伝わっています」
「つまり謎掛け(リドル)だなっ」
ユリアの言葉に、カチュアが興奮気味に応える。
隠された秘密の入口を合言葉で開ける。おとぎ話そのものだ。
まさにこういう冒険をこそ、カチュアは望んでいたのである。
「それでアラン、どうやってリドルを解くのだ?」
「うむ。こんなときこそスコップの出番だ」
「は?」
アランは地面の砂に『我らが祖の名』と書いた。そこをスコップでざっくざくと掘り起こしていくと『グラウルング』という文字が彫られた岩が出た。アランが『グラウルング』と叫ぶとピラミッドの壁の一部がゴゴゴと横にズレた。
秘密通路、開通。
「……おい」
カチュアが腹の底から湧き出るような低い声を出した。
「謎の真実を掘り起こす……これは誰でもできるスコップの得意技のひとつだ」
誰でもできる(スコップ使いなら)。
「ありえん」
「む……これは基本技なのだが……カチュアにはできないのか?」
「できてたまるかっ!?」
やはりこのスコップ人に、人類的な考えを期待した自分がバカだった。
「カチュア、スコップは試しですよ、ぜひ試してみましょう」
「絶対ムリです! 私は人類です! 姫殿下ならまだしも!」
「そ、そろそろ進んでもよろしいでしょうか……?」
ユリアの控えめなツッコミを受け、一同はピラミッドの内部へ。
暗く狭いダンジョンを、アランのスコップの先端にともした灯りを頼りに進む。
「スコップ・ライトだ。ダンジョンは暗い。恐怖を振り払うのに灯りは必需品だ」
「私はこの程度で驚かなくなった自分の未来に恐怖している……」
ユリアの案内でピラミッド内の構造は把握できている。正規ルートを進むと、こんどは行き止まりの壁に5つのボタン。その側には古代文字で文章が彫られている。どのボタンを押すのかがカギのようだ。
「またスコップで謎を掘るのか?」
「いや、こういう仕掛けはもっと単純な方法がいい」
アランはざくざくとボタン周囲の壁を掘った。
ボタンからはケーブルが伸びていて、それぞれが複雑に絡み合っている。
そのケーブルを手に持ってアランは解説をはじめた。
「配線の構造を、調べるのだ」
「………………」
カチュアの目の光は既にアンデッド風味で死にかけだ。
「物理的ラインと、魔術的ラインの二通りがある。どちらのラインでも、慣れれば壁を削らずスコップで配線を透視できる。今回の場合、天井と床に伸びた配線はトラップだから真ん中のボタンが正解だな」
カチュアは思った――これは断じてダンジョン攻略ではない。
なんで当然のようにスコップで壁内を透視するのだこの男は。
「いや、今回の技は本当に簡単だ。3日もあれば誰でもできる」
「できてたまるか!?」
「カチュア、ちょっとやってみてください。命令です」
「うっ」
リティシアに命令されて、仕方なくスコップで壁をツンツンしてみる。
すると脳裏にボタンとそこから伝う5本のラインのイメージが浮かんだ。
「うわああああああああ!?」
ほんとにできた。どういうことだ自分は既にスコップ人だったのか!?
「カチュアも『聖騎士のスコップ』の使い手だからな」
「さすがですカチュア。リティシアはスコップ信じていました」
「嘘だ嘘だ嘘だ私はスコップ使いではない聖騎士なのだ……っ!」
「聖騎士かつスコップ使いです」
『いいから進むのじゃー』
ボタンを押して更に奥へ進む。
スコップを駆使してショートカットするとそろそろ最奥部らしい。
ひときわ大きな広間に、荘厳な古い両開きの扉。その前にスフィンクス像。
『侵入者よ。汝に問う』
広間に反響する巨大な獣の声。
「またリドルのようだな……今度もスコップで掘るのか?」
「いや、あのスフィンクス像は宝物のガーディアンだ。不正な方法で答えた場合、間違いなく動き出して襲ってくる」
「つまりスコップは後ろ暗い不正な方法ということか?」
「地中を掘る意味では確かに暗いな」
「誰がうまいことを言えと」
『二人とも、リドルが来るぞ。ちゃんと聞くのじゃ』
『朝は四つ足、昼は二本足、夜は三本足。其の者はなにものか?』
「ふむ……ちょっと待て、これは私でも答えられそうだ」
カチュアが頭を回転させ始めた、そのとき。
「それはスコップですっ!」
誰かが叫んだ。
アランではなくリティシアだ。
しばらく広間に沈黙が訪れた。スフィンクスも沈黙していた。
「だって今朝夢で見たスコップは、四本足のよちよち歩きでした。昼は二本足です、アラン様が出した採掘兵は二本足でした。夜は三本足です。な、なぜかは……その、は、恥ずかしくて言えませんけれど……っ!」
リティシアはほっぺたをピンクに染めて続けた。
「とにかく! スコップで間違いありませんっ!」
『………………………………………………』
石像のスフィンクスは沈黙している。
よく見るとその石像に汗が(石像なのに)伝っているように見える。
誰か助けて。そう言っているように見えた。
「……不正解と、言われないのだな」
ようやく意識を取り戻したカチュアがぼそりとつぶやいた。
「リドルの正解は一つではない。ガーディアンが納得できればOKだ」
「答え:スコップで納得してしまうのか……?」
「謎の説得力はあったと思う」
「謎すぎるわ!」
スフィンクスはそれから十数秒ほど沈黙していた。
石の像から汗が滝のように流れている。やがて。
『……………………汝。汝のいうスコップとは、つまりヒトのことか?』
「(確認してきたー!?)」
カチュア心の悲鳴。このスフィンクス、意外と親切だ。
「そうですね、確かにスコップはヒトという概念を包含したスコップです」
『………………つまり、ヒトということだな?』
「どちらかというとスコップです」
『………………』
「スコップです」
何の迷いもなく断言するリティシア。
スフィンクスの石像がなんかブルブルと震えだした。
誰かホント助けて勘弁して。全身でそう叫んでいるように見えた。
やがて。
『………………我、負けを認めたり……』
ズゴゴゴゴゴゴゴ。
スフィンクス像がすごい勢いで壁の裏側に引っ込んでいった。
その背後に会った、扉が大きな音をたてながら、開いていく。
リティシアがスコップを手にガッツポーズ。
「やりました! か、勝ちました、鉱夫さまっ!」
確かに勝った。スコップが謎に勝った。主に勢いで。
「まさかこんなスコップ攻略法があるとは……すごいなリティシアは」
「すごい!? あ、あう……はうぅ……(いじいじ)」
スコップに長い金髪をからませていじらしくいじるリティシア。
「カチュアも今の攻略法を身につけるか?」
「あんなの姫殿下以外にできるかっ!!」
全力で叫んでカチュアは天を仰いだ。
あはははと涙と笑いがこみあげてきた。やっぱり今回もダメだ。
「で、オーブは……アレか?」
「は、はい、中央の台座に鎮座しているはず……っ!?」
ユリアが警戒に表情をゆがめた。見ると宝物庫の中央には確かに赤色に輝くレッドオーブが置いてある。だが、禍々しいオーラも漂っていた。まるでマグマが煮えたぎるような熱が部屋からぶわっと、溢れてきた。
直後。
グオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
とてつもない咆哮音。
アランは瞬時に全員の先頭に飛び出てスコップを一閃。
轟音の暴力を、スコップで受け流す。それでも声だけは届いた。
『古の宝珠の力を得て、余は目覚めたり』
かつて地底で幾多も聞いた竜言語で、そのように言っていた。
竜言語の咆哮。まごうことなき古代竜の証である。
「竜の……咆哮っ!?」
ユリアが顔面を蒼白にして身体を震わせた。
そのとき、ピラミッドが、割れた。
アランの守る一画だけが残り、それ以外のすべてが、吹き飛んだ。咆哮の圧力だ。石が嵐のように空を舞う。凄まじい轟音と衝撃波、そして熱波。だがそんなものよりよほど強烈だったのは、頭上から来る強烈なプレッシャーだった。
アランは空を見上げた。
ピラミッドは吹き飛んでいた。だが空は見えなかった。
青い空を覆うほどに、赤い翼が、空いっぱいに広がっていたからだ。
赤き竜である。
「あれは……あれは……本物のドラゴンだとっ!?」
カチュアが呆然と叫んだ。竜だ。本物の。おとぎ話で見る赤き巨大な竜。
まるで山そのものが空を飛んでいるかのような雄大さだ。
「赤い翼にあの咆哮……ラーヴァ・ワイアームの上位種だな」
アランは冷静に観察すると、スコップを両手で構えた。
あの1体だけでサバロニア全土を焼き尽くすことすら可能だ。
カチュアやアリスに、任せる訳にはいかない。
「……アラン様っ」
と、そのときユリアがアランのそばに駆け寄ってきた。
「あれは……あれは、まさしく伝説にある……っ!」
「ああ。そのようだ、下がっていろ」
ユリアは咆哮の衝撃から立ち直るように深呼吸を何度もする。
祈りの言葉をつぶやいてから、意思のこもった視線を向けてくる。
「アラン様……」
ユリアはぎゅっと拳を握ると、神にすがるような視線を向けてきた。
「お願いがございます……無理な、無茶なお願いですが……っ!」
いつかリティシアから似たような台詞を聞いた気がする。
「3分だけ……お時間を、稼げませんかっ」
「時間を……稼ぐ?」
「ラハル族に伝わる封印の舞に、その時間が必要なのです」
「…………」
「む、無理を申しています……ただ、ただ、アラン様なら、ひょっとすると……と……」
涙を押し殺しながらといった様子で懇願してくるユリア。
この巫女の少女は既に覚悟を決めている。
命を賭けてドラゴンを封印すると決めているようだ。
「あの……だ、大丈夫です、私ならご心配いりません……私は……」
怖いのだろう、体が震えている。目からも涙が出ている。
それでもユリアは笑顔だった。全力で笑顔をつくろうとしていた。
すうっと息を吸ってユリアは続ける。
「私はアラン様に命を……いえ、運命を救われたのです。だから……だから」
目を閉じて、もう一度開ける。そのときにはもう涙は消えていた。
決意したのだ。
「今度は私が、アラン様を救う番です」
そのとき、竜の翼が暴風を吹き付けた。
ユリアの長い水色の髪がゆっくりと揺れた。
ユリアは笑った。
自分が救われたのはきっとこの時のためだと確信した。
自分と部族を救ってくれたアランを、命をかけて助ける。
それはなんと幸せな使命だろうか?
――そのときである。
「ユリアさん。3分もいらないとリティシアは考えます」
「……え?」
ぴたりと止まるユリア。
「鉱夫さま、いかがでしょうか?」
「ふむ。リティシアはよくスコップを理解しているな」
「ありがとうございますっ!」
「え、あの、あの……舞にはどうしても時間がかかりますので……」
「そういう意味ではありません。スコップな意味です」
「???」
理解が追いつかないと言った様子でリティシアとアランを交互に見るユリア。
そのとき、頭上の赤き竜の口がゴオウと開いた。
一瞬で光が収束する。
爆裂の息。
族長の化けていたデーモンのそれとは比較にならぬ、鉄すら焼き尽くす真の炎。
その嵐がアラン達に発射された――直後。
「Dig!」
スコップ一閃。
直後、炎のブレスの軌道が横にグウウウンとブレた。山ほどもある竜の放った、神話的とすら言えるエネルギーの奔流が、アランたちの一画を避けるかのように曲がり、ズオオオオオオ! 轟音を撒き散らしながら砂漠を燃やし尽くしていった。
アラン達は無傷である。
「『次元掘削』だ」
空間そのものを『掘って』次元の隙間をつくり、ブレスの軌道を変える。
アランが対上位ドラゴン用に開発した、ブレス対策のひとつだ。
明らかに、人外の技であった。
ユリアとカチュアはぽかんと大口を開けていた。
「あのクラスのドラゴンだと……埋葬まで30秒だな」
「スコドラブレですね!(さすがスコップ、ドラゴンのブレスなんてちょちょいのちょいですね!」
「略しすぎてわからん」
アランはスコップを両手に持ち、頭上に掲げた。
そしてユリアに笑いかけた。彼女が命を捨てる必要などない。
「ユリア。障害にぶつかったら俺を呼べと言っただろう」
「………………あ」
「俺のスコップはすべての障害を打ち砕く」
アランの採掘力がスコップに収束し爆発的に膨れ上がる。
凄まじい光を放つスコップの切っ先を赤き竜に向ける。
自信はある。
アランは地底に掘り進む中、スコップでいかなる障害物も打ち砕いてきた。
たとえその障害が――。
「――神でも、ドラゴンでもだ」
次回で砂漠の国編はクライマックスです。アラン対ドラゴンの一騎打ちはどんな結末を迎えるのか、ご期待ください。(ネタバレ:スコップ無双)あと親切なスフィンクスちゃんは犠牲になりました。スフィーちゃんと呼ぶとなんか美少女っぽいです!すふぃすふぃすこすこ(今考えた合言葉)!